軸(ジク)とは? 意味や使い方 - コトバンク
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軸(読み)ジク
デジタル大辞泉 「軸」の意味・読み・例文・類語
じく【軸】[漢字項目]
1 車の心棒。回転の中心となる棒。「機軸・車軸」
2 中心や基準となる直線。「地軸・結晶軸・座標軸・対称軸」
3 物事の中心。大切なところ。「基軸・枢軸・中軸」
よこ‐がみ【▽軸】
「こよなき―より引き落としけるに、轅ながえばかり出でたりける」〈落窪・二〉
精選版 日本国語大辞典 「軸」の意味・読み・例文・類語
じくヂク【軸】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 車の轂(こしき)を貫いて車輪を保持し車体をささえる棒。車の心木(しんき)。よこがみ。
- [初出の実例]「過二御関山一間、女房出車或以損レ輪、或以折レ軸」(出典:中右記‐寛治七年(1093)一〇月三日)
- [その他の文献]〔春秋左伝‐定公九年〕
- ② 巻くものの心(しん)にする丸い棒。特に巻き物や掛け物などの心木にする棒。また、その両端につき出た部分。
- [初出の実例]「十巻、白木軸、絵金墨帙一枚」(出典:西大寺資財流記帳‐宝亀一一年(780))
- ③ ( ②から転じて ) 巻き物。また、掛け物。かけじ。幅(ふく)。
- [初出の実例]「給二女院御手本軸二巻一。結縁経軸可レ用レ之」(出典:長秋記‐大治四年(1129)九月二日)
- 「床の間には刷毛でがしがしと粗末(ぞんざい)に書いた様な山水の軸(ヂク)が懸ってゐた」(出典:彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉報告)
- ④ ( 巻き物で、②に近い所の意から ) 巻子本(かんすぼん)などの末尾の部分。また、書物の終わりの部分。軸本(じくもと)。
- ⑤ 和歌・俳諧・川柳などで、巻末に記された歌や句。優秀な作や点者の詠など特別のもの。
- [初出の実例]「神宮法楽和歌三十首令レ詠給〈略〉巻頭亭主、軸日野前亜相也」(出典:康富記‐宝徳元年(1449)八月二六日)
- ⑥ 筆、ペン、マッチなどの手でもつ柄の部分。
- [初出の実例]「そこらの富をかきよせる ふでのぢくのあるものを」(出典:梁塵秘抄(1179頃)二)
- ⑦ 植物体の茎、枝、葉の中肋や羽毛の羽髄などの通称。
- ⑧ 果実などの柄。果柄。
- [初出の実例]「九年母の茎(ヂク)の腐るを守る僧」(出典:俳諧・洗朱(1698))
- ⑨ 物事のかなめ。転じて、重要な地位。
- [初出の実例]「細雪」(出典:<出典>)
- [その他の文献]〔漢書‐車千秋伝賛〕
- ⑩ 数学で用いる語。
- (イ) 平面図形を、一つの直線を中心にして回転させ立体図形を得るときの、その直線。
- (ロ) 図形がある直線に関して対称であるときの、その直線。対称軸。
- (ハ) 解析幾何学で、点の座標を定めるとき、基準としてとる直線。座標軸。
- ⑪ 物体が回転運動をするとき、その物体に固定したと考える直線で、その空間的位置を変えないもの。独楽(こま)などにいう。回転軸。
- [初出の実例]「地球が彼の軌道を幾度か廻って、代る代る別の軸(ヂク)を陽へ向けてかしげた」(出典:紫衣の夫人(1930)〈龍胆寺雄〉)
- ⑫ 工学で、機械などの回転する丸い棒。動力伝達を主な目的とする伝導軸と車軸に大別される。
- [初出の実例]「人は毎日この軸を捻りてぜんまいを捲く」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉五)
- ① 車の轂(こしき)を貫いて車輪を保持し車体をささえる棒。車の心木(しんき)。よこがみ。
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 巻き物や掛け物などを数えるのに用いる。
