pc.watch.impress.co.jp

槻ノ木隆のPC実験室




 今年のCeBITで製品アナウンスがあり、既に出荷開始されたASUSTeKの「CT-479」。Pentium MをSocket 478マザーボードで利用するための変換アダプタ(というか、「下駄」の方が通りが良いかもしれない)である。秋葉原では4月第2週から販売されており、今では改造モデルまで販売されているという人気ぶりである。この製品の実力を確認してみよう。

●マーケット動向

 CT-479のメリットとは、言うまでもなくPentium Mを利用できること。Pentium 4系の消費電力や発熱に悩まされていたユーザーには、もってこいの製品である。Pentium 4の場合、既にNorthwood系列の製品はほとんど入手できないから、現在利用できるのは発熱が多いPrescott系列のみ。ということは、TDPは最低でも84Wであって、EIST(Enhanced Intel Speedstep Technology)もないから、冬には便利でも夏場には辛いマシンとなる。特に省スペースPCの場合、発熱対策は大問題であろう。これに対しPentium Mは、最新の770(2.13GHz)でもTDPは27Wと低く、その割に性能は悪くないわけで、3Dゲームをガンガン回すとかビデオのエンコードといった、絶対的なCPUパワーを必要とするユーザー以外にはかなり良い選択肢である。

 Pentium M場合の問題は、マザーボードの選択肢が限られることだ。現時点で入手可能なマザーボードといえば、以下の製品ぐらいしかない。

  • PFU PD-41PM160M1:スペックはともかく、入手性もよくなく、またCPUクーラーが付属しない。価格もやや高価。
  • COMMELL LV-671:ファンレス構成を取れるのはメリットだが、拡張性に乏しく、しかも高価。入手性もやや悪い。
  • AOpen i855GMEm-LFS:Pentium Mを使う時のスタンダードな選択肢。入手性もよく、最近は価格も下がってきた。
  • AOpen i915GMm-HFS:Pentium MでPCI Expressを使いたい場合、現状唯一の選択肢。ただ価格は高め。
  • AOpen XC Cube EZ855:入手性やコストパフォーマンスはは悪くないと思うが、キューブ型PC以外の構成を求めている場合には意味がない。
  • DFI 852GME-MGF:ちょっとピーキーな製品であるのは以前にレポートした通り。価格もやや高め。

 産業用ボードコンピュータを探せば他にもいろいろ見つかるのだが、個人ユーザーが購入できるのはまぁこのあたりまでだろう。現実的な選択肢はi855GMEm-LFS(Ver 2)かi915GMm-HFSで、前者は3月の時点で25,000円を切り、最近では最安値が20,000円をちょい切るあたりまで落ちてきている。後者はやはり3月の時点で32,000円~35,000円のレンジ。最近は最安値がジャスト3万あたりまで落ちては来たが、今しばらくはこのままといった感じである。割と高値なのが欠点と言える。

 これに対し、今回CT-479に組み合わせたASUSTeK P4P800 SEの場合、実売価格は12,700円(PC DEPOT:税込)と格安。CT-479は6,489円(高速電脳:税込)とあわせても2万を切っており、ほぼ価格では同等である。運良く既にASUSTeKのマザーを持っているユーザーであればCT-479代だけで済むから、移行コストは最小に抑えられるだろう。

 なお、ASUSTeKはCT-479でEISTをサポートしないと表明している。理由として挙げられたのは、EISTが動作するためにはサウスブリッジがICH5ではなくICH-5Mである必要があり、ところがこれを搭載したIntel 865PE/G搭載マザーボードが無いから、という話だった。これはちょっと残念だが、ただPentium 4をPentium Mに変えるだけで大幅な省電力化が可能だから、あきらめざるを得ないだろう。

●CT-479の構造

 さてそのCT-479であるが、ASUSTeKによれば5つの問題があったという。

  • (1) ピンの配置がSocket 478とSocket 479で全く異なる
  • (2) コア電圧設定の仕様が異なる
  • (3) Pentium Mには、VCCAと呼ばれるPLL用の1.8Vの電源供給が必要
  • (4) 信号レベルが微妙に異なる
  • (5) 機械的形状が大きく異なる

がそれである。まず(1)、実は今回筆者も調べて初めて知ったのだが、Socket 478とSocket 479は単にピンを1本足したというレベルではなく、全く信号配置が異なっている。表1にいくつかダイジェストで示したが、まるで信号が異なっている事が判るはずだ。この結果、全部のピンについて配線を入れ替えてやらなければならない。

