鳥類(チョウルイ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
- ️デジタル大辞泉,精選版 日本国語大辞典,日本大百科全書(ニッポニカ),改訂新版 世界大百科事典,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,世界大百科事典内言及
鳥類 (ちょうるい)
bird
Vogel[ドイツ]
oiseau[フランス]
総論
脊椎動物門鳥綱Avesに属する動物の総称。飛翔(ひしよう)生活にもっとも適応した脊椎動物で,基本的な体制は爬虫類と共通な点が多いが,両者は一見して区別することができる。鳥類のおもな特徴をあげると,(1)体は羽毛で覆われている,(2)前肢は変形して翼となり,後肢のみで体を支える,(3)体温は定温性,(4)卵生であるが,雛は両親の保育を受けるなどである。このほかにも,骨は含気性で軽いとか,気囊をもっているとか,現生の鳥には歯がないとか,いろいろの特徴がある。
羽毛は表皮の変形物で,発生学的には哺乳類の毛や爬虫類のうろこと同じものであるが,鳥以外に羽毛をもつ動物はいない。このため,羽毛が鳥類のいちばんの特徴といってよい。また鳥類の翼は鳥特有の構造を有し,コウモリや飛翔性の爬虫類の翼とは異なる。体温の調節機能は高度に発達しており,冬眠中の場合(ハチドリやヨタカの例がある)を除けば,外界の温度と関係なく,体温はほぼ一定に,しかも気温よりかなり高く保たれている(通常40~42℃)。このため,鳥類は寒冷の地でも生息でき,また代謝速度が大きく,飛翔に必要な大量のエネルギーを得ることができる。多くの爬虫類と同様に,鳥類は卵生で,胎生のものはいない。しかし,保育行動がよく発達していて,産んだ卵をそのまま放置するものはなく,程度の違いはあっても,親鳥は抱卵し(孵化(ふか)に発酵熱を利用するツカツクリ類も卵の温度調節をする),孵化した雛の世話をし,卵や雛を外敵から守る。したがって,卵生である点では爬虫類に近いが,少数の子どもを確実に成育させる方向に進化している点では,むしろ哺乳類に近いといえる。
鳥類の形態的・生態的特徴の多くは飛翔と関連しているが,一方,高度の飛翔生活は,鳥類のそなえている特性によって可能となっている。生物学的に見て,鳥類は哺乳類とともにもっとも進化した動物といいうる。
執筆者:
系統と分類
鳥類に比較的近い特徴をそなえた動物は,中生代に繁栄した爬虫類の槽歯(そうし)類,その中でも偽鰐(ぎがく)類である。偽鰐類は小型の食肉性爬虫類で,あごに鋭い歯をそなえ,前肢は比較的小さく,鳥のように2本の脚で体を支えていた。この仲間から恐竜,翼竜,ワニの祖先および鳥類の祖先が派出したことは多くの学者によって認められている。
始祖鳥
化石として現れた最古の鳥は,ジュラ紀後期に生息していた始祖鳥である。始祖鳥はカラスくらいの大きさで,その形態的特徴から推定すると,木に止まることができ,また翼の3本のつめとあしゆびを使って木の枝の上によじ登ることができた。しかし,現生の鳥のように自由に空を飛び回る能力がなかったことは明らかで,その飛行は木の上から下に滑空したり,羽ばたいて高いところに飛び上がることができた程度と考えられる。おそらくふだんは地上を歩いたり,枝から枝にとび移りながら生活し,主として昆虫類を捕食していたのであろう。始祖鳥は羽毛をもち,外観は明らかに鳥だが,鳥類と爬虫類の両方の特徴をもっている。爬虫類の特徴の一部をあげると,20~21個の尾椎(びつい)よりなる長い尾をもち,あごに歯が生えている。翼はまだ完全な鳥の翼ではなく,つめのついた3本の指を有する。一方,鳥類の特徴としては,現生の鳥の羽毛とほとんど区別しがたい羽毛をもち,初列・次列風切羽の翼へのつき方も現生の鳥によく似ている。またあしゆびの3本が前方を向き,1本が後ろを向いている。したがって,始祖鳥が中生代爬虫類と現生鳥類の中間の進化段階に位置することは明らかであるが,しかしこのことは,始祖鳥が現生の鳥類の直接の祖先であることをかならずしも意味しない。つまり始祖鳥とは別に,真の鳥の祖先がいたかもしれない。しかし,現生の鳥類が始祖鳥のような段階を経て,爬虫類から進化してきたという意味で,始祖鳥は鳥類の祖先ということができる。
→始祖鳥
真鳥類の出現
