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深海に潜る・授業風景

 苦手意識の言い訳が長くなった。「深海に潜る」の指導計画を立てなかった理由は以上である。生徒がどんなふうにこの教材を読んだかを知るまでは、私の頭は白紙。

 とりあえず、反応を観察しながら読ませるのが第1時の授業。

 そして第2時。
〈発問1〉「へえ、おどろいた」「ふうん、そうなのか」「えっ、びっくりした」と思ったこと、何でもいいから発表しよう。
 生徒の答えに私が驚いだことは、

1。こういう科学的でしかも探検記的な文章に興味を示す生徒がけっこういること。

2。この文章を書いたのが〈地球物理学者〉という聞き慣れない科学者であることに驚いた生徒がいたこと、だった。

 あたりまえのことだが、そうだった、こういう文章が好きなく科学大好き生徒〉もいるんだった、と再認識。そして、彼らは概して、国語の教科書の文章を書いているのは文学者(もの書き)だと思い込んでいたのだ。理科や数学を専門とする人たちが文章を書くなんて、信しがたいということらしい。幼稚な発想だがおもしろい。

  そこで、筆者をクローズアップ。〈地球物理学者の島村さん〉が、生徒たちの頭の中で生きて動いてくれたら大成功だ。島村さんを生身の人間としてとらえることによって、深海という未知のものへの興味だけでなく、アーヌーさんやシアロンさんとの連帯、ノーティール号をめぐる人々の情熱も感じとることができれば、彼らの脳ミソに一鋤いれられる。

 第2時の授業で目標はつかめた。

 島村さんの人柄がにじみ出ているような顔写真ば、親しみが持てて有益な補助教材だ。 第3時の授業。

〈発問2〉島村さんの仕事はどんな仕事?

〈答え〉地震を予知する仕事らしいけど。それより探険したり研究したり実験したりするのが好きでやっているみたいだ。

〈発問3〉島村さんに代わって、プレートテクトニクスをみんなに説明してごらん。

〈答え〉(黒板に図を書きながら)これがこうなって、こういうふうに下がってきて(教科書の図と同じだよと他生徒に指摘されて)。島村英紀代理人は、とうとう下敷きと教科書を使って下敷きのたわみとはね返りで大陸プレート上で地震が起きるわけを説明してくれた。大拍手。

〈発問4〉島村さんは今回何をしたのか。

〈答え〉ノーティール号に乗って、深海に潜った。…「何のために?」地震の観測のため。…「で、何をしたの?」海底傾斜計を海底の適当な場所に据えつけるため。…「はい、それではそれを全部つなげて言ってみてください」

 彼らの答え方はカタコト的だ。いつ、どこで、だれが、何のために、何を、どのようにしたのかを、一文につなげて説明するのがヘタクソだ。だからカタコトしか発しない。でもとりあえず発言させてみよう。彼らの脳ミソだってめまぐるしく動いているところだ。うまく脳ミソの歯車がかみあってないだけで。

  そうそう、そうやって脳ミソを回転させるトレーニングが大切なのよ、と思いながら待つ。彼らは必死になって頭の中でコトバをつなげようとする。ノートにかいてみようとする子もいる。どうしてもダメならいいけれど、できれば頭の中でつなげてごらんよ…。と、こんなふうに授業は進んだ。

 もちろんクラスによって、おもしろい部分は延長したり深入りしたり、充分私は楽しんだ。