駆除目的で捕獲した猫の引取りについて全国アンケート
駆除目的で捕獲した猫の引取りについて全国アンケート
このたびEvaは、国内の捕獲檻で捕獲された猫の引取り状況について全国都道府県、政令指定都市、中核市に向け文書でアンケートをおこないました。
このたび当協会等は、国の主務所管との重要な会議や、独自の検証を進めるにおいて、はじめから殺す処分や駆除を前提とした、猫の捕獲や狩猟の方法により、各自治体にその猫が引取り申請される事態が、遵法の措置ではないと判断するにいたりました。
このことに関しまして、付帯決議八の主旨を確認すると、「飼い主のいない猫に不妊去勢手術を施して地域住民の合意の下に管理する地域猫対策は、猫に係る苦情件数の低減及び猫の引取り頭数の減少に効果があることに鑑み、官民挙げて一層の推進を図ること。なお、駆除目的に捕獲された飼い主のいない猫の引取りは動物愛護の観点から原則として認められないが、やむを得ず引き取る際には、猫の所有者又は占有者を確認しつつ関係者の意向も踏まえた上で、引取り後に譲渡の機会が得られるよう最大限努めるよう、各地方自治体を指導すること。」とされています。
ですが他の関係法規法令などを検証しても、「猫を駆除目的に捕獲」できる根拠法などはありません。
また、平成27年6日17日、環境省動物愛護管理室長より、各都道府県・指定都市・中核市の動物愛護管理主管宛に「捕獲檻で捕獲された猫の対応について」の事務連絡が出されております。
よって「駆除目的に捕獲された飼い主のいない猫」は、引取り対象外と当法人等は判断いたします。
今回この件をきっかけに、いくつかの自治体に問い合わせをしたところ、「檻等で捕獲された成猫の引取は一切行っておりません」との返答をいただいた自治体もございました。
そこで、全国の自治体にアンケートを行いました。各自治体担当者の方々には、お忙しい中回答にご協力いただきまして誠にありがとうございました。
アンケート内容
あらかじめ殺す処分や駆除を前提とし、捕獲や狩猟の方法によった者により、持ち込まれる猫を…
(1)引き取る
(2)引き取りを拒否する
(3)そのような事態を想定せずに、あらかじめ引取りを常に防除している
- その他意見
(1)の場合にはその根拠法令と整合性のある理由を、
(2)の場合にはその旨お応えください。
(3)の場合には常に防除できている行政施策をご教示してください。
回答結果 都道府県・政令指定都市・中核市一覧
都道府県
政令指定都市
中核市
各都道府県
東北地方
関東地方
東京都 福祉保健局 健康安全部 環境保健衛生課
神奈川県 保健福祉局生活衛生部食品衛生課
埼玉県 保健医療部 生活衛生課
千葉県 健康福祉部 衛生指導課 公衆衛生獣医班
茨城県 保健福祉部生活衛生課
栃木県 動物愛護指導センター
群馬県
山梨県 福祉保健部衛生薬務課
信越・北陸地方
東海地方
近畿地方
中国地方
四国地方
徳島県 動物愛護管理センター
香川県 健康福祉部 生活衛生課
愛媛県 保健福祉部健康衛生局薬務衛生課
高知県 健康政策部 食品・衛生課
九州・沖縄地方
福岡県
佐賀県
長崎県 県民生活部 生活衛生課 食品乳肉衛星班
熊本県
大分県
- (1)引き取る
根拠法令と整合性のある理由:所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められた場合、動物の愛護及び管理に関する法律、第35条第3項にて準用する第35条第1項により引き取らなければなりません。当県では、所有者のいない猫について、依頼者が依頼書を提出したものについてのみ引取りを行っています。所有者がいる可能性がある猫については、遺失物として警察に届けるよう指導しています。捕獲檻で捕獲された猫については、平成27年6月17日付け、環境省自然環境局総務課動物愛護室町通知に基づいて、対処を行っています。この中で、所有者がいる可能性がある猫については、上記同様、遺失物として警察に届けるよう指導しています。また、引き取った猫について、譲渡の適性があると認められる猫については、出来るだけ譲渡に努めています。狩猟の方法によった猫を引き取る事例はありません。