ジュラ紀からは始祖鳥以外に鳥の化石は見つかっていないが,次の白亜紀からは,少なくとも7目12科37種の鳥が知られている。そのうち,ヘスペルオルニスHesperornisというアビに似た潜水鳥とイクチオルニスIchthyornisというアジサシに似た海鳥は,始祖鳥と同様に歯をそなえていたが,その他のものはあらゆる点で完全に鳥であったようである。アメリカのカンザス州の白亜紀後期の地層から産出したヘスペルオルニスは,とくに上顎(じようがく)骨と下顎骨に歯が発達するが前顎骨には歯がない。下顎骨は海生爬虫類のモササウルスに似ている。前肢は退化し,胸骨は平板状で肩甲骨などは小さい。骨盤は大きく後肢が発達し遊泳に適していた。体長はくちばしの先から尾端まで180cmの大型の鳥。また同じくカンザス州の白亜紀後期層から産出したイクチオルニスは20cm大で,現生の鳥類にほぼ等しい飛翔力があり,かなり自由に空を飛び回ることができたと考えられている。北海道の白亜紀層からもこの種の鳥が産出している。
しかし,ヘスペルオルニス目とイクチオルニス目以外の白亜紀の鳥は,完全な1個体分の化石がまだ発見されておらず,歯の有無や飛翔力については明らかでない点が多い。とはいえ,白亜紀に真の鳥類が出現したことは疑いの余地がない。
いままでに知られている白亜紀の鳥は,ほとんどが海鳥か水鳥である。それは水鳥類のほうが化石として残りやすいためであって,陸鳥類も白亜紀の終りには出現していたに違いない。白亜紀の次の第三紀に入ると,たくさんの,しかも現生の科に属する鳥類の化石が知られ,それには水鳥も陸鳥も含まれている。したがって,白亜紀の末ころに鳥類は急速に進化したのであろう。そのような急速の進化は,鳥が飛翔能力を身につけ,他の動物の手のとどかないところにまで生活圏を広げることができたことに起因すると考えられる。
分類
現生の鳥類(有史以後の絶滅種を含む)は8600種以上あり,化石種を含めると少なくとも1万種以上が知られている。鳥類の分類は学者によって異なるが,現在一般に使われている分類法は表のとおりである。このうち,始祖鳥(アルカエオプテリクス)だけが古鳥亜綱に属し,他はすべて新鳥亜綱に入る。
執筆者:長谷川 善和+森岡 弘之
形態と生理
鳥類は地球上のほとんどあらゆる環境に適応して生活しているが,体制や形態の著しく異なったものはいない。これは,空を飛ぶためには種々の空気力学的諸条件を満たさねばならず,したがって,ある限られた範囲内でしか多様化できなかったせいである。ダチョウやペンギンのように飛翔力のない鳥でも,骨格や四肢が他の鳥と大きく違っていないのは,彼らが比較的近い過去に飛ぶことのできた祖先から進化してきたことを示唆している。もちろん,飛べない鳥では翼が多少とも退化しており,陸鳥には陸鳥としての,また水鳥には水鳥としての適応がある。しかし,鳥類ほど形態変化の乏しい動物は少ない。一方,ほとんどの鳥は昼間活動し,視力がすぐれているので,さまざまの羽色や飾羽が発達している。事実,鳥には美しいものが多く,種々のにおいをもつようになった哺乳類が嗅覚(きゆうかく)の動物であるのに対し,鳥類は視覚の動物といわれる。
羽毛
羽毛には,大別すると正羽(せいう)と綿羽(めんう)の2種がある。正羽は中心の羽軸(うじく)とその両側の羽弁(うべん)からなり,羽弁は無数の羽枝(うし)および羽小枝(うしようし)で構成されて,各羽小枝は互いにかぎによって組み合わされている。風切羽と尾羽(びう)および体表を覆う体羽(たいう)の大部分は正羽である。綿羽は形状は正羽に似ているが,羽小枝がかぎで結び合っていない。また,羽軸はない(真の綿羽)か,あっても正羽のようにしっかりしていない(半綿羽)。綿羽は一般に短いふわふわした羽毛で,正羽の下にあって,おもに保温と防水の役目を果たす。このほか,特殊な羽毛として,糸状羽(しじようう)(糸状の羽毛),口ひげや剛毛(毛状の羽毛),粉綿羽(ふんめんう)(羽粉を出す羽毛)などがある。
羽毛は柔らかく,軽く,しかも非常にじょうぶなので,飛翔には理想的であり,また断熱性にすぐれ,体温の保持と皮膚の保護にも重要な役割を果たしている。羽毛はもともと体の保護と体温の保持のためにうろこ状のものが変化してできたもので,飛行器官としての機能は比較的新しいと考えられている。
成長した羽毛はケラチン(角質)の生成物で,生きた細胞ではない。したがって,鳥は絶えずくちばしで羽づくろいを行い,脂肪を塗って防水を施し,水浴びや砂浴びによって汚れや寄生虫を取り除く必要がある(蟻浴(ありよく)と呼ばれる行動も同じような機能をもつと考えられる)。さらに,少なくとも年1回,繁殖のあとで完全な換羽(かんう)を行い,すり切れた羽毛を新しいものに取りかえる。多くの鳥は,繁殖の前にも体羽の一部または全部を取りかえる(このときの換羽では風切羽および尾羽は通常換羽しない)。換羽の方法や順序は種によってかなりの相違がある。
