国会議員(コッカイギイン)とは? 意味や使い方 - コトバンク
- ️デジタル大辞泉,精選版 日本国語大辞典,改訂新版 世界大百科事典,日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
国会議員 (こっかいぎいん)
日本で,全国的レベルでの政治的課題に関する立法的機能の遂行,国家予算の審議・議決,中央政府の監督・批判を任務とする全国的議会としての国会の構成メンバーをいい,衆議院議員と参議院議員を含む。衆議院議員は代議士とも呼ばれる。ともに国民の直接選挙で選ばれる。
地位
国会議員は他の議院の議員となったり,被選の資格を失ったときは当然退職となる(国会法108,109条)。その他,辞職,除名,資格争訟で資格なしと決定されたとき(日本国憲法58,55条)などに,議員は身分を失う。国会議員は全国民を代表する(43条1項)。このことは,議員が選挙民の指示に法的に拘束されず,みずからの自由意思で良心に従って行動できる意味と解されてきた(代表委任または自由委任)。しかし,国会議員が政党および選挙民の意思に事実上拘束されることは認めざるをえない。汚職など国民の意思から乖離する議員の行為は,全国民の代表性に違反する(国民代表)。また,選挙の得票率と議席率がかなり異なるような選挙制度(小選挙区制はその例)も,議員の全国民代表性と適合しない。
議員特権
国会議員は,その所属する議院が,国会の構成機関として十分職責を果たしうるよう,特別の権利を憲法で保障されている。その一は不逮捕特権といわれるもので,議員は,院外で現行犯罪を犯す場合を別として,国会の会期中は,その所属する議院の許諾がなければ逮捕されず,また,会期前に逮捕された議員は,その所属する議院の要求があれば,会期中釈放されなければならないことになっている(日本国憲法50条,国会法33条)。これは,政府が検察権力をもって,野党議員を拘束し,議院の活動に圧力を及ぼさぬようにとの配慮からのもので,議院本位の制度というべきである。その二は,議院の中で議員が行った演説,討論または,案件についての賛否の意思表示(表決)について,院外で,民事上(たとえば〈名誉毀損〉),刑事上(たとえば〈秘密漏洩〉)などの責任を問われないという,発言・表決の免責特権である(日本国憲法51条)。これは,院内の職務上の行為にかかわる特権であるが,院外の政治批判を免れることを意味しない。また院内で責任を問われることはありうるし(懲罰),この特権も議院本位のものといってよい。議員特権は多くの立憲国家に共通して認められ,明治憲法でも認められていた。
議員の権限
法が国家機関としての議員に認める行動範囲(権限)で,おもなものは次のとおりである。(1)議案発議権(議員立法) 議員はその議院の権限が及ぶ事項について議案を発議し,修正の動議を提出できるが,その場合,衆議院では議員20人以上,参議院では議員10人以上の賛成を要する。予算および予算措置を伴う法律案の場合,衆議院では議員50人以上,参議院では議員20人以上の賛成を必要とする(国会法56,57条,57条の2)。(2)質問権 議長の承認を得て,文書をもって内閣に質問できる。内閣は質問主意書を受け取れば7日以内に答えなければならない。緊急質問は口頭でもできる(74~76条)。(3)質疑権 議員は口頭で,議題になっている案件について,委員長,発議者,国務大臣等に対し説明を求めることができる。そのほか,討論に参加し,表決に加わる権能等をもっている。また,国会議員は,〈国会議員の歳費,旅費及び手当等に関する法律〉(1947公布)により,一般公務員の最高給料額を下まわらない歳費を国費から受ける(日本国憲法49条,国会法35条)。そのほか,諸手当,議員会館,秘書の便宜が保障されている。議員はその権能に対応し義務を負うが,召集に応じ,委員会を含め会議に出席し,表決に参加することは最小限の義務である。院内の秩序を乱す議員は,その議院によって,その程度により,公開議場における戒告・陳謝,一定期間の登院停止,除名等の懲罰に付せられることがある(日本国憲法58条2項,国会法122条)。
