本二冊: じょぐどら
図書館に週に一回ほど通って本を借りるんだけど、ブログネタになるような本はなかなかない。しかし、今回は面白かった。
地震は妖怪 騙された学者たち (講談社プラスアルファ新書)島村英紀著
日本を代表する地震学者の書いた本。机上で考えられた地震のメカニズムが実際に本当に起きているのかどうか観測する難しさを紹介している。
採取されたデーターの分析、解読の困難さを自身の経験のエピソードを交えて面白く書かれている。
一つの例・・
地中に作られたトンネルに地殻の傾斜の変化を測るために「水管傾斜計」を設置する。これは非常に精度の高いもので、どれくらいの精度かというと、東京から名古屋までの距離の長い棒を置いたとして、名古屋でその棒の下に十円玉をひとつはさんだだけ持ち上げるくらいの傾きさえ知ることが出来るほどの精度だという。
この傾斜計を持つ観測点が日本各地にあるんだけど、西日本の観測点だけのデーターが異常を放ち始めた。
・・なにか地殻変動の前触れか?・・と思いきや、「水の中で繁殖するカビ」が原因だったのだという。
データーを読む難しさがよくわかるエピソードだ。理論をかざすのはいいが、実践するのは難しいことがよくわかった。
また、著者らは地震メカニズム解明のため地球の反対側にもはるばる足を運んで海底地震計を設置して調査している。極地に近いような厳しい条件下で観測するのには危険なことも多くサバイバル技術も持っていないといけない。しかし、こんな非現実的な場所でとられたデーターが学問的には大きい意味をもつこともあるので研究は止められないんだよ・・と言う声が聞こえてきそうだった。
追:島村氏の本の132ページに「地球の自転が毎年0.86秒ほど遅くなっている。」とあるけど、いくらなんでも違うと思う。それでは、4200年で一時間自転が遅くなることになる。実際には100年で1.7ms ほどみたいです。
http://q.hatena.ne.jp/1186389321
不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス宮嶋 茂樹、勝谷誠彦著
天候の厳しい場所の科学観測、研究といえば南極観測が一番だろう。おなじみ「不詳宮嶋」氏が南極観測隊に同行して科学観測隊の裏側を覗く。そこにあった、男だけのありえない世界を紹介している。
宮嶋氏は外界からの「写真家という身分のお客さん」ではなく、自然に(必然的に)観測隊一行に溶け込んで、数ヶ月間苦楽を共にすることになる。そういう寝食を共にした関係でないと味わうことの出来なかった感動が素直に書かれている。
ところで、南極といえば均一に寒い大陸と思っていたのだけど、これが、沿岸と内陸では気候条件がかなり違うという。内陸では緯度、高度が高いこともあり(4000m)、沿岸より平均気温が数十度も低いのだ。この内陸の観測点基地(ドーム基地)に向かう旅は苛烈なもののようだ。この旅が今回の滞在のメインイベントであった。
現代においての極地の運搬事業は、以前と比べ快適になったというイメージがあったんだけど、これが大違い。南極という場所は南極条約によって一切のゴミを出してはならないために、自分、いや他人の糞尿さえドラム缶に入れて保存しなければいけないので、その処理だけでも大変なのだ。
到達地点のドーム基地で、観測者たちは自分も実験台(被験者)になって観測も続けている。零下40℃の厳寒の観測地で人体の生理を計測するために直腸体温計を入れて生活する観測者。。
笑えるなあ。