1羽の鳥の羽毛の数は一定ではなく,個体によって違いがあり,また同じ個体でも夏より冬のほうが多い。大型の鳥は小鳥よりも多いが,体重または面積当りの羽毛の数は小鳥のほうが多く,陸鳥と水鳥では水鳥のほうが多い。1例をあげると,正羽だけの数だが,コハクチョウ(11月)2万5216枚,ウタスズメ(3月)2093~2208枚,コガラ1140(6月)~1704(2月)枚などである。
飛翔法と翼型
鳥類の飛翔法は,滑空glidingと羽ばたき飛翔に大別できる。滑空はグライダーの滑空と同じ原理で,位置エネルギーを利用する。したがって,無風状態で滑空を続けると高度は低下するが,上昇気流をつかまえることによって,高度を失わずに長時間飛び続けられる。こうした風を利用する滑空はとくに滑翔soaring(帆翔と呼ばれることも多い)と呼ばれる。滑翔をする鳥はワシ・タカ類,アホウドリやミズナギドリなどの海鳥類,ペリカン類,ツル類,コウノトリ類など大型(少なくとも中型以上)の鳥である。
滑翔には,地上の上昇気流を利用する通常の滑翔のほかに,海面上を吹いている風は海面からの高さによって速度が異なることを利用する動的滑翔がある。前者は,沈下率は翼面荷重の平方根に比例するので,翼面積の大きいほうが有利で,翼と尾は一般に幅広く大きい。また,滑翔中は失速を防ぐために初列風切の先端が指を広げたように開く。後者は主としてアホウドリ,ミズナギドリ,グンカンドリなどが行うが,下降時の速度が必要なので,その翼型は細長い高速型である。
羽ばたき飛翔は筋力を用いて翼を羽ばたき,揚力と推力を得る。羽ばたき飛翔における翼の使い方は,離陸のときと飛翔中で異なる。離陸のときの場合は,体を空中に浮かべるのに十分な揚力と推力をつくり出す必要があるので,打ちおろしでは翼は上から下へ水平になるまでおろし,さらに水平方向に前へと動く。一方,打ちあげは,翼を後方に振り払うように動かす。これは,離陸時には羽ばたきによって翼に受ける風をつくり出すためで,揚力は主として打ちおろしの際生じ,推力はおもに打ちあげのとき得られる。しかし飛翔に移ると,飛行速度に等しい風が前方から加わるので,翼の動きはほぼ上下方向の羽ばたきで十分となり,主として初列風切が推力を,次列風切が揚力をつくり出す。水平飛行における翼の打ちあげは,だいたいに受動的な動きと考えられている。
羽ばたきの回数は,一般に鳥の大きさに反比例する。例えば,ハゲワシは毎秒約1回だが,カモや中型のタカ類は2~3回,コガラは約30回,小型のハチドリは約80回の記録がある。
翼型は多くの空気力学的特性と関係するが,とくに翼面積,翼面荷重,縦横比,羽ばたき回数などが重要である。一般に,揚力は翼面積と速度の2乗とに比例する。したがって,早く飛ぶ鳥は翼面積が小さくてよく,また縦横比は大きい。一方ゆっくりと,木などをさけて飛ぶ必要のある場合は翼面積が大きく,翼幅は小さいほうが有利である。非常に特殊な飛翔法は飛びながら空中の1点でとどまるホバリングhoveringで,ハチドリ類でとくによく発達している。
鳥の飛ぶ速度はもちろん飛翔条件によって異なり,また正確に測定することは困難である。しかし,大ざっぱな値として,多くの小鳥類は時速80km以下,ハヤブサは最高時速290km,カモ類約90km以下,中型のタカ類の普通速度42~67km,渡り中のシギ類175km前後などの記録がある。なお鳥の渡りについては,〈渡り〉および〈渡り鳥〉の項目を参照されたい。
くちばし
くちばしは爬虫類(カメ)や哺乳類(カモノハシ)にも見られるが,鳥類はすべてくちばしをもち,鳥類の特徴的な形態と称してもよいだろう。くちばしはケラチンのさやに覆われたあごで,上くちばしと下くちばしからなる。現生の鳥のくちばしには歯がなく,餌は両くちばしの間にはさみ,舌を使って飲み込む。くちばしの形態は食性や採食法によって種々の適応を示す。たとえば,肉食のワシ・タカ類やフクロウ類のは鋭くかぎ状,種子食のは円錐状であり,海岸の泥中の餌をあさるシギ類のは細長い。鳥の前肢は翼となっているため,くちばしは採食器官としてだけでなく,羽づくろい,巣づくり,闘争などにも用いられ,また求愛やディスプレーでも使われる。
→嘴(くちばし)
脚
