大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その9|ラプソディ:起源は古代ギリシャの叙事詩の朗読。かつてはオリンピックの種目だった?
日本でいう琵琶法師のように「楽器を鳴らしながら叙事を歌う」アオイドス、一方で楽器の代わりに「杖を持ち、さまざまな内容の叙事詩を編んで歌う(rhapsōidein)」ラプソドス(rhapsōidos)の2種類の語り部がいました。そして、このラプソドスが歌う歌のことをラプソディア(rhapsōdia)と呼んでいました。これがラプソディのルーツなのです。
ラプソドスたちは、盲目の詩人ホメロスなどの叙事詩を魅力的に、そしてたまにジョークを交えて笑いを取るスタイルで歌っていましたが、この技量を競い合うこともあり、かつては古代オリンピックの競技にもなっていました!
昔の日本にも、土地の民話を面白おかしく話す「狂詩」というジャンルがあり、これがラプソディアとよく似ていることから「狂詩曲」と呼ばれるようになりました。決して狂ったような曲ではないのです。
ホメロス:イリアス (古代ギリシアにおけるラプソディアの再現)
音楽作品にラプソディの発想が用いられることは18世紀末までなく、その初期の作品としてライヒャルトの「ラプソディ」(1792年)が挙げられます。それに続き、リストの「ハンガリー狂詩曲」のように、ある場所の様子や音楽的特性をいくつか編み込んで伝えるような作品がラプソディの名のもとで作曲されるようになりました。そう、これらも古代ギリシアのラプソディアの様式を引き継いでいるからなのです!
1. ライヒャルト:ラプソディ
2. リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
3. ブラームス:アルト・ラプソディ 作品53
4. ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲〜第18変奏
5. ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー (オリジナル版)
6. Queen:ボヘミアン・ラプソディ