【表1:Pentium MとPentium 4のピン配置の違い】
ピン番号 Pentium M Pentium 4
ピン名 信号タイプ 入出力 ピン名 信号タイプ 入出力

A2

VSS Power/Other   THERMTRIP# Asynch GTL+ Output

A3

IGNNE# CMOS Input VSS Power/Other  

A4

IERR# Open Drain Output VSS_SENSE Power/Other Output

A5

VSS Power/Other   VCC_SENSE Power/Other Output

A6

SLP# CMOS Input TESTHI11 Power/Other Input

A7

DBR# CMOS Output RESERVED    

A8

VSS Power/Other   VCC Power/Other  

A9

BPM[2]# Common Clock Output VSS Power/Other  

A10

PRDY# Common Clock Output VCC Power/Other  

A11

VSS Power/Other   VSS Power/Other  

A12

TDO Open Drain Output VCC Power/Other  

A13

TCK CMOS Input VSS Power/Other  

A14

VSS Power/Other   VCC Power/Other  

A15

ITP_CLK[1] CMOS input VSS Power/Other  

A16

ITP_CLK[0] CMOS input VCC Power/Other  

A17

VSS Power/Other   VSS Power/Other  

A18

THERMDC Power/Other   VCC Power/Other  

A19

D[0]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  

A20

VSS Power/Other   VCC Power/Other  

A21

D[6]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  

A22

D[2]# Source Synch Input/Output RESERVED  

A23

VSS Power/Other   D2# Source Synch Input/Output

A24

D[4]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  

A25

D[1]# Source Synch Input/Output D3# Source Synch Input/Output

A26

VSS Power/Other   VSS Power/Other  

AA1

VSS Power/Other   VSS Power/Other  

AA2

A[16]# Source Synch Input/Output TESTHI1 Power/Other Input

AA3

A[14]# Source Synch Input/Output BINIT# Common Clock Input/Output

AA4

VSS Power/Other   VSS Power/Other  

AA5

VCC Power/Other   BPM4# Common Clock Input/Output

AA6

VSS Power/Other   GTLREF Power/Other Input

AA7

VCC Power/Other   VSS Power/Other  

AA8

VSS Power/Other   VCC Power/Other  

AA9

VCC Power/Other   VSS Power/Other  

AA10

VSS Power/Other   VCC Power/Other  

AA11

VCC Power/Other   VSS Power/Other  

AA12

VSS Power/Other   VCC Power/Other  

AA13

VCC Power/Other   VSS Power/Other  

AA14

VSS Power/Other   VCC Power/Other  

AA15

VCC Power/Other   VSS Power/Other  

AA16

VSS Power/Other   VCC Power/Other  

AA17

VCC Power/Other   VSS Power/Other  

AA18

VSS Power/Other   VCC Power/Other  

AA19

VCC Power/Other   VSS Power/Other  

AA20

VSS Power/Other   TESTHI6 Power/Other Input

AA21

VCC Power/Other   GTLREF Power/Other Input

AA22

VSS Power/Other   D62# Source Synch Input/Output

AA23

D[40]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  

AA24

D[33]# Source Synch Input/Output D63# Source Synch Input/Output

AA25

VSS Power/Other   D61# Source Synch Input/Output

AA26

D[46]# Source Synch Input/Output VSS Power/Other  

 (2)については、Pentium MではIMVP(Intel Mobile Voltage Positioning)と呼ばれる方式で電圧設定を行なっており、一方Pentium 4ではVRM(Voltage Regulator Module) 10.1として定められている方式で電圧設定を行なっている。どちらもCPUへのコア電圧を設定するための方式で、CPUから出るVID0~VID5という6bitの信号線が示す値に応じて、マザーボード側で電圧を生成してCPUに供給するという仕組みであるが、このVIDの解釈がIMVPとVRMで全く異なっている。IMVPは0.7V~1.708Vの範囲を0.016V刻みで指定するのに対し、VRM 10.1は0.8375V~1.6Vの範囲を0.0125V刻みで指定する、というあたりで互換性が無いわけだが、さらにIMVPとVRM 10.1ではVIDの並び順も異なっており、結果として表2に示す通り、これまた完璧にマッピングが全然異なっている。従ってVIDをPentium MからPentium 4マザーボードにそのまま渡すと、CPUが焼けるか動かないかのどちらかという事になりかねない。