脚はもも,すね,跗蹠(ふしよ),あしゆびとつめからなる。ただし,ももは脇腹の皮膚の下にあって外部からは見えず,もものように見える部分はすねである。脚は体を支え,遊泳や獲物をとるときにも使われるので,脚の各部の長さとあしゆびやつめの形状は種によって異なる。たとえば,水中に立って餌をあさる渉禽(しようきん)類はすねと跗蹠が長く,地上に降りることの少ないツバメやヒタキ類の脚は弱くて短い。典型的な鳥のあしゆびは4本で,2~3本が前を向き,あとの1~2本が後ろを向いていて,枝や物をつかむのに適している。しかし,地上生の鳥ではあしゆびが3本しかないものも多く,ダチョウだけは2本である。水鳥では,あしゆびの間に種々の程度の水かきがついている。
尾
鳥類の尾は大部分羽毛(尾羽)からなり,筋肉によって上げたり,下げたり,広げたり,左右に振ったりすることができる。尾はさまざまな機能を果たしているが,飛翔においては翼面の補助となり,また舵(かじ)やブレーキとしてなくてはならないものである。一般に,尾は滑空する鳥では幅広く,速く飛ぶ鳥では短い。飛翔中や走行中の体のバランスを保つためにも尾は重要で,さらにディスプレーにも利用される。尾の形状は主として飛翔の仕方によって異なるが,フキナガシヨタカやラケットカワセミのように,ディスプレーのために変形している例も少なくない。
骨格と筋肉
鳥類の骨格系と筋肉系は,翼による飛翔と2足による歩行のために,他の脊椎動物に見られない種々の特徴をもっている。骨格系についてみると,それらの特徴のほとんどが癒合による骨の数の減少と軽量化を伴っており,その結果,鳥の骨は非常に軽く,しかも種々の外力に耐えうる。軽量化の点では,骨自体が含気(がんき)性で,長骨ではしばしば骨髄がなくて中空で,気囊が入り込んでいる場合もある。ただし,含気骨が発達しているのは陸生の大型の飛翔鳥で,地上生と潜水する鳥や小鳥類では含気骨は少ない。
骨格系のなかで大きな骨は,胸骨と骨盤である。胸骨は肋骨によって胸椎と関節結合している。多くの鳥では,胸骨の下面中央に大きな垂直の突起(竜骨突起)をもち,胸骨の構造を強くするとともに,胸筋の付着面を大きくしている。骨盤は,腰椎,仙椎および尾椎の一部が互いに癒合して,一体となった腰仙椎に腰帯も癒合して形成された平らな骨で,大腿骨が関節結合する。鳥の筋肉系でもっとも大きいのは,上腕骨(じようわんこつ)を動かす大・小胸筋と大腿骨および脛骨(けいこつ)を動かす大腿部の筋肉である。前者は胸骨の下面に,後者は腰仙骨に付着する。
鳥の翼および脚と他の脊椎動物の前肢,後肢との相違は,主として癒合による手,足の部分の骨の単純化による。翼では,腕骨は2個のみを残して掌骨(しようこつ)と癒合し,1個の腕掌骨を形成する。指骨は3本しか存在しない。つめは発生の途中では多くの鳥に見られるが,成鳥ではダチョウ,ツメバケイ,その他若干の鳥に残るだけである。脚の場合も,跗骨(ふこつ)の一部は脛骨に癒合し,残りは蹠骨(しよこつ)に癒合して跗蹠骨となる。趾骨(しこつ)とつめは第5趾を欠き,4本が存在するが,第1趾が退化して3本だけのものも多い。
頭骨でも癒合によって縫合線が消失し,頭蓋は1個の骨からなる(雛の間は縫合線があり,ダチョウとペンギンでは成鳥にも縫合線が残る)。眼はよく発達しているために眼窩(がんか)は大きい。頸椎(けいつい)は鞍状関節でつながり,くびの動きは非常に自由である。頸筋もよく発達している。
消化器系
ふつう食道,嗉囊(そのう),前胃,砂囊,小腸および大腸よりなり,総排出口に開口する。嗉囊は食道の一部分が肥大したもので,摂取した食物を一時貯蔵しておく場所である。嗉囊が発達しているのは穀物食や種子食の鳥で,昆虫食や肉食の鳥では食道と嗉囊がはっきり区別できないことも少なくない。
胃は食道につづく前胃とその次に位置する砂囊からなる。前胃は一名を腺胃(せんい)といい,胃壁には消化腺が多く,種々の消化酵素が分泌される。その胃液は強い酸性(pH3.0~4.5)で,ここでは化学的消化が行われる。砂囊は真胃とも呼ばれ,壁面が厚く,強力な筋肉をもち,その収縮によって食物を細片化する。砂囊の中には食物とともに飲み込んだ小石や砂がたまっていて,食物の破砕を助ける。砂囊はキジやニワトリのような穀物食の鳥でよく発達しており,壁面は非常に厚く,硬いしわをなしているが,昆虫食や肉食の鳥の砂囊は比較的弱少である。肉食の鳥の場合,骨,甲殻,羽毛,毛などの不消化物は腸に送られずに,胃中でまるめて口から排出される(この排出物をペリットという)。