- [初出の実例]「七巻を八軸に分て天の為に講ず」(出典:今昔物語集(1120頃か)七)
- [その他の文献]〔韓愈‐送諸葛覚往随州読書詩〕
よこ‐がみ【軸】
- 〘 名詞 〙 車の心棒。轂(こしき)を貫く車軸。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
- [初出の実例]「我はしりのかたに乗りたりければ、こよなきよこがみより引き落しけるに」(出典:落窪物語(10C後)二)
日本大百科全書(ニッポニカ) 「軸」の意味・わかりやすい解説
軸
じく
shaft
棒状の機械部品で、列車の車軸のように機械部分を支持するだけの車軸と、伝動軸のように回転運動あるいは直線往復運動により動力をある程度距離が離れたところに伝える役目をする回転軸の2種類がある。前者は荷重により曲げ作用を受けるが、後者は曲げとねじりまたは単にねじり作用だけを受ける。普通、中実(ちゅうじつ)丸軸であるが、直径の大きいとき、あるいは軽いことが要求されるときには中空(ちゅうくう)丸軸が用いられる。回転軸はさらに形や支持方法によって次の(2)から(6)に分けられる。
(1)車軸 2個の車輪間に用いられ車体を支える軸。鉄道の客車などに用いられている軸は車輪とともに回転する。また自動車の前車輪を支持している軸は回転しないで静止している。車軸は単に曲げモーメントだけを受けているので、それによっておこる軸内の最大応力に耐えうるように軸の太さを決めればよい。
(2)伝動軸 モーターあるいは内燃機関のような原動機の動力を作業機などほかの部分に伝達するための軸で、主としてねじり作用を受ける。この場合はねじりモーメントによる剪断(せんだん)応力を許容範囲内に収めるように直径を決定する。
(3)アーバーarbour 工作機械の主軸に工具を装着するための軸。フライス盤用には、いくつかのフライス工具を取り付けることができる長いものと、一つのフライス工具を取り付けるための短いものがある。また、ボール盤用として、チャックを取り付けるための短いアーバーもある。
(4)クランク軸 クランクに接続している軸。蒸気機関、内燃機関のピストンのように往復運動を回転運動に変えるときクランクが使用されるが、このクランクにより回される軸をクランク軸という。
(5)たわみ軸 回転運動を伝えるのに、直線方向ではなく任意の方向に自由に変えられる軸。細い針金をコイル状に密に巻いたものが用いられる。伝達力が小さい場合には1層のものが使用されるが、大きな力を伝えるものには何層にも巻いたものが使用される。
(6)ジャーナルjournal 軸は軸受で支えられるが、支えられる軸部をジャーナルという。たとえば,クランク軸では、エンジンの本体に支持される軸受部をクランクジャーナルとよび、ピストンのコネクチングロッドとの回転結合部はクランクピンとよんでいる。
[中山秀太郎・清水伸二]
普及版 字通 「軸」の読み・字形・画数・意味
軸
常用漢字 12画
[字訓] まきもの・かけもの
[説文解字]
[字形] 形声
声符は由(ゆう)。由に舳(じく)の声がある。〔説文〕十四上に「輪を持するものなり」とあり、車軸をいう。由は(ゆう)の転化した字形と考えられ、果実の油化して外殻を存するもの。中空のところが、軸として回転するものと同形であるので、軸は由に従う。音は由の転音であろう。
[訓義]
1. じく、よこがみ、車の轂(こしき)を貫く軸、経糸(たていと)をまく織具。柩をはこぶ台下のころがしなどをもいう。みな回転軸の作用をするもの。
2. まきもの、かけ軸の軸、かけもの、しんぎ。
3. 回転するものの中心にあるもの、かなめ。
[古辞書の訓]
〔新字鏡〕軸 与己加弥(よこがみ)〔和名抄〕軸 與古賀美(よこがみ)〔名義抄〕軸 ヨコガミ・メグラス 〔字鏡集〕軸 コシキ・ヨコガミ・メグラス
[熟語]
軸子▶・軸車▶・軸頭▶・軸▶・軸轤▶