宮崎県 福祉保健部衛生管理課
- (2)引き取らない
- その他意見:動物の愛護及び管理の推進に関する件(平成24年8月28日衆議院環境委員会決議)ハ及び動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成24年8月28日参議院環境委員会)ハの主旨を考慮し、原則引き取らないこととしております。
鹿児島県
沖縄県
政令指定都市
札幌市 札幌市動物管理センター
仙台市 仙台市動物管理センター
さいたま市 保健福祉局 保健部 生活衛生課
千葉市保健福祉局 健康部 生活衛生課
横浜市 健康福祉部 健康危機管理課
- (1)引き取る
根拠法令と整合性のある理由:本市では、附帯決議八の趣旨もかんがみて、所有者の判明しない猫の引取りを求められた場合には、状況を詳細に聞き取り、緊急性や保護の必要性を考慮しつつ、引取りでない方法で猫の問題に対処していただくよう、また、捕獲の方法によっては「動物のみだりな殺傷」や「虐待」となり、動物の愛護及び管理に関する法律第44条に定める罰則が適用される可能性があることを市民の皆様にご説明しますが、それでも引取りを求められた場合は、法の定めによりこれを引き取らなければならないため、引取りを行っています。根拠法令:動物の愛護及び管理に関する法律第35条3項目及び1項 - その他意見:動物の愛護及び管理に関する法律第35条における所有者の判明しない猫の引取りについては、都道府県等が引取りを拒否できる要件(例えば引取りの目的や捕獲方法によっては拒否できるなど)の定めはないと解釈しています。
川崎市 健康福祉局健康安全部生活衛生課
相模原市
新潟市 保健衛生部 保健所環境衛生課 動物愛護センター
静岡市 動物指導センター
浜松市 都市整備部動物園 動物愛護教育センター
名古屋市
京都市 保健福祉局 保健衛生推進室 医務衛生課
- (3)そのような事態を想定せずに、あらかじめ引取りを常に防除している
常に防除できている行政施策:
○本市では、野良猫でお困りの地域において、「京都市まちねこ活動支援事業」を実施し、野良猫が無秩序に増えることを防止し、野良猫の引取数減少に向けて積極的に取り組んでいます。
○そのような中、本市に猫の引取り依頼があった際は、お示しいただいた附帯決議や環境省からの事務連絡に基づき、”所有者の判明しない猫を駆除目的で捕獲することは、動物愛護管理法における殺傷や虐待に当たる可能性があること”、”猫の行動範囲等を鑑み、他人が所有又は占有する猫である可能性があること”など諸般の事情を考慮する必要があることから、本市では、独自に定めた事務処理要領に基づき、原則、遺失物として警察に届けられた猫や自活不可能な子猫に限って引取を行っています。
○引取りを行った猫については、産まれて間もない子猫を自宅で一時的に預かり、一般への譲渡が可能となる2箇月齢まで飼育していただく「子猫の一時預かり在宅ボランティア」制度をはじめとした譲渡事業をボランティアスタッフ、動物愛護団体、行政が一丸となって、一つでも多くの命を救えるよう取り組んでいるところです。
大阪市 生活衛生課
堺市 堺市動物指導センター
神戸市 保健福祉局 健康部 生活衛生課
岡山市 保健所衛生課 動物衛生係
広島市 健康福祉局 動物管理センター
北九州市 動物愛護センター
福岡市
熊本市
中核市
函館市 市立函館保健所生活衛生課
旭川市 動物愛護センター
青森市 青森市健康福祉部青森市保健所 生活衛生課
盛岡市生活衛生課
秋田市 保健所 衛生検査課
郡山市
いわき市 保健所生活衛生課
- (2)(3)選択
常に防除できている行政施策:他人が所有する猫である可能性があり駆除を目的とした捕獲はできないことを伝え、近づかなくさせる方法について助言しており、その一つとして変動超音波式猫被害軽減機を試用目的で一定期間無料貸出しています。
宇都宮市 宇都宮市保健所 生活衛生課
前橋市 前橋市保健所 衛生検査課
高崎市
川越市