【表2:Pentium MとPentium 4のVIDの違い】
VID Pentium M
Vcc(V)
Pentium 4
Vcc(V)
5 4 3 2 1 0

0

0

0

0

0

0

1.708

1.0875

0

0

0

0

0

1

1.692

1.0625

0

0

0

0

1

0

1.676

1.0375

0

0

0

0

1

1

1.660

1.0125

0

0

0

1

0

0

1.644

0.9875

0

0

0

1

0

1

1.628

0.9625

0

0

0

1

1

0

1.612

0.9375

0

0

0

1

1

1

1.596

0.9125

0

0

1

0

0

0

1.580

0.8875

0

0

1

0

0

1

1.564

0.8625

0

0

1

0

1

0

1.548

0.8375

0

0

1

0

1

1

1.532

1.5875

0

0

1

1

0

0

1.516

1.5625

0

0

1

1

0

1

1.500

1.5375

0

0

1

1

1

0

1.484

1.5125

0

0

1

1

1

1

1.468

1.4875

0

1

0

0

0

0

1.452

1.4625

0

1

0

0

0

1

1.436

1.4375

0

1

0

0

1

0

1.420

1.4125

0

1

0

0

1

1

1.404

1.3875

0

1

0

1

0

0

1.388

1.3625

0

1

0

1

0

1

1.372

1.3375

0

1

0

1

1

0

1.356

1.3125

0

1

0

1

1

1

1.340

1.2875

0

1

1

0

0

0

1.324

1.2625

0

1

1

0

0

1

1.308

1.2375

0

1

1

0

1

0

1.292

1.2125

0

1

1

0

1

1

1.276

1.1875

0

1

1

1

0

0

1.260

1.1625

0

1

1

1

0

1

1.244

1.1375

0

1

1

1

1

0

1.228

1.1125

0

1

1

1

1

1

1.212

Output off

1

0

0

0

0

0

1.196

1.0750

1

0

0

0

0

1

1.180

1.0500

1

0

0

0

1

0

1.164

1.0250

1

0

0

0

1

1

1.148

1.0000

1

0

0

1

0

0

1.132

0.9750

1

0

0

1

0

1

1.116

0.9500

1

0

0

1

1

0

1.100

0.9250

1

0

0

1

1

1

1.084

0.9000

1

0

1

0

0

0

1.068

0.8750

1

0

1

0

0

1

1.052

0.8500

1

0

1

0

1

0

1.036

1.6000

1

0

1

0

1

1

1.020

1.5750

1

0

1

1

0

0

1.004

1.5500

1

0

1

1

0

1

0.988

1.5250

1

0

1

1

1

0

0.972

1.5000

1

0

1

1

1

1

0.956

1.4750

1

1

0

0

0

0

0.940

1.4500

1

1

0

0

0

1

0.924

1.4250

1

1

0

0

1

0

0.908

1.4000

1

1

0

0

1

1

0.892

1.3750

1

1

0

1

0

0

0.876

1.3500

1

1

0

1

0

1

0.860

1.3250

1

1

0

1

1

0

0.844

1.3000

1

1

0

1

1

1

0.828

1.2750

1

1

1

0

0

0

0.812

1.2500

1

1

1

0

0

1

0.796

1.2250

1

1

1

0

1

0

0.780

1.2000

1

1

1

0

1

1

0.764

1.1750

1

1

1

1

0

0

0.748

1.1500

1

1

1

1

0

1

0.732

1.1250

1

1

1

1

1

0

0.716

1.1000

1

1

1

1

1

1

0.700

Output off

 (3)はPentium M独自の規格で、これを起動時に外部から供給してやる必要がある。しかし電流自体は最大でも120mAなので、消費電力の事はあまり考える必要がない。ただVccは最大でも1.7Vそこそこだから、1.8Vが必要なVCCAに転用することはできない。

 (4)は微妙な問題である。Pentium 4/Pentium M共に、データ信号の電圧レベルは、GTLREFと呼ばれる信号を基準にすることになっている。このGTLREFの範囲、NorthwoodベースのPentium 4では-0.1~+1.75V、Pentium Mでは-0.1~+1.6Vの範囲なのだが、PrescottベースのPentium 4はPentium Mよりもやや狭い範囲になっている。従って昔の製品はともかく、最近のPrescottを前提にした製品ではカバーできる信号範囲に収まらない可能性がある。

