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あいみょん「マリーゴールド」インタビュー|音楽家としての成長過程の中で生まれたストレートなラブソング - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

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あいみょんが8月8日にニューシングル「マリーゴールド」をリリースする。

テレビ朝日「ミュージックステーション」やNHK「SONGS」に出演するなど、彼女に対する注目は日に日に増している。おそらくその大きな要因の1つは、歌における彼女の率直な物言いだ。瑞々しく、ときにトゲトゲしい、さらには艶かしさすらも感じさせる彼女のエッジーな歌は聴いていて気持ちがいい。だが今回の「マリーゴールド」は驚くほどストレートなラブソング。今このタイミングで、なぜこの曲を発表したのかをあいみょんに聞いた。

取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 草場雄介

「君はロックを聴かない」を超える曲を書かねば

──あいみょんさんは1stアルバム「青春のエキサイトメント」リリース以降、「満月の夜なら」「愛を伝えたいだとか Remix EP」などエッジの効いた作品を立て続けにリリースしていました。ですが、今回の「マリーゴールド」はかなりストレートなラブソングです。なぜこういう曲を書こうと思ったんですか?

あいみょん

あいみょん

別に「王道のラブソングを書こう」と思って書いたわけじゃないんですよ。ただこの曲は「君はロックを聴かない」をリリースした頃に作っていて、当時の私にとってあの曲は最高傑作だった。そこで自分に勝手にプレッシャーをかけてしまったんです。「自分がこの音楽業界で生き残っていくには、あれを超える曲を作らなきゃいけない」みたいな。そういうプレッシャーに打ち勝って、自分で満足できたのが「マリーゴールド」だったんです。

──作詞作曲はどのように進めていったんですか?

サビの「麦わら帽子の君が揺れたマリーゴールドに似てる」という歌詞が最初に思い付いたので、そこから書いていきました。私は感じるままに書くと言うか、何かが起きてそれに関した曲を作るようなタイプではないので。サビのフレーズから「風と切なさ」を連想して、そこから曲を膨らませていきました。正直、細かいことはあまり覚えてない(笑)。

──マリーゴールドには色によって「信頼」「悲しみ」「絶望」「嫉妬」「生命の輝き」「変わらぬ愛」「濃厚な愛情」など、複数の花言葉があります。ストレートなラブソングなので、このタイトルに恋愛の複雑な感情を込めたのかな?と深読みしてみたのですが。

マリーゴールドにいろいろな花言葉があるのは、最近知ったんですよ。私は、愛し合ってる2人が昔を懐かしんでるような、現在進行形のラブソングとしてこの曲を書きました。だけど、聴く人によっては恋人と死別したことを想像したりするみたいで。恋愛をしていく中にはいろんな感情があるので、いろんな感情を想起させる言葉をちりばめたからだと思うんですけど。私としてはハッピーなラブソングを書いたつもりだけど、自然とこうなってしまった。むしろ楽しい感情だけのラブソングを書くほうが難しいですね。

──エッジの効いた前作やリミックスEPとのギャップが激しかったので驚きました。

あいみょん

今回の曲に関しては、「君はロックを聴かない」よりもいい曲を書こうという純粋な思いから生まれてきたものです。とは言え、私自身は抱え込むタイプではないので、すごく深刻なプレッシャーの中でこの曲を書いたと言うより、ナチュラルな状態から生まれたものです。音楽的に成長したいとはいつも思ってますけど、基本的には流れに身を任せていますね。

私の音楽はギターと声だけで成り立つ

──「マリーゴールド」のアレンジはどのように決めたんですか?

あいみょん

ずっと一緒にやってるアレンジャーさんたちと決めました。いつも私が書いた歌詞と、デモ曲からイメージをふくらませていくんです。私たちのチームはみんな直感で動いてると思うんですよね。もちろん私自身も意見を言うし。私自身に関して言うと、正直まだ自分の音楽性というものが定まっていなくて。そもそもどういう音楽がどのジャンルに属するのかもわからないし、自分がどんなジャンルの音楽をやりたいかと聞かれても答えられないんです。

──それはちょっと意外でした。

極端なことを言うと、私の音楽はギターと声だけで成り立つんですよね。だから弾き語りでいいと思ってもらえるのが一番いいはずだし、それがシンガーソングライターの強みでもあって。でもいろんな人たちといろんなタイプの音楽を作り上げていく作業はすごく楽しくて、音楽活動の中で制作している時間が一番好きですね。

──制作の際、ファンの反応を意識しますか?

制作中はあまりないけど、完成してから「どう聴かれるんだろう」とはけっこう考えます。こういう活動をしてると「前の曲のほうがよかった」だの、「あいみょん変わっちゃったね」だの言われるんですよ。それは仕方ないんですけど、私はデビューしたときからずっと、自宅でギターを弾いて歌ったものを携帯で録音してそれを作品に仕上げているだけなんです。音楽のことを本当に何も知らないまま始めたから、要は赤ちゃんみたいなことで、活動を続けていれば私自身が成長していくのは当たり前のことだと思うんです。小学生だって学年が上がるといろんな漢字を書けるようになるでしょ? そういうことなんですよね。

──あいみょんさんの中心にあるのは弾き語りのデモだけど、今後はラウドロックやブラックミュージックのような、今と全然違うアレンジの曲を発表する可能性もある、と。

あいみょん

そうですね、そのときの自分がいいと信じているものならば。

──そこでファンから「あいみょん、変わっちゃったね」と言われたら?

全然気にならないですね。むしろ「私のこと全然わかってないね」って突き放します(笑)。だって同じことばっかりやるのはつまらないじゃないですか。それに私が似たようなことばかりやってたら「マンネリ」とか言うんでしょ? だから私はいつも自分がいいと思うことを自由にやっています。