越谷市 保健所 生活衛生課
船橋市
柏市 動物愛護ふれあいセンター
八王子市
横須賀市 保健所生活衛生課
金沢市 保健所 衛生指導課 小動物管理センター
長野市 長野市保健所食品衛生課乳肉・動物衛生担当
岐阜市 岐阜市保健所 生活衛生課
豊橋市 健康部 保健所 生活衛生課
豊田市 動物愛護センター
岡崎市 岡崎市動物総合センター
大津市 大津市動物愛護センター
豊中市 保健所 衛生管理課
高槻市 動物愛護センター
枚方市 保健衛生課
東大阪市 東大阪市保健所食品衛生課
- (2)(3)選択
常に防除できている行政施策:猫については、外見から野良猫と飼い猫の判別ができず、飼い猫の可能性を否定できないため、引取りを行っていません。ただし、離乳前の子猫については逸走した飼い猫と考えられず、そのまま放置しておけば衰弱死する可能性もあるため引取っています。猫による生活環境被害で困っておられる住民の方から野良猫の駆除を求められる事がありますが、行政では猫の捕獲を実施していないため、被害軽減のための忌避方法のご案内を行っています。また、無責任な餌やりをされている方が特定できれば、周辺住民に迷惑をかけないよう、適正に管理するように指導しています。なお、飼い猫の引取相談には、新しい飼い主を探す努力をするなど飼い主責任を果たすよう指導し、その方法等について説明し、やむを得ない事情が認められる場合は引取を行っています。事前連絡なしに、動物を持ち込み引取を希望された場合はその場での引取はお断りしています。
姫路市
尼崎市
西宮市
奈良市 保健所 生活衛生課
和歌山市
倉敷市 生活衛生課 食品衛生担当
福山市
下関市
高松市 生活衛生課 動物愛護係
松山市
高知市 生活食品課
- (1)引き取る
根拠法令と整合性のある理由:
(※質問文の「あらかじめ殺す処分や駆除を前提とし」が二重線で消去)
ただし、動愛法第35条第3項に規定されているのは、「所有者不明」であり、「所有者はいないが管理をしている者がいる」事が確定していると思われる猫(耳カットされている等)は引き取りません。同条同項の「その他の者」とは、違法行為者以外のすべてのものを指すという環境省の解釈であり、今回の事務連絡によってその解釈が変更されるものではないとの返事がありました。
久留米市
長崎市 長崎市動物管理センター
大分市
宮崎市 宮崎市保健所 保健衛生課
鹿児島市
那覇市 環境部 環境衛生課
- (1)~(3)選択なし
- 別紙意見:所有者の判明しない猫の引取りに関する当市の状況及び見解をお答いたします。動物の愛護及び管理に関する法律、同法の一部を改正する法律案に対する附帯決議八に基づき駆除目的に捕獲された飼い主のいない猫の引取りは、動物愛護の観点から原則として引き取らないこととしており、捕獲理由や捕獲状況等を慎重に確認をした結果として、引取りを行った例はございません。今後につきましても同様に、原則として引き取らないこととなりますが、やむを得ず引取った場合においては、前附帯決議八の「やむを得ず引き取る際には、猫の所有者又は占有者を確認しつつ関係者の意向も踏まえた上で、引取り後に譲渡の機会が得られるよう最大限努める」こと及び平成27年6月17日付、環境省自然保護局総務課鉱物愛護管理室長発の「捕獲檻で捕獲された猫への対応について」の「3.引き取りを行った猫については、動物愛護管理法第35条第4項の規定及び犬及び猫の引取り並びに負傷動物の収容に関する措置についてに基づき、以下のとおり適切に対応すること。」に基づき対応してまいります。
まとめ
平成26年より一部の県にて、野良猫被害として市民が行った、殺処分を目的に捕獲罠で捕獲した役所の猫の引取りについて、当県で活動の愛護団体による事実確認調査や経過情報を面談等の方法で収集し、その後改善要求活動が行われました。
それら集約した事実に基づき、当協会で関係各所と積極的な情報交換を行い、平成27年6月17日の環境省動物愛護管理室長からの事務連絡の内容を踏まえ、今回国内の引取り状況について全国都道府県、政令指定都市、中核市に向け文書でアンケートをおこないました。
