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上顎中切歯 - Wikipedia

上顎中切歯

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上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし、英語: maxillary central incisor)は上顎歯列正中線の両側に並ぶのこと。正中から一番目にあることから上顎1番とも言い、左側の歯を大黒歯、右側の歯を恵比寿歯とも言う。切歯の中で最も大きい[1][2]

近心側隣接歯:反対側の上顎中切歯

遠心側隣接歯:上顎側切歯

対合歯:下顎中切歯下顎側切歯

歯冠が完成するのは四~五歳時で、七~八歳で萌出、歯根完成は九~十歳の時である[3]。ほぼ左右対称な歯である[4]

唇側面

U字型で、切縁部と歯頸部を比較すると歯頸部の方がわずかに狭い[4][5]隅角徴は確認できる[6]。切縁から歯頸部に向けて歯冠部の2/3程度を近心唇側面溝と遠心唇側面溝という浅い二つの溝が走り[6]、これで三分された部位には、近心唇側面隆線、中央唇側面隆線、遠心唇側面隆線が起こる[6]

舌側面

舌側面は唇側面より歯頸部で狭まっているため、三角形またはV字型である[4][6]。切縁2/3で凹面であり、周縁の隆起部を、近心側を近心辺縁隆線、遠心側を遠心辺縁隆線といい、中央の陥没部を舌側面窩という[6]。黄色人種はシャベル型切歯が多い[7][8]。舌側面窩にも唇側面と同様に、近心舌側面溝と遠心舌側面溝があり[6]、この二つの溝により三つに分けられた近心舌側面隆線、中央舌側面隆線、遠心舌側面隆線が確認できることがある[6]。しかしこれらは唇側側に比べると発育が悪い。両辺縁隆線は歯頸部で合流し、基底結節となる。基底結節から切縁に向け、数本の棘突起が見える[6]盲孔は上顎側切歯と比べ少ないが、存在することもある[7]。また、まれに切歯結節が見られることもある[9]

近心面
遠心面

隣接面は細長い三角形。隣接歯との接触点は切縁近くの中央部[10]。わずかにふくらんでいる。

切縁は近心側がわずかに高い[4]。最大豊隆部は近心よりで彎曲徴が確認できる。

単根歯であり[10]、円錐形と三角錐の中間。唇側面、近心舌側面、遠心舌側面が確認できる[11]歯根徴が確認できない場合もある。

歯髄腔は歯の外形と類似した形態を取る[10]が、第二象牙質の形成のため、年を取るにつれ縮小する。根管は円形に近い。単純根管が多く、側枝分岐根管になることは少ない[12]

  1. ^ 藤田ら, p.38
  2. ^ 栗栖, p.28
  3. ^ 本川ら, p.53
  4. ^ a b c d 藤田ら, p.39
  5. ^ 栗栖, p.29
  6. ^ a b c d e f g h 栗栖, p.30
  7. ^ a b 藤田ら, p.40
  8. ^ 赤井, pp.134-135
  9. ^ 赤井, p.136
  10. ^ a b c 栗栖, p.31
  11. ^ 藤田ら, p.42
  12. ^ 栗栖, p.32