[下接語]
運軸・盈軸・轅軸・花軸・軸・機軸・棘軸・玉軸・鈞軸・経軸・巻軸・権軸・衡軸・轂軸・坤軸・紙軸・車軸・主軸・抒軸・枢軸・成軸・折軸・装軸・脱軸・地軸・中軸・転軸・鈿軸・方軸・瑶軸・連軸
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
改訂新版 世界大百科事典 「軸」の意味・わかりやすい解説
軸 (じく)
shaft
シャフトともいう。機械などにおいて,回転運動を行う回転体の中心軸を形成する機械要素。軸受に支えられて回転する。歯車,タービン,羽根車などの回転体と一体構造の形に製作される場合と,回転体とは別個に独立して製作され,あとで回転体と組み合わせられる場合とがある。断面形状からは,円形断面の中実丸軸,円形であるが内部が中空になっている中空丸軸に分類されるが,前者が広く用いられる。また中心軸線の形状から,中心軸が直線となる真直軸,中心軸がコの字形に曲がっているクランク軸などに分類される。真直軸がもっとも多く使用されるが,自動車のエンジンのようにピストンの往復運動を回転運動に変える場合,および往復動ポンプのように電動機の回転運動をピストンの往復運動に変える場合にはクランク軸が多用される。機能から分類すると,電動機の回転子と扇風機の回転羽根を連結する軸のように,ねじり作用を受けながら回転することにより動力を伝達する伝動軸,貨車の車輪の軸のようにねじり作用を受けず,単に軸直角方向の荷重を支えて曲げ作用を受ける車軸,紡織機などに使用されている軸のうち直径が太くて軸のたわみ量が小さく,軸の回転中心を精度よく保持するスピンドル,コイルを巻いて作ったり,あるいは短い軸を自在継手などで多数連結し,曲がった経路に沿って回転運動を伝達できるように,中心軸がある程度自由に曲げられるたわみ軸などになる。
高速回転に用いられる軸の場合,回転速度が軸の横振動の固有振動数と一致する速度に達すると,一種の共振現象が生じて,軸の激しい振れ回りが起こる。このときの回転速度を軸の危険速度と呼んでいる。このような共振現象は,軸に伝えられるトルクが不同で,その振動数が軸のねじり振動の固有振動数と一致する場合にも生ずる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軸」の意味・わかりやすい解説
軸
じく
shaft
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百科事典マイペディア 「軸」の意味・わかりやすい解説
軸【じく】
→関連項目機械要素|ジャーナル
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世界大百科事典(旧版)内の軸の言及
【坑道】より
…トンネルについてはその項目を参照されたい。
[立坑shaft]
地下深部へほぼ鉛直に入って行く道を立坑というが,地下深部で採掘作業を行うことの多い鉱山にとっては,鉱石を巻き上げる巻上機のローププーリー(滑車)のついた立坑のやぐらは象徴的な存在である。南アフリカのウィットウォーターズランド地方やインドのコラール地方には,3000mから4000mもの深部で金を採掘している鉱山があるが,これらの地域では,1本で2500mもある深い立坑が掘削されている。…
【柱】より
…また,柱の形を壁に浮き出したものはピラスター(付柱)とよぶ。柱は歴史的に柱基base,柱身shaft,柱頭capitalの三つの要素で構成されてきた。 すでにエジプト建築において,角柱や多角形の柱以外に,アシやハスなどの細い植物を束ねた形式の柱,彫像を組み合わせた柱(オシリス柱,ハトホル柱)など,彫刻的な変化をもつ柱が現れ,以後,柱は建築表現の主要な部分となる。…
※「軸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」