腸は爬虫類のものよりはずっと長いが,小腸と大腸の分化は哺乳類ほど明りょうでない。腸の長さは食性と体の大きさによって左右される。肉食および果実食の鳥では腸が太くて短く,また腸壁が薄く,穀物食の鳥では長くて腸壁が厚く,魚食の鳥では比較的長くて細く,腸壁が薄い。また,大型の鳥は小鳥より腸が比較的長い。盲腸は小腸と大腸の接続部に通常1対存在するが,盲腸のない鳥も多い。盲腸の役割は,水分および消化物の吸収ならびにバクテリアによる繊維質の分解であろうと考えられている。肝臓や膵臓は哺乳類のものより大きい。
循環系,呼吸系
心臓は2心房2心室で,肺循環と体循環が完全に分かれ,動脈血と静脈血は混合しない。動脈血と静脈血が完全に分離しているのは鳥類と哺乳類だけで,これによって高率の代謝を維持でき,体温を一定に保ちうる。鳥類は哺乳類と比べても代謝速度が速いので,心臓は同じ大きさの哺乳類や爬虫類のものよりずっと大きく強力である。鳥類の中でも代謝速度の速い小鳥類は,一般に大型の鳥よりも心臓の体重に対する比率が大きい。拍動も哺乳類より鳥類のほうが速く,小鳥類は大型の鳥よりも速い。たとえば休息時でシチメンチョウ毎分93回,ハト192回,ツグミ570回,ハチドリでは1000回にも達する。血圧は哺乳類より若干高い程度であるが,爬虫類,両生類,魚類などと比べると少なくとも数倍高い。
鳥の肺は哺乳類の肺に比べると著しく小さい。このことは,鳥類の呼吸系が貧弱なためでも,呼吸量が少ないためでもなく,呼吸がきわめて効率よく行われているためである。哺乳類では,気管支が細かく枝分れして盲管となって肺の中に入り込んでいるので,呼吸のたびに出入りする呼気と吸気は混合し,また肺の中を完全に空にすることができない。鳥の場合は,細管に分岐した気管支は肺を貫通し,気囊の一つに開口する。気囊は鳥類に特有のうきぶくろのようなサックで,通常9個あり,それぞれ気管か気管支と連結している。気囊には血管が分布していないので,ガス交換を行うことはできず,単に空気袋として働くだけであるが,肺の容量を補うとともに,空気を肺に吸い込むのではなく通過させることになり,肺におけるガス交換の能率が高められる。気囊は,空気袋としての役割のほかに,体温の冷却器,潜水中や遊泳中の体重調節,長いさえずりに必要な肺活量の維持などにも重要な働きをしている。横隔膜は発達していない。肺への空気の出入りは,主として胸骨を上下させることによって行われる。
呼吸系でもう一つ鳥特有のものは発声器である。哺乳類や爬虫類では発声は喉頭(こうとう)で行われるが,鳥類では気管が2本の気管支に分岐するところに鳴管(めいかん)と呼ばれる共鳴器があり,発声をつかさどる。
排出系
鳥の腎臓は,同じ大きさの哺乳類のものと比べると約2倍の大きさがある。腎臓の機能単位である腎小体は哺乳類よりも小さいが,数が非常に多い(1mm当り哺乳類4~15,鳥類90~500)。膀胱はダチョウにだけ存在する。
哺乳類は窒素代謝によって生ずるアンモニアを尿素の形で排出するが,鳥類では尿酸である。尿酸は水に溶けにくいので,尿細管や輸尿管における水分の吸収が容易で,水分が尿となって失われるのを最小限にとどめられる利点がある。鳥類と爬虫類だけが尿酸を排出するが,これはどちらも陸生の卵生動物で,発生が卵殻の中で行われるので,水溶性の尿素ではつごうが悪いためである。
海岸や海洋にすむ鳥類と爬虫類(カメなど)は塩腺(塩類腺ともいう)と呼ばれる特殊な排出器官をもっている。塩腺は塩分を排出するだけの器官だが,海水の約2倍(尿の塩分濃度の15~20倍)の濃い塩水を排出する。
生殖腺
精巣は1対あるが,卵巣と輸卵管はふつう発生の途中で右側のものが退化し,成鳥では左側のものだけが残る。陰茎は通常ないが,ごく一部の鳥(カモ,ホウカンチョウ,ダチョウなど)には存在する。輸卵管にはアルブミン,卵殻,色素などの分泌腺が開口している。排卵から産卵までの時間は,ニワトリ約24時間,ハト約41時間である。鳥類の生殖腺は季節的変化が非常に顕著で,精巣と卵巣は繁殖期には大きく肥大し,他の時期には小さい。この季節的変化は,主として脳下垂体前葉から分泌される生殖腺刺激ホルモンによって支配されている。
脳