 (5)は、ヒートスピレッダもないし、そもそもCT-479の高さがあるから、既存のヒートシンクがつかえないのは明白ということである。

 これらの問題に対してASUSTeKでは

  • (1) 6層基板を使い、配線を全て並べ替える事で対応した。
  • (2) 基板上にLevel Shifterと呼ばれる回路を搭載し、ここでIMVPの信号をVRM用に置き換えて送り出す事で、近い電圧を発生させるようにした。
  • (3) 基板上に、VCCA用の電源回路を別に設け、ここから直接電源供給を行なうようにした。
  • (4) チップセットのSpecificationを確認したところ、Pentium Mの信号もぎりぎりカバーされることが確認できたのでそのまま使うことにした。
  • (5) 専用のヒートシンクを用意した。

という形で解決している。(1)~(3)に関しては、図1を見ていただくほうが早いかもしれない。ここでLevel ShifterはPLDを使って構成しているという話で、内部的にはTable Lookupで対応しているのではないかと思われる。要するに、以前のSlot1→Socket 370の下駄とかとは異なって、だいぶ手間が掛かっているわけだ。

(図1)CT-479構成図

 ちなみにもう1つ問題があって、それはBIOSの対応である。最近のBIOSは、CPUにロードするMicrocodeを格納しているわけだが、Pentium MとPentium 4では当然異なるMicrocodeが必要なので、これをBIOS側で対応しなければならない。つまり、既存のSocket 478マザーボードにCT-479を挿しただけでは、Pentium Mは動作しないわけで、これは対応BIOSを搭載したマザーボードが増えるのを待つしかないわけだ。パッケージの中身はCT-479本体と専用クーラー、クーラー取り付け用金具、電源ケーブル、マニュアルからなる。ドライバ類は一切必要ないため、付属していない。

 本体は、丁度Pentium 4のヒートシンク取付金具の内側に収まるサイズとなっている(写真3)。裏面はCPUピンが突き出しているだけのシンプルな構成だ(写真4)。

 さて、インストールであるが、CT-479を装着する前に、先に述べた通りBIOSを対応したものにする必要がある。今回購入したP4P800 SEの場合、BIOS Version 1007.003が入っていたが(写真5)、このバージョンはまだPentium Mに未対応。CT-479を介してPentium Mを装着しても、全くブートしない。そこでまずはPentium 4かCeleronを装着してBIOS Updateを実行し(写真6)、Version 1008に上げてやる必要がある(写真7)。無事に1008にバージョンが上がれば準備完了である。

 さて、インストール自体は比較的容易である。

  • (1) P4P800 SEからPentium 4を取り去る(写真8)。
  • (2) CT-479を装着し、Socket 478のレバーを下ろしてロックする(写真9)。
  • (3) Pentium Mを装着し、ロックする。必要ならFSB設定のジャンパ位置を変更する(写真10)。
  • (4) VCCA用電源を接続する(写真11)。
  • (5) 専用クーラーを載せる(写真12)。
  • (6) 取付金具を使ってクーラーを固定する(写真13)。

 あとは、Vcca用配線とクーラーの配線をそれぞれ電源に接続すれば、インストール作業は完了ということになる。

 ただここで注意は、写真14のようにクーラーが傾かないようにすることだ。この状況だと、クーラーがCPUのコアの端に接触し、最悪コアが欠ける事がある(というか、これが理由で1つコア欠けさせてしまった)。正しい装着方法は写真12の状態で、片手でクーラー全体を上からホールドしつつ、もう片手で金具を取り付けることで、クーラーが傾かないようにすることだ。Pentium 4と異なりヒートスプレッダは無いから、かつてのAthlon XP同様、コア欠けには十分注意してほしい。

 問題なく装着すれば、電源を入れると正しくブートするはずだ(写真15)。Windowsも当然問題なく立ち上がり、特にドライバの追加といった作業は必要ない。実際使っている分にはあまり違和感がないのだが、Crystal CPUIDで見てみると、ちゃんとIntel 865PEの上でPentium Mが動作していることが判る(写真16)。

●で、性能は?