議員定数
衆議院議員の定数は,戦後466人で出発し,沖縄復帰と定数増加(1964年と75年,86年)をみたが,1994年に公職選挙法の改正で,500人となっている。うち300人が小選挙区選出であり,残りの200人は,全国を11の区に分割したブロックごとに比例代表で選出される(1998現在)。任期は4年だが,衆議院の解散のときはそれまでとなる(日本国憲法45条)。参議院議員の定数は当初250人。うち全国区100人,地方区150人。沖縄復帰で地方区が2人増え252人となった(1998現在)。任期は6年だが,3年ごとに半数ずつ改選する。1982年に公職選挙法の改正で従来の全国区が政党および政治団体を選ぶ比例代表選出区に変わった。なお,議員定数の選挙区別配分が人口比と不均衡になっている問題があるが,これについては〈議員定数〉の項を参照されたい。
執筆者:
社会的特性
国会議員の資格については,被選挙権を衆議院議員の場合満25歳以上,参議院議員の場合満30歳以上とする(公職選挙法10条)ほかは,被選挙権の欠格者は,禁治産者や禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者などごく小範囲に限定され(公職選挙法11条),人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産,収入による差別は禁じられている(日本国憲法44条)。
しかし,このような制度的前提にもかかわらず,大衆デモクラシー下の膨大な数の選挙民を対象とする選挙運動,政治的課題の高度の専門化・技術化,国会議員の常勤職化などの結果,今日,国会議員の現実上の供給源は,むしろ著しく限定されており,国会議員の年齢構成や男女別構成も,それによって大きな影響をうけている。まず,日本の国会議員の社会的背景にみられるきわだった特徴は,元官僚,労働組合元幹部,政治家二世などがきわめて数多いということである。1983年総選挙の結果によると,当選者中,中央官僚出身66人,労働組合幹部出身61人で,自民党衆議院議員中の約4分の1が官僚出身者,社会,民社各党議員中の4割前後が労働組合出身者によって占められ,さらに,本人または妻の親が国会議員か閣僚の経験者である者は,総計105人(自民党議員84人)を数えた(朝日新聞社調べ)。対照的に,1982年中間選挙後のアメリカ連邦議会議員の場合,上院ではおよそ6割,下院ではおよそ4割5分の議員が弁護士の経歴をもち,他方,労働組合幹部出身者は,上院では皆無,下院では2人にすぎなかった。
国会議員の年齢の点では,高齢化の進行が目だつ。83年総選挙の結果によると,当選者の平均年齢は56歳で,1955年総選挙での当選者の平均年齢53歳に比して3歳アップしている。また,83年参議院議員選挙での当選者の平均年齢は58歳であった。これに対して,アメリカ連邦議会議員の平均年齢は,最近むしろ下降傾向にあり,1982年中間選挙後についてみると,上院議員,下院議員の平均年齢は,それぞれ53.4歳,45.5歳である。さらに,日本の国会議員中の婦人議員は,39人が進出した戦後第1回総選挙(1946)の場合を除き,総選挙ごとに10人内外で,衆議院議員中の2%前後を占めるにすぎず,83年総選挙での婦人当選者は8人で,全当選者中の1.6%であった。また,同年の参議院議員選挙での婦人当選者は10人で,前回の80年参議院議員選挙で当選した婦人議員9人に加えて,83年参議院議員選挙後の婦人参議院議員は(死亡議員1人を引いて)18人で,全参議院議員中の8%であった(その後の89年の参院選では22人が当選)。ちなみに,アメリカ連邦議会では,日本の場合とは逆に,婦人議員は下院に多く,上院には少なく,1982年中間選挙後の婦人議員は,下院で21人,上院で2人であった。
執筆者:内田 満