脳は脊椎動物の中で哺乳類に次いで(あるいは同等に)発達しており,体重のほぼ等しい爬虫類と比べると,鳥の脳は10倍以上大きい(脳の体重に対する比率はトカゲ0.55%,ネズミ2.8%,イエスズメ4.3%)。小脳と視葉はとくによく発達している。小脳は主として動作,平衡,姿勢などの制御をつかさどり,視葉は視覚の中枢で,いずれも空を飛ぶ鳥にとって重要な部分である。大脳半球もよく発達しているが,哺乳類では大脳皮質が厚く,線状体の部分が比較的小さいのに対し,鳥類では線状体の部分が大きく,皮質は薄くて表面のしわもない。この違いは,哺乳類が高度の学習能力を有するのに対し,鳥類は学習によらない本能行動にすぐれていることと対応している。鳥類の行動は非常に複雑で,もちろん学習能力もそなえてはいるが,比較的型にはまっていて,個体差が少なく,また環境条件の違いに対応して行動を変えることは限られた範囲の中でしかできないことは,大脳皮質が哺乳類ほど発達していないことに一因がある。その反面,遺伝的に決まっている生得の行動は哺乳類よりもむしろ発達している。なお,実験的に大脳皮質の一部を除去しても行動に及ぼす影響は少ないが,線状体のごく一部を除去すると大きな異常が見られることも,鳥の生活では線状体がいかに重要であるかを示している。
感覚
感覚では,飛翔と関連して視覚が著しく発達し,また聴覚もよく発達している。一方,嗅覚,味覚,触覚はあまり発達していない。眼は非常に大きい。眼が大きいと網膜にうつる映像が大きく,視力(分解能)が増大する。鳥の眼がすぐれている点の一つは調節能力(焦点合せの能力)である。とくに空中で昆虫を捕食する鳥や潜水して餌をとらえる鳥では,調節能力が高度に発達している。鳥の眼のレンズ(水晶体)は通常無限遠に焦点が合っており,調節は調節筋でレンズの形を凸形に変えることで行われる。したがって,レンズがヒトのものより柔らかく,調節筋はよく発達している。そのうえ,多くの鳥では調節力をいっそう大きくするために角膜の凸度も調節でき,アビや海ガモ類では瞬膜(まぶたの下にあって角膜を覆うことのできる透明な膜)が一種の補助レンズの働きをしている。
鳥の視力がすぐれているのは,主として視細胞の数が非常に多いことによる。たとえば,イエスズメは視覚面の中心部(網膜中とくに視細胞の密な場所で,鳥には通常2ヵ所ある)で1mm当り40万個,ノスリでは100万個もある。ヒトは約20万個で,ノスリの視力はヒトの8倍以上と推定される。
色覚は,昼行性の鳥では,ヒトの色覚とほとんど同じであるが,赤色に対する感覚が多少高く,青色に対する感覚はややにぶいといわれている(夜行性の鳥は色覚がほとんどない)。これは,鳥の視細胞(錐状体)が無色または有色(赤色,黄色,橙色,まれに緑色)の油滴を含み,青色の光が吸収されるためである。この油滴は主としてフィルターの働きをし,像のコントラストを強めたり,有害な散乱光を除去する。
哺乳類と同様に,耳は外耳,中耳,内耳の3部よりなる。可聴範囲は種によって異なるが,通常40~2万9000Hzである。これはヒトの可聴範囲(16~2万Hz)に近いが,高周波・低周波領域の感度はふつうヒトより劣るらしい。しかし,ピッチの変動をとらえる能力と,速い連続音を聴き分ける能力は,鳥のほうが高いようである。なお,鳥では超音波に対する感覚はまだ発見されていない。鳥の中で聴覚がいちばんよく発達しているのはフクロウ類である。フクロウ類の外耳は入口が大きく,あるものでは左右の外耳孔の位置や大きさが違い,両耳に達する音の強さの違いと時間的ずれによって音源までの距離や方向を感知する。そのためメンフクロウなどは暗黒の中でも獲物をとらえることができる。
執筆者:森岡 弘之
生態と行動
鳥類は,羽毛をもち空を飛ぶ内温性endothermy(体温が体内で生ずる代謝熱によって維持される性質。定温動物以外にも,大型の爬虫類,回遊魚,昆虫の一部は内温性である)の陸上脊椎動物である。その形態だけでなく,基本的には,生態もこの特徴によって決定されていると見てよい。そのことは,空を飛べない内温性の陸上脊椎動物や外温性ectothermy(体温が環境の温度によって左右される性質)のそれの生態と比較するとよくわかる。
食性
内温性動物は同一体重の外温性動物よりも物質交代の速度(酸素消費速度)が約20倍速い。したがって同一時間では約20倍多くの栄養を必要とする。このような動物は,大量に存在してとりやすい食物をとるか,とりにくくて散在しているが栄養価の高い食物をとるか,どちらかの方法を採用しなければならない。陸上で大量に存在する食物といえば植物体であるが,これは概して栄養価が低く消化が悪いし,一般に固い。だが,鳥類は空を飛ぶので,植物体をとるのに適した形態をしていない。一つには,身体が軽くなければならないから,大量の食物を長時間腸内に置いてゆっくり消化するわけにはいかず,草食動物のような長い腸はもてない。また一つには,頭部を軽くするために,あごは軽いくちばしとなり歯をもたないから,固いものをかじったりすりつぶしたりすることはできない。
