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【今だから明かす あの映画のウラ舞台】角川編(上) 『人間の証明』『野生の証明』… 春樹流メディア戦略の始まり 潤沢な宣伝費で大量の新聞広告

 東映宣伝マン歴40年の福永邦昭にとって、2人の社長との出会いは衝撃的だった。ひとりは東映社長、岡田茂。もうひとりが角川書店社長、角川春樹だ。

 角川春樹をプロデューサーに迎え、1979年1月に公開された横溝正史原作「悪魔が来りて笛を吹く」以降、34本の角川作品で宣伝を担当した福永は“春樹流”メディアミックス戦略を徹底的に進めた。

 75年、角川書店の社長に就任した春樹は福永の2つ下。その翌年、映画製作会社「角川春樹事務所」を設立。“読んでから見るか、見てから読むか”の大キャンペーンを張り、自社の書籍を映画化。第1弾の横溝正史原作「犬神家の一族」(東宝配給)は一大センセーションを巻き起こした。

 「潤沢な宣伝費で大量の新聞広告、テレビスポットを打つやり方に少し抵抗があった」と福永は“角川商法”には懐疑的だった。

 だが77年、東映配給となった森村誠一原作の「人間の証明」は、ジョー山中の主題歌がヒットするなど〈小説・映画・音楽〉の三位一体宣伝が大成功。

 続く78年、同じく森村作品の「野性の証明」も主演の高倉健に新人の薬師丸ひろ子をキャスティングし大ヒット。独創的で斬新な映画を次々と世に送り出した。

 「角川映画へのイメージが変わり出した頃、私が担当した深作欣二監督の『宇宙からのメッセージ』のロケ現場に春樹社長が陣中見舞いに来た。2年後に深作監督と『復活の日』を作るからで、私は初対面だった。その時“君が宣伝担当か”と何か含みのある言い方をされた」