 長い前置きが終ったところで、実力比較である。本当ならこの手のテストだと内蔵グラフィックを使うところだが、現状ではIntel 865G/915G搭載製品がまだCT-479に未対応なので、Intel 865PE搭載マザーでのテストとなった。このためテストではRADEON 9600 XTを利用している。また、CPUとしては

  • Pentium M 725 (1.60GHz/400MHz FSB)
  • Pentium M 730 (1.60GHz/533MHz FSB)
  • Pentium M 735 (1.70GHz/400MHz FSB)
  • Pentium M 750 (1.86GHz/533MHz FSB)
  • Pentium M 770 (2.13GHz/533MHz FSB)

の5つのCPUが利用出来たので、これを一挙に行なったほか、比較対象としてCT-479を使わずに直接

  • Pentium 4 1.60E GHz(Pentium 4 3.20E GHzを400MHz FSBで動作させた)
  • Pentium 4 2.80E GHz
  • Pentium 4 3.20E GHz

も動作してみた。Pentium 4 1.60E GHzは、同じ1.6GHz/400MHz FSBのPentium M 725と動作周波数/FSBを同じにすることで、CPUの違いによる性能差を確認してみようという趣旨である。

 これとは別に、Pentium Mに関してはDFI 852GME-MGF上でも動作させて性能を見てみた。こちらは要するにモバイル用チップセットとデスクトップ用チップセットでの性能差を確認してみる、という趣旨だ。動作環境は表3に示す通りである。

【表3:テスト環境】
CPU Pentium 4 1.6E GHz/2.8E GHz/3.2E GHz Pentium M 725/730/735/750/770
M/B ASUSTeK P4P800 SE DFI 852GME-MGF
BIOS BIOS 1008 12/10/2004-i852-W83627HF-6A69ZD47C-00
Driver Intel Inf Driver 5.0.2.1003 Intel Inf Driver 6.2.1.1001
Memory PC3200 CL3 512MB×2
Video ATI Radeon 9600 XT 128MB
Driver CATALYST 5.4 ( 6.14.10.6525)
HDD Seagate Barracuda 7200.7 120GB SATA(ST312026AS) NTFSフォーマット
OS Windows XP Professional 英語版+SP2

 さて、まずはCPUコアの絶対性能比較ということで、Sandra 2005 SP1のCPU Testの結果を表4に示す。絶対性能自体はやはりPentium 4がやや上回るが、Pentium 4 3.20E GHzとPentium M 770を比べると、Pentium M 770がそれほど遜色ないスコアを出していること、あるいはPentium 4 1.60EHzとPentium M 725を比較すると、SSE2以外の全スコアでPentium Mが圧倒していることを考えると、やはりPentium Mは効率が良い事が見て取れる結果になっている。さすがにPentium M 725~735あたりまでは数字がやや見劣りするが、750以上だとほぼPentium 4と互角な感じである。

【表4:Sandra 2005 SP1 CPU Arithmetic Benchmark/CPU Multi-Media Benchmark】
Sandra 2005 SP1 CPU Arithmetic Benchmark CPU Multi-Media Benchmark
Dhrystone ALU
(MIPS)
Whetstone FPU
(MFLOPS)
Whetstone iSSE2
(MFLOPS)
Integer x8 iSSE2
(it/s)
Float x4 iSSE2
(it/s)
ASUSTeK
P4P800 SE
Pentium 4 1.60E GHz

4654

1841

3323

11286

14995

Pentium 4 2.80E GHz

8131

3213

5795

19806

26338

Pentium 4 3.20E GHz

9335

3690

6614

22636

29904

Pentium M 725

6915

2230

2853

15290

16843

Pentium M 730

6917

2231

2854

15294

16849

Pentium M 735

7347

2370

3032

16246

17898

Pentium M 750

8073

2604

3331

17848

19663

Pentium M 770

9225

2975

3806

20400

22479

DFI 852GME-MGF Pentium M 725

6932

2237

2861

15333

16891

Pentium M 730

6909

2229

2859

15315

16872

Pentium M 735

7354

2375

3036

16278

17942

Pentium M 750

8082

2608

3336

17873

19691

Pentium M 770

9240

2980

3813

20429

22515

 では実際に使うとどうか? ということでPCMark04の結果をまとめたのが表5である。このテストだとPentium 4系はHyperThreadingの威力で、同時実行テストで良い結果をだすためか、成績がちょっと上乗せされているのが判る。CPU TestのScoreを見ればこれは一目瞭然である。ただ、同一クロック比較だとやはりPentium 4はどうにもならない感じで、Pentium Mの効率のよさが再確認できた形だ。ちなみに852GME-MGFの結果がやや低いのは、こちらでレポートした通りメモリバスが遅いからで、このあたりはDDR400をきちんとサポートし、デュアルチャネル構成のメモリバスを持つIntel 865PEの方にアドバンテージがあると言う事だろう。

