¥サバイバル:広がる転勤NG 「わがまま」「世代の違い」じゃない本当の理由
- ️毎日新聞
- ️Wed Mar 26 2025

「転勤はNGです。地方転勤を命じられたら転職すると思います」
大手金融機関に勤める小川一輝さん(仮名、26歳)はそう言い切る。
今の会社に入ったのは、コロナ禍のまっただ中。地方拠点で3年間、営業の仕事に取り組んだ後、東京に戻った。現在は数理統計を駆使してリスク分析をする部署で働く。専門性が高く、やりがいを感じている。
この春、同期の何人かに2カ所目や3カ所目の地方勤務の辞令が出た。自分は東京残留だが、1年後はどうなるかわからない。
大転換期を迎えるヒトとモノの「価格」の今をリポートする<¥サバイバル 令和の「値段」>。今回は、転勤事情に迫りました。(全3回)
広がる転勤NG 「わがまま」「世代の違い」じゃない本当の理由
「転勤したくないけれど」手当最大100万円 上昇するその「値段」
紙切れ一枚の転勤命令「もう通用しない」古屋星斗氏のアドバイス
実は今年の初め、望まない地方転勤を言い渡されたら転職すると心に決めた。大手転職サイトに登録すると、現在の仕事内容は引く手あまただった。自分には十分な市場価値がある。地方で再び営業をやったとしても、自分を高められない。
自分がこんな心境になるなんて、就職活動の時には考えもしなかった。転勤にあまり抵抗を感じなかったからこそ、金融や商社など全国勤務のある、いわゆるJTC(伝統的な日本企業)の入社試験ばかり受けた。
現在の月収は、残業代も入れて額面で50万円前後。イメージ通りの仕事と生活を手に入れたが、仮にそれを捨てることになったとしても「転勤だけはしたくない」。
理由はキャリアだけではない。働き始めて分かったのは、父母と妹の家族4人で囲む毎日の食卓が、自分の大事な原風景ということだった。
将来、家庭を築いた時、地方と都会を行ったり来たりする会社だと家族がバラバラになってしまわないだろうか――。望まない地方勤務はなおさら受け入れがたいものになっている。
7割が「転勤は退職のきっかけに」
最近の若者は「要求が多い」「わがままだ」と感じたり、「世代が違う。昔は良かった」「無理にでも転勤させたらいい」と思ったりしたとしたら、あなたは時代の変化を読めていないかもしれない。
人材サービス会社「エン・ジャパン」が2024年4月に20~50代を対象に実施した調査によると、「転勤の辞令が退職を考えるきっかけになるか」との問いに、「なる」「ややなる」の回答が…