コード進行とは (コードシンコウとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
- ️Mon Mar 07 2011
コード進行とは、機能和声の流れを一部分、特に主和音から主和音のまとまりで切り取り明示したものである。
忙しい人のための概要
カノンコード・王道進行・ツーファイブさえ覚えれば作曲できます。れっつとらい。
忙しくない人のための概要
下に述べる基本的な進行を覚えてしまえば、ギター片手に作曲することができる。
基本のコード進行
元の協和音をトニカ(トニック)、4度を基音とする協和音をサブドミナント、5度のをドミナントと言う。
そして、トニカをT、サブドミナントをS、ドミナントをDと表記することにして、例えばT→S→D→T(I→IV→V→I)と和音を連ねると、
このように、単純な曲の伴奏にすることができる。ちゃんと終わった感じのする、和音のまとまりを、カデンツ(終止形)ともいう。簡単なカデンツとしては、他にT→D→T、T→S→T、T→D→S→T がある。T の所で複数のカデンツをつなげる、D に対するドミナントとして S を使う(一種の代理和音)などして、複雑なカデンツが作られる。
忙しい人向けの概要の詳細な解説
以下、古典的な表現で書く(つまり、主音をI度とし、そこをベースに和音を記述する。例えばハ長調であればC=I、Dm=II、Em=III、F=IV、G=V、Am=VI、Bdim=VII)。
さて、ここまでで出てきていない終止として、変終止がある。これはIV→Iで曲を終えるもので(IVの前には当然Tが来る)、これはT→S→Tで終わる、やや特殊な終わり方である。アーメン終止とも呼ばれる。
また、まれに半終止をもって曲が終わるパターンがある。短調において、IV1→VまたはV7で終わる(通常、半終止ではVを使いV7は使わないが、曲が終わる場合には使いうる)というパターンがあり、これをフリギア終止と呼ぶ。バロック時代の器楽の、緩徐楽章で用いられることが多い。
なお、D→Sの進行は古典では嫌われているが、これはこの進行が弱いためである。また、VIIの和音は本来の使われ方はあまりにもニッチ(ほぼ反復進行でしか使われず、しかも進行先はIII固定)であり、同じ形のV7の根音省略形で使うことがほとんどである(短調では原則として固有のV7ではなく、同主長調のV7に変わるため、VIIとは形が変わってしまうが、V7→III連結の際はV7の第3音は導音ではないので、短調固有のV7を使って構わない)。
代理和音
和音を、別の似た和音に置き換えると、コード進行に変化を付けることができる。似た和音の置換えとして、例えば次のようなものがある。
- メジャー→マイナー、マイナー→メジャーの置換え(F→Fm)
- 3和音のうち2音が共通な和音への置換え(C→Em、F→Dm、Cm→Cdim)
- 3和音と共通の音を持つセブンス、シックス、テンションコードへの置換え(G→G7、C→C69)
- さらに冒険して、3和音の2音を置換え(G→B♭)
代理和音で置換えすぎると、元の調から外れてくるが、それはそれで、別の調でのコード進行や、転調のつなぎなどに使うこともできる。
五度圏とコード進行
コード進行を視覚的に理解するための有力なアプローチとして「五度圏」の図を活用する方法がある。
五度圏はもともと調(五線譜の先頭の♯・♭の数)の遠近関係を視覚的に示すものだが、 和音も調と同じように「Cメジャー」「Aマイナー」のように呼ばれることから 「和音の五度圏」として捉えることもできる。
通常、曲のコード進行は、五度圏の上でその調と同名のコードから始まり、その両隣(サブドミナントとドミナント)のコードを経て、調と同名のコードに帰ってきたタイミングで「曲が終わった」ように感じさせる「終止形」を構成している。
また、「平行調」と呼ばれる、同じ調号のメジャー・マイナーのペア(例: C と Am、G と Em、など)についても、同名のコードが互いに代用されることが多い。 代用されるコードについてもドミナント、サブドミナントの派生コードを作れば、その調で合計6つの「ダイアトニックコード」が浮かび上がってくる。これらのコードだけを使ったコード進行であれば、転調したように感じることなく、普通に曲が作れる。このようにコードの遠近関係を視覚的に把握するのにも五度圏が役立つ。
さらに、ルート音が同じでメジャー・マイナーを変えたり(=同主調に転調)すると、 五度圏の上で「調の隣近所」をはみ出して「直角」に(=調号3個分)移動し、 いわゆる「短調にしてみた」「長調にしてみた」の雰囲気が出せるようになる。 脳内でこの感覚がイメージできれば、やがて自分の出したい雰囲気のコード進行を視覚的に導き出せるようになる(ね、簡単でしょ?)。
コード進行の応用例