そこで鳥類の食物は,どうしても栄養価が高く消化のよい,しかも丸のみにできる小さいものか,くちばしでも食いちぎれる柔らかいものかに限られてしまう。環境の中でそのような食物といえば,植物の実,種子,つぼみ,芽,花みつなどと小型の動物ということになる。くちばしで食いちぎれるのは鳥獣と魚の身体くらいのものであろう。このような食物は,草木の先端に点々とあったり,あちこちに隠れていたり,動きが速かったりするので,それを捜し回ったりとらえたりするのはやっかいであるが,幸いなことに,空を飛ぶという鳥類の運動方式はこのような食物を手に入れるのにまことにぐあいがよい。だから鳥類はこのような食物を主食としており,植物体を食べる鳥はほとんどないのである。
ところで,このような食物をすべて同一の採食法でとることはむずかしい。とくに,さまざまな動物をとるにはそれぞれに応じた方法が必要である。鳥類の中にはいくつかの方法を併用する雑食性のものもいるが,多くの鳥類はそれぞれに一定の採食習性をもち,限られた食物を主食としている。その例を少しあげてみると,草木の種子を主食とするアトリ科やホオジロ科,果実を主食とするオオハシ科,サイチョウ科,オウム科,ハト科,花みつと花にくる小昆虫を主食とするハチドリ科,タイヨウチョウ科,メジロ科,昆虫を木の幹で捜すキツツキ科やゴジュウカラ科,昆虫を植物の茂みで捜すウグイス科,昆虫を地表で捜すツグミ科,枝から飛び立って空中で昆虫をとるヒタキ科,枝から飛び下りて地表の昆虫などをとるモズ科やカワセミ科,空中を飛びながら空中で昆虫をとるツバメ科やハチクイ科,歩きながら昆虫や草の実をとるキジ科やツル科,水辺で小動物をとるシギ科やクイナ科,水辺で魚をとるサギ科,枝から水中に飛び込んで魚をとるカワセミ科の一部,空中から水中に飛び込んで魚をとるカモメ科のアジサシ類やカツオドリ科,水中に潜って魚をとるウ科,ウミスズメ科,ペンギン科,鳥獣を主食とするタカ科やフクロウ科といったぐあいである。
繁殖
食生活と並んで重要なものは繁殖生活である。この点で,同じく内温性である哺乳類と鳥類の間での基本的な違いは,一方が胎生であり一方が卵生であることにある。なぜ鳥類は胎生にならなかったのか。それは鳥が空を飛ぶ動物だからである。空を飛ぶためには身体が軽くなければならないし,翼を中心にして前後のバランスがとれていなければならない。したがって鳥類は腹部内で重い子を育てるわけにはいかず,祖先の爬虫類と同じく卵生のままでいなければならなかったのである。
しかし,鳥類と爬虫類の繁殖生活が同じなのはこの点だけであるといってよい。まず,鳥類の中には爬虫類のように一度に全部(または多数)の卵を産むものは1種もない(1卵しか産まない鳥では話が別である)。というのは,一度に全部の卵を産むのであれば,産卵日近くになると,胎生になったのと同じく,腹に重い荷物を抱えることになってしまうからである。だから鳥類は産卵方式を爬虫類とは違えねばならなかった。そしていくつもの卵を次々に産む方式をとらざるを得なかった。実際,鳥類の中には1日に1卵以上産むものは1種もなく,なかには2日とか3日に1卵ずつ産んでいくものさえいる。
もっと小さく軽い卵を一度にいくつも産めばいいと考えるかもしれないが,そうはいかないのである。鳥類は空を飛ぶことによって生活しているのだから,その子どもは1日も早く空を飛べるようにならねばならない(食物をとるためのみならず捕食者から逃げるためにも)。できることなら卵から孵化したときにすぐ飛ぶことができるようになっていればもっともよい。だが,そのためには卵内に多くの養分がなければならず,卵は大きく重いものにならざるを得ない。おそらくそれでは卵が大きくなりすぎてしまうのであろう。実際,鳥類の中には孵化してすぐに飛べるものは原則としていない(唯一の例外として,ツカツクリ類の雛は正羽が生えた状態で孵化し,その日のうちに飛ぶことができるといわれる。したがってまた,親鳥が抱卵,雛の世話をしないという点でもツカツクリ類は例外である)。そうであれば,できる範囲で大きな卵を産むことでがまんするしかないだろう。
