ねこの目通信 研究室訪問 粕谷研究室
粕谷研究室 研究生
関義和さん
私はこれまでに主研究であるタヌキについての研究をする傍ら、野生生物研究部での水鳥調査や、現在日本各地で野生化し様々な問題が指摘されているアライグマに関する研究、また某社の手伝いとしてテンのテレメトリー調査を行なってきました。
卒業研究においては、農耕地周辺の森林におけるタヌキの食性とその季節変化を調べ、かつ彼等の人間由来の食物への依存度とその季節性を明らかにすることを目的としました。タヌキは溜め糞をする習性があるので週に一回程、各溜め糞場を回って新糞を採集し、その内容物を調べました。
その結果、本調査地のタヌキは花や昆虫、果実など季節毎に最も得やすい食物資源を広範に利用していました。人間由来の食物についてはその利用量は12月に増加することから、人間社会への食物依存度は自然界の食物の量が少ない季節に高まるもの考えられました。近年、疥癬症(かいせんしょう)がタヌキやキツネ等に蔓延し、個体数の動向への影響が危惧されています。その一つの要因として人間由来の食物が集中するゴミ捨て場がこれら病気の伝播の中心になっているのではないかと考えています。野生動物の餌場になるようなゴミ処理の仕方は改める必要があるでしょう。
年間を通してタヌキの食性を調べることで食性の季節性、また人間社会との関わり合いもより明確になってきます。そのため現在も定期的に山に行き彼らの糞と格闘している日々が続いています。
野生生物の分野へ進もうと思ったのは、高校の時です。恩師から星野道夫さんの写真集を見せて頂き、それを通して生命という存在の神秘さを知り、自然界の全ての命が変化しているということを学びました。それが結果的に野生生物の世界への憧れとして私の中に存在し、私をこの世界に導いてくれました。そして大学に入り、より自然への魅力が高まり、野生生物にとって棲みやすい環境を維持・回復していくための一助となりたいと思い始めました。将来は幅広い視野を持って、自然の存在や野生生物が置かれている現状など様々なことを多くの人達に伝えていきたいと考えています。
【関さんのプチエピソード】
タヌキの調査を行っていた時にイノシシが突如現れたらしいのです。じっと木影から覗いていたところ、イノシシが急に関さんの方に方向転換してきて、よく見たらそこはシシ道で、危険を察知した関さんは大声を出してイノシシを驚かせ、なんとか危機を乗り切った事があるのだとか。また、テンの調査を行っていた時、ちょっとした油断から樹海で迷ってしまった事もあるそうです。ある先輩からは、関さんは運があるから一緒に山へ登ればきっと何か見られるよ、という話を聞いた事もあります。何にせよ関さんは本当に運のある方のようです!!
取材の最後に粕谷先生について尋ねたところ、「粕谷先生は知識も様々な分野に長けており、自然や動物を見る目がとても素晴らしい方です。また、物事を的確にはっきりと言える方でもあり、とても尊敬しています。」とおっしゃっていました。(ともとも)