「大きな古時計」を例にとってみる。
この曲では和音の進行として、例えば T→D→T→S→S→D→T というカデンツを当てはめることができる。そして、普通の協和音や代理和音を置いていくと、置き方によって以下のサンプルの様に、色々雰囲気を変えることができる。
カデンツ:T→D→T→S→S→D→T をあてはめたもの | ||
1回目 | C G C F Dm7 G C | 普通 |
2回目 | Am E7/G# C/G D/F# F G {Csus4 C} | マイナーのクリシェ |
別のカデンツ、調をあてはめたもの | ||
3回目 | C E7 Am C7(13)/B♭ F G C | J-POP定番進行 |
4回目 | Am E7 E7 Am B7-9 E7 Am | マイナー |
5回目 | C Em7/B C7/B♭ A7 Dm7 G7 C | メジャーのクリシェ |
6回目 | A♭ B♭ C B♭M7 A♭ G {A♭B♭ C} | サブドミマイナー多用 |
7回目 | Am D Am D Am D Am D | ドリアンもどき |
8回目 | Am7 D7 {G G7} {C Cm(9)} Am7 D7(13) {Gsus4 G} | 属調 |
こういう感じで、様々な組み合わせで和音を並べることで、メロディに色を付けることが出来て、多彩な音楽が生まれてくる。
その他の著名な進行
- 解決進行
- ネーベンドミナンテ
- 循環コード
- 逆循環
- ツーファイブ
- 王道進行(Ⅳ-Ⅴ-Ⅲm-Ⅵm)
- カノン進行(Ⅰ-Ⅴ-Ⅵm-Ⅲm-Ⅳ-Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ)
- 小室進行(Ⅵm-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ)
- 丸サ進行(Ⅳ-Ⅲ-Ⅵm)
- 落ち葉進行(Ⅰm/Ⅶ-Ⅲddim/♭Ⅶ-Ⅵ-Ⅱm-♭Ⅱaug-Ⅳ/Ⅰ-Ⅴ)
暇な人向けの概要
とても暇な人向けに、コード進行についてきちんと解説をする。
固有3和音とは
すべてを説明するにあたり、固有3和音の説明は絶対に外せないのでそれを説明する。
固有3和音はある主音を持つある旋法(つまり調のこと)にある音を、根音とその3度上の第3音、それと5度上の第5音から構成される和音のことである。その際、根音が主音から何度上かを用いて和音記号を表記する。
ただし、短調においては、通常は和声的短音階を用いて導音を作るので、Vの和音は第3音が導音の役割を果たす限りにおいて半音上げる。
構成音の重複と省略
和音において、構成音は同音、もしくはオクターブ違いで重複しても同じ和音である。ただし、原則として、次に進む音を重複させるのは望ましくない。
逆に、省略は基本的にはNGである。ただし、第5音は省略してよい。
カデンツ
古典的進行においては、以下の3つが原則である。以下、トニック・サブドミナント・ドミナントをそれぞれT・S・Dと略記する。
- T→D→T
- T→S→D→T
- T→S→T
固有3和音の役割
各固有3和音の役割は以下の通り。
和音記号 | 説明 | 進行先 |
---|---|---|
I | 基本的なTである | どこでもOK |
II | 代理のSである | V |
III | TとDどちらにもなれる | TのIIIであればIV、もしくはIIの第1転回形 DのIIIであればVI |
IV | 基本のSである | I・II・V・VII |
V | 基本のDである | I・III・VI |
VI | 代理のTである | II・III・IV・V |
VII | 反復進行以外ではまず使わない | III |
終止形
原則として、どこかでまとまりを作らなければならないが、そのまとまりの区切りとなるのが終止形である。終止形には以下の4種類がある。
これらの終止形においては、末尾の音符は長いものを用いるのが通例。
7の和音・9の和音
3和音の上に根音から7度上の音を足したものを7の和音、さらにその上に根音から9度上の音を足したものを9の和音と呼ぶ。これらの2音は次の和音では2度下がる。
他の調の和音の借用
曲において、他の調の和音を借用することができる。
借用した際の和音の役割は、根音がどこにあったかによって決まる。
転調の規則
曲の中で転調する際は、以下のルールに従う。
- 固有和音調への転調においては、元の調における進行として不自然にならなければ、どのように行っても問題ない。ただし、限定進行は適切に解決されるのが基本である
- 同主短調のその調以外の固有和音調への転調においては、元の調のIかVからその調へ転調する限りにおいては、元の調における進行として不自然にならなければ、どのように行っても問題ない。ただし、限定進行は適切に解決されるのが基本である