引き取るが全体の5.4%だったことに対し、引き取らないは73.2%。
(未回答未選択他21.4%)
動愛法第35条をあげた行政のその他意見を一部抜粋。
- (質問文の「あらかじめ殺す処分や駆除を前提とし」が二重線で消去)ただし、動愛法第35条第3項に規定されているのは、「所有者不明」であり、「所有者はいないが管理をしている者がいる」事が確定していると思われる猫(耳カットされている等)は引き取りません。同条同項の「その他の者」とは、違法行為者以外のすべてのものを指すという環境省の解釈であり、今回の事務連絡によってその解釈が変更されるものではないとの返事がありました。
- 動愛法第35条で猫の引取りは都道府県等の義務とされていることから、拾得者等から正当な手続きで引取りを求められた場合、同法第35条第3項に基づき引取りを実施しています。ただし、その際には他人が所有又は占有する猫であったり、地域猫として管理された猫である可能性を踏まえて、確認を十分に行っています。また当県では引取った猫に生存の機会が得られるよう、ボランティアや関係機関と連携しながら譲渡に努めているところです。
- 猫の所有者の8割は自宅の内外を出入り自由にさせた飼い方をしている。また、飼い主もしくは面倒を見ている人がいなければ猫が生きられないことに加え、飼い主もしくは面倒を見ている方が猫の行方不明の際、その所有権を主張される現状を鑑み、当市では誰かの財物であるといった視点から、遺棄に該当する事案以外の飼い主不明の猫の引取りを断っている。さらに、駆除を目的とした捕獲の相談については、駆除するための根拠法令がないこと、捕獲の手法によっては動物愛護管理法違反(動物の虐待)や鳥獣保護法違反に該当する可能性があること、場合により他人の財物の横領に該当する可能性があることを説明し、関係法令違反に該当しないよう注意喚起している。これらのことから、当市においては現在まで、駆除目的で捕獲された(または疑いのある)猫が持ち込まれたことは一度もない。
- そもそもの対応として、処分や駆除の目的で捕獲をしてはならないと府民に対して指導をしております。一般的に所有者が不明の成猫については、やむを得ない場合を除き、動物愛護の観点から引き取りをしておりません。
- 本市では、野良猫でお困りの地域において、「京都市まちねこ活動支援事業」を実施し、野良猫が無秩序に増えることを防止し、野良猫の引取数減少に向けて積極的に取り組んでいます。そのような中、本市に猫の引取り依頼があった際は、お示しいただいた附帯決議や環境省からの事務連絡に基づき、”所有者の判明しない猫を駆除目的で捕獲することは、動物愛護管理法における殺傷や虐待に当たる可能性があること”、”猫の行動範囲等を鑑み、他人が所有又は占有する猫である可能性があること”など諸般の事情を考慮する必要があることから、本市では、独自に定めた事務処理要領に基づき、原則、遺失物として警察に届けられた猫や自活不可能な子猫に限って引取を行っています。引取りを行った猫については、産まれて間もない子猫を自宅で一時的に預かり、一般への譲渡が可能となる2箇月齢まで飼育していただく「子猫の一時預かり在宅ボランティア」制度をはじめとした譲渡事業をボランティアスタッフ、動物愛護団体、行政が一丸となって、一つでも多くの命を救えるよう取り組んでいるところです。
- 飼い主がいない猫や野良猫は行政が収容しなければならない対象動物ではないことを動物愛護及び管理に関する法律に明確化する必要がある。
動物愛護法の目的は、動物の健康や安全、生命尊重、友愛及び平和を目的としたものに対し、上記内容のように、動愛法第35条を以ってしてひとつに事案に対し、各行政により両極または多様の見解があることが問題であり今後の課題のひとつといえるでしょう。
今回の駆除目的で捕獲した猫の引取りのような類似の事態は全国に少なくありません。また各行政における動物愛護法の解釈の違いも事態の改善を滞らせる一因といえるため今後も当協会は、このような事案に対し協力団体とともに取り組みと問題提起を続けます。