捕食者から逃げるという問題は卵についてもいえる。動くことのできない卵の期間も短いほうがよいのである。だが,大きな卵はそれだけ長く卵でいなければならない。卵の期間を短くすれば,孵化した雛が飛べるまでの期間はそれだけ長くなってしまう。鳥はこの矛盾に二つの方向で対処した。一つは,卵の期間は長くても仕方がないが,孵化した雛は自分で走ったり泳いだりできるようにするという方向であり,もう一つは孵化した雛は無力でも仕方がないが,卵の期間を短くするという方向である。後の場合には卵が小さくなるから母鳥の飛翔はそのぶんだけ楽になる。前者はニワトリやカモに見られるもので,その雛を早成性precocial,または離巣性nidifugousであるという。後者はスズメやツバメに見られるもので,その雛を晩成性altricial,または留巣性nidicolousであるという。極端な早成性の雛は孵化後すぐに自分で採餌できるが,極端な晩成性の雛は孵化したときにまったく羽毛が生えていなくて,眼も開いていないし,当然動くことはできない。鳥によってはこの両者の中間の雛が孵化する。
だが,晩成性の鳥ではどんなに早く孵化するものであっても産卵から孵化まで10日は必要で,長い鳥では80日というものもいる。この期間動くことのできない卵は,捕食者に対して無力である。卵の捕食を防ぐにはいろいろな手段があるが,卵が捕食者に見つからないように隠しておくのがその一つである。そしてどんな鳥にでも使える隠し方は,親が卵の上に座って隠す方法である(これは一部の爬虫類にも見られる)。うまいことに鳥の体温は気温よりも高くて一定だから,親鳥が卵の上に座れば卵温は上がって,胚の発育は早くなる。これは卵の期間を短くすることになるから一挙両得である。おそらくそのためにであろうが,鳥は,どんな方法で卵の捕食を防ぐものでも,すべて卵を抱くし,鳥の卵は暖められなければ孵化しない性質をもつようになっている。
巣
ところで卵の捕食を防ぐ手段はほかにもある。穴を捜してその中に産めば見つかりにくい。穴がなければ枯木や崖に自分で掘るという手もある。キツネやイタチのこられない小島に産卵するのは空を飛ぶ鳥の特権ともいえる。同じく飛ぶ力を利用すれば同じように捕食者の近寄りにくい岩壁や木の枝先ややぶの茂みを利用することもできる。しかし,その場合には卵を入れておく容器がなければならない。また,地上に産卵する場合にも,卵数が二つ以上になると,その上にうまく座って抱卵するためには,卵が転がらないようにする必要がある。そこで多くの鳥は巣をつくって産卵することになる。このような巣は単に卵の容器であるだけだが,スズメ目の鳥やハチドリ科などでは,巣の中に保温性の材料で産座をつくって,抱卵の効率を高めるようになっている。スズメ目では穴の中や地上に産卵するときでも手の込んだ巣をつくるが,それはこのためであろう。このようなわけで鳥類は爬虫類と違って,孵化した子どもは独立生活ができないから,さまざまな程度に親鳥の世話になる。こうして鳥類は造巣,抱卵,育雛(いくすう)といった独自の繁殖生活を送ることになっているのである。
育雛
育雛は早成性の雛の場合は比較的単純で,とくに自分で採餌ができるカモやチドリでは親鳥は雛を連れて歩いて危険を知らせるだけである。ニワトリなどキジ目の鳥では親鳥が食物のありかを教えてやり,カイツブリ科,ツル科,クイナ科などの雛は親鳥の後をついて歩き親から給餌される。それに対して晩成性の雛の場合には運動力がないから,親鳥は巣内の雛に食物を運んで与えなければならないし,無力で体温調節能力のない雛を抱いてもやらなければならない。そして羽毛が生えそろって雛が巣立っても,それは捕食の危険の大きい飛べない期間を短くするのが主眼であるから,なお何日か雛に給餌しなければならない鳥が多い(卵や雛を守るための特殊な行動パターンとして擬傷を行う親鳥もいる)。
このような繁殖活動は多くの哺乳類と違って雌雄両者が行う場合が多く,とくに晩成性の鳥では造巣,抱卵,育雛のいずれも雌雄で行うものが多い。しかし,造巣と抱卵の両者または一方を雌だけが行うものもかなり多く,すべてを雌だけという鳥もある。逆にすべてを雄が行う鳥もあるが,それはごく少数である。近年になって,親鳥以外の個体がこのような活動を手伝う例が相次いで報告されて〈ヘルパーhelper〉と呼ばれているが,そのほとんどは前年または同年生れの兄姉であることがわかってきた。なお,繁殖様式としては一雄一雌のほか,一雄多雌,一雌多雄,乱婚型などさまざまの形があるが,それについては〈配偶型〉の項目を参照されたい。
→鳥
執筆者:浦本 昌紀