- 同主短調への転調においては、カデンツは中断しない。原則として転調先のI以外の和音を経由して転調する
- 同主長調への転調においては、カデンツは中断しない。原則として転調先のIの和音を経由して転調する
- 長調におけるII調・III調・VI調、短調におけるIV調・V調の同主長調への転調は、一度それらの元の調を経由してから目的の調へ転調する
- それ以外は転入先の調のVの和音を経由する。ただし、V9を経由して長調へ転調する場合は、その長調の同主短調のV9を借用する
これらを踏まえたうえでの具体例
C→F→D→G→C/E→F→G→C7→Dm→G→Am→Gm→C7/G→F/A→B♭→Em→F→Dm→G7→C
まず、最初の「D」はV調であるト長調からVの和音を借用している。その後、「C7」ではIV調であるヘ長調からV7の和音を借用(本来のハ長調のI7はCM7である点に注意)、GmでIV調であるヘ長調へ転調し、Emでハ長調へ戻っている(Emはハ長調におけるIIIの和音)。最後はツーファイブ(II→V)の形からIの和音へ戻り、曲を締めくくる。
各ジャンルの音楽とコード進行
案外適当。そもそもJ-POPのような2・3の定型コード進行で説明できるジャンルなぞほんの一握りなので、あくまでこんな進行が使われてまっせ程度の覚え書きである。
ロマン派音楽
ロマン主義の時代にはコードネームは存在しなかったが、和声の進行に関する基礎的な部分はおおむね同様の理論に基づいている。
ロマン派音楽はおおざっぱに言えば感情的な表現を好む傾向にある。故に和声も、部分的転調による副解決進行のような、大胆でわかりやすい大味なものがよく用いられている。しかしながら理論としては大元の古典派音楽を踏襲しているので、例えばIV△7→V7→IIIm7→VImのような後代で用いられた俗な進行 (特に例示の進行のIIIm7はアカデミックな理論分析では説明が難しい) はあまり出てこない。
ジャズ
コードネームの考え方が生まれた源流の音楽である。黎明期において既にブルース進行の楽曲が録音されているのが確認できる。強烈な副解決進行が用いられているのは前代のロマン派と共通する部分であるが、明確なツーファイブのカデンツ (ケーデンス、終止形) を重用したのも特徴である。後期にはコード進行そのものを否定した楽曲も作られるようになった。
ケイジャン・ザディコ・スワンプブルース・&c.
1950年代前後に興った民俗系の音楽においては、IV - I - V - I などのような単純な進行が用いられることが多い。あまりアカデミックな和声概念のなじまない民謡においてはよくあることだが、それでもBメロ (に相当する部分) にてドッペルドミナント (カノンコード参照) が用いられるなど和声的特徴も見出すことができる。
ディスコ系ダンスミュージック
コード進行よりもビート感重視のジャンルであり、殆どトニックに終始する楽曲もあるが、歌ものなどメロディラインがはっきりしているものでは多少和声的なコード進行も用いられている。
ユーロビート系ダンスミュージック
先述のディスコよりも定型化・メロディアス化した、典型的ないわゆる「打ち込み」音楽のジャンル群であり、それまでに類を見ない程度にIV△7→V7→IIIm7→VImのコード進行が多用された。
J-POP・アニソン
90年代前後からのJ-POPは先述のユーロビートよりも定型化・形骸化が進んでゆくようになった。コード進行も例に漏れず、メロディアスな楽曲によくあうカノンコードの頻出や一ビッグアーティストによる逆循環の多用、そしてIV△7→V7→IIIm7→VImの重用が特徴として挙げられる。特にIV△7→V7→IIIm7→VImは「このコード進行を使えば必ず売れる」と言わんばかりに売り上げ上位曲に用いられ、今日では (広義の) アニソンにも用いられるようになっている。
関連商品
島岡譲の「和声 理論と実習」が、古典的なコード進行を学ぶのに体系的に整っています。60年経った今でも、バリバリの現役です(1巻・2巻
・3巻
・別巻
(課題集))。
ただし、全3巻を網羅的に学ぶとなると、基本的には3年間必要です[1]。同じ著者の「総合和声」を使うのもありでしょう。3年間以上あるならこの2冊両方使うことも検討しましょう。
逆に1年間で済ませたいなどの事情がある場合は、別の本を使ったほうがいいですし、そもそもこれらは古典音楽を念頭に置いてますから、よりモダンな音楽を学びたい場合は別の本を使ったほうがよいです。
関連動画
関連項目
脚注
- ページ番号: 4582090
- 初版作成日: 11/03/07 18:44
- リビジョン番号: 3318855
- 最終更新日: 24/10/30 11:14
- 編集内容についての説明/コメント:
和声 理論と実習をベースに、最低限の暇な人向け解説追加