基礎(キソ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
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基礎 (きそ)
foundation
基礎工とも呼ばれる。建築物や橋,ダムなどの構造物の自重による鉛直方向の荷重や,地震や風によって構造物に加わる水平方向の荷重を地盤に伝えるための工作物。構造物の下部に広がって設けられる下部構造体(フーチングfootingといい,この部分のみを基礎と呼ぶこともある)と,杭などのように地盤側に設けられる工作物である地業とからなる。構造物の上部構造の荷重は,鋼材やコンクリートでつくられた柱や壁に集約されて支えられており,常時,柱に働いている圧縮力は断面1cm2当り,鋼柱で1000kgf,コンクリート系の柱では数十kgfの程度である。それに対して構造物を載せる地盤の許容耐力は,かなりじょうぶな硬い砂地盤でも1cm2当り数kgfと小さく,柱や壁を直接地盤に建てることは一般に不可能である。このためフーチングによって柱や壁の下部の地盤との接触面に広がりをつけ,地盤の単位面積に加わる荷重を地盤の耐力に見合うようにすることが必要となる。木造の寺院の柱に礎石が用いられているが,まさにそれがフーチングに当たる。現在では一般にフーチングは鉄筋コンクリートでつくられるが,木造住宅など加わる荷重の小さい構造物の場合は無筋コンクリートも用いられる。構造物の重量が大きいか,表面付近の地盤が弱いときにはフーチングのみで構造物を安全に支えることは困難なので,杭などを利用して深いところにある良好な地盤に荷重を伝える必要がでてくる。
基礎の種類と特徴
基礎は上部構造物からの荷重を地盤に伝える方式によって,直接基礎,杭基礎,ケーソン基礎に大別される。
(1)直接基礎 構造物からの荷重をフーチングによって直接地盤に伝える形式の基礎。一定程度以上の厚さをもつ良質な地盤が比較的浅い(深さ5~6m以内)ところに得られる場合に多く用いられ,ふつうの土砂地盤では,一般に地盤のフーチングとの接触面を割りぐり石などを用いて締め固める。直接基礎はフーチングの地盤に対しての広がり方から次の四つに分類されている。(a)独立フーチング基礎 1本の柱や独立した煙突,塔などの下に単一に設けられるもの(図1-a)。日本の建築物では,工場,体育館などの大空間建物でないかぎり,柱脚下をはり(基礎ばりあるいはつなぎばりと呼ばれる)でつなぎ,独立フーチング基礎にモーメントがかからないようにするとともに不同沈下に備えている。(b)連続フーチング基礎 布基礎とも呼ばれ,フーチング部分が長く帯状になっているもの(図1-b)。柱下だけのフーチングの面積では地盤の耐力を超える単位面積当りの荷重が加わる場合に,柱間を結ぶ形で設けられ,壁の下にも壁に沿って設けられる。(c)複合フーチング基礎 2本以上の柱をまとめて一つのフーチングで支える形式のもの(図1-c)。フーチングの広がりが敷地境界で限定されたり,柱間が狭い場合に設けられる。底面の重心が,その部分の荷重の重心となるべく一致するようにする。(d)べた基礎 いかだ基礎とも呼ばれ,構造物の底面全体で荷重を地盤に伝える形式のもの(図1-d)。マット状の厚い鉄筋コンクリートの板で形成したり,鉄筋コンクリートの板をはりで支える形にしたりする。上部構造の平面上のある部分が重かったりして荷重の偏在があったりすると,各部分の地盤の沈下を考慮して設計をしなければならないので,設計がむずかしい。
(2)杭基礎 杭基礎は構造物からの荷重を杭などの地業によって地盤に伝える形式の基礎で,直接基礎では支持が困難な軟弱地盤や重量の大きい構造物の場合に用いられ,一般に構造物の荷重を深いところにある良質な地盤に伝える(図2)。ピア(柱造の構造物)を地業に用いるピア基礎は,建築の分野では杭基礎に含めているが,土木の分野では後述のケーソン基礎に含めることが多い。フーチング部分は直接基礎の場合の独立フーチング基礎,連続フーチング基礎,複合フーチング基礎やべた基礎あるいははりの形をとる。荷重に対する抵抗機構からは,主として杭先端の硬い地層で鉛直荷重を支持する支持杭,主として杭の周辺に働く土との摩擦力により鉛直荷重を支持する摩擦杭,水平力や引抜きに抵抗するための杭などに分けられ,また施工方法からは工場で製作した既製杭を杭打機で地盤中に打ち込む打込杭,地中に穴をあけて既製杭を埋め込んだり,中空杭をその内部の土を掘り出しながら地中に押し込み,最後に打撃を加えるかセメントミルクなどで根固めをした埋込杭,地中にあけた穴にコンクリートを打設することにより現場でつくられる場所打ちコンクリート杭に分類される。なお,軟弱な厚い地層を貫いて支持杭をつくった場合,軟弱地層が埋立土などのために圧密沈下すると(地下水のくみ上げでも起こる),土が杭に対して相対的に下がる現象を起こし,支持する方向とは逆方向の摩擦力(負の摩擦力と呼ぶ)が生ずるので,これに対して杭にアスファルト性の滑り剤を塗布して摩擦力の低減をはかったりする。
→杭
(3)ケーソン基礎 地業としてケーソンを用いた基礎で,剛性に富み耐震性にも優れている。適当な地盤が地中や水中の深いところに存在するが,土止めや仮締切りだけではその深さまでの掘削が困難な場合などに用いられ,良質の地盤に到達させることを原則とし,鉛直方向の支持耐力は先端支持力だけに頼る。施工方法からオープンケーソンと空気ケーソンに分けられる。
→ケーソン
基礎の選定
どのような形式の基礎とするかを選定する場合,まず地盤に関する予備調査を行い,それに基づいて本調査(ボーリング,標準貫入試験,各種の土質試験,載荷試験など)を行って,設計上,施工上の資料を確保する必要がある。選定に当たっては,確実に施工ができ,地盤の耐力や沈下量に支障がないことのほか,経済性が考慮される。良好な地盤が得られれば,一般には直接基礎が確実性,経済性の点で有利といえ,直接基礎では,おおむね独立フーチング基礎,連続フーチング基礎,べた基礎の順に経済性は悪くなる。杭基礎は騒音などの公害問題もあり,施工方法に留意が必要である。ケーソン基礎は土木構造物のような大規模なものに適している。軟弱な地盤では基礎工事費が全工事費に対して大きな割合を占めてくるので,むしろ良質な地盤をもつ敷地を選ぶほうが得策の場合もある。また軟弱地盤ではあらかじめ盛土をし,かつサンドパイルなどを打って透水性を高め,圧密沈下を先に起こさせてしまってから盛土を除去して構造物を建設する地盤改良なども行われる。
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