「鉄筋減らせと圧力」 聴聞会で姉歯氏説明 業者は否定
- ️Fri Nov 25 2005
首都圏のマンションなどの設計に用いる構造計算書を偽造していた千葉県市川市の姉歯秀次1級建築士(48)に対する聴聞会が24日、国土交通省で開かれた。姉歯建築士は、動機について、マンション開発会社や施工会社の実名を挙げ、コスト削減を求める圧力があったと具体的に説明した。業者側は建築士への指示を否定しているものの、業者が耐震性の不足を知っていた疑いが生じ、問題は新たな局面を迎えた。
関係者によると、姉歯建築士が、圧力をかけられたとして名前を挙げたのは、施工会社の木村建設(熊本県八代市)と開発・施工会社のヒューザー(東京都千代田区)とシノケン(福岡市)の3社。
聴聞会は、処分を決める前の弁明を聞くための手続きで、この日は非公開で約1時間開かれた。国交省によると、同省の担当者が書類偽造の有無を尋ねたのに対し、姉歯建築士は、完成と未完成を合わせた21棟の計算書の偽造を認めた。それ以外の建物に関しては「記憶にない」と答えた。
動機については、大口の依頼主だった3社の名を挙げて、「建設コストを下げる設計をするよう指示された」とした。国交省は「姉歯建築士の了解がない」としてこの業者名を明らかにしていない。
建築確認の審査を民間の検査機関イーホームズ(東京都新宿区)に頼んだことについて、姉歯建築士は、「厳しいところと甘いところがあるので、イーホームズにした」と述べ同社の審査の甘さを指摘した。
「仕事優先で、考えが至らなかった。資格を持つ専門家として申し訳ないことをした」と話す一方、賠償責任や刑事責任への言及はなかった。
免許取り消し処分については、争う意向を示さなかったといい、国交省は、12月7日に開かれる中央建築士審査会の同意を得た上で免許を取り消す。
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「鉄筋の量を減らせ。できなければ他に発注すると言われました」。構造計算書を偽造した姉歯秀次1級建築士は国土交通省であった聴聞会で、偽造につながるコスト削減を指示されたとして建築主・施工業者3社の名と「圧力」の中身を具体的に語った。
聴聞会は非公開で開かれた。国交省の説明によると、建築指導課の課長補佐が「少なくとも21件の建築物について、構造計算プログラムの一部の偽装を行っていた」と書面を読み上げると、姉歯建築士は「相違ないです」と答えた。
大口取引先から鉄筋の量を減らすように指示を受けたとされる際のやりとりに話が及ぶとこう話したという。「『安全性に問題が生じる』と答えましたが、『できなければ他の業者に代える』と言われました。生活ができなくなるので受け入れました」
3社のうち1社については指示したという個人の名前まで挙げた。「コストを下げろというプレッシャーを感じていました」とも語った。
建築確認した民間の検査機関に偽造した構造計算書を初めて提出した時のことも話した。「提出期限が迫り、後で正しい計算書に差し替えるつもりでしたが、審査を通ってしまい、びっくりしました」「今思えば、あのときやめるべきでした」
そして聴聞の最後、陳述内容を確認する書面に署名捺印(なついん)する際に口にした。「大変申し訳ないことをしました」
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この日、熊本市で記者会見した木村建設(熊本県八代市)の木村盛好社長は「鉄筋の量を減らせ」と大口取引先が指示したという疑いについて「全くありません」と否定し、コストダウンに向けた圧力もかけたことはないと話した。姉歯建築士とは会ったこともないという。
ヒューザー(東京都千代田区)の小嶋進社長は24日夜、「あり得ないこと。自分がお金を払ってインチキマンションを造れなんて言う発注者がどこにいるんですか」と述べ、姉歯建築士への「指示」を全面否定した。
シノケン(福岡市)は篠原英明社長が22日に福岡市で記者会見し、「構造計算は当社の知らないところで姉歯(事務所)がしていた。当社は木村建設が『できました』と持ってきた図面に判をついただけ」と話し、不正への関与を否定した。