【表5:PCMark04】
PCMark04 PCMark CPU Memory Graphics HDD
ASUSTeK
P4P800 SE
Pentium 4 1.60E GHz

2665

2459

2713

2865

4238

Pentium 4 2.80E GHz

4356

4240

4696

3193

4213

Pentium 4 3.20E GHz

4895

4818

4959

3244

4216

Pentium M 725

3448

3173

2886

3154

4395

Pentium M 730

3504

3190

3250

3150

4433

Pentium M 735

3630

3360

2945

3174

4420

Pentium M 750

3965

3658

3477

3175

4403

Pentium M 770

4427

4169

3685

3206

4406

DFI 852GME-MGF Pentium M 725

3293

3120

2141

3030

4402

Pentium M 730

3412

3137

2535

3054

4397

Pentium M 735

3580

3365

2824

3073

4398

Pentium M 750

3849

3637

2679

3086

4371

Pentium M 770

4321

4133

2890

3109

4430

 ついでにSYSMarkを実施した結果が表6である。Pentium 4 1.60E GHzは話にならない性能の低さなので置いておくとして、Pentium 4 2.80E GHzとPentium M 750がほぼ同等、Pentium 4 3.20E GHzとPentiuM M 770がほぼ同等といったところで、Pentium M 725~735は多少成績は落ちるものの、大きく違うわけではない。Pentium Mで構成しても、デスクトップでの利用に大きな遜色があるとは言えないようだ。ついでに言えば、852GME-MGFの結果もかなり優秀でほとんどP4P800 SEと差がないのは、あまりFSBの性能が関係ない=Dothanの2MB L2キャッシュが良い仕事をしている、という事だろう。

【表6:SYSMark 2004】
SYSMark 2004 SYSmark 2004 Rating Internet Content Creation Office Productivity
ASUSTeK
P4P800 SE
Pentium 4 1.60E GHz

98

96

100

Pentium 4 2.80E GHz

165

180

152

Pentium 4 3.20E GHz

184

206

164

Pentium M 725

144

151

137

Pentium M 730

146

153

140

Pentium M 735

152

164

141

Pentium M 750

165

180

152

Pentium M 770

180

201

162

DFI 852GME-MGF Pentium M 725

146

153

139

Pentium M 730

147

155

139

Pentium M 735

154

163

145

Pentium M 750

163

178

149

Pentium M 770

180

202

160

 では3D系は? というところだが、使っているビデオカードがRADEON 9600 XTだから、3DMark05とかを掛けても余り意味がない。今回は3DMark03とFinal Fantasy XI Official Bench V3、それとDoom3のDemo 1を実施してみた。3DMark03とDoom3は、1,024×768ピクセルで利用している。結果はというと、これまたPentium Mに見劣り一切無しという結果である。まぁもっと性能の高いビデオカードを使うとまた話が変わるのかもしれないが、今回利用した3Dゲーム位なら、Pentium Mで(Pentium 4の)代替が十分勤まる、という事が確認できたのは有意義であろう。ちなみにこのテストでは再び852GME-MGFの成績が低めだが、テクスチャの転送とかでメモリ帯域の低さがモロに出てしまったためであろう(こればっかりはキャッシュ容量を大きくしても救えない)。

【表7:各種3Dベンチマーク】
3D Benchmark 3DMark03 FFXIBench 3 Doom3 Demo1(fps)
Low High
ASUSTeK
P4P800 SE
Pentium 4 1.60E GHz

3790

3614

2449

23.0

Pentium 4 2.80E GHz

4323

5709

3649

23.9

Pentium 4 3.20E GHz

4358

6113

3889

24.1

Pentium M 725

4293

5611

3656

24.0

Pentium M 730

4304

5842

3770

24.0

Pentium M 735

4309

5757

3724

24.0

Pentium M 750

4341

6254

4042

24.1

Pentium M 770

4365

6552

4198

24.3

DFI 852GME-MGF Pentium M 725

4190

5621

3671

18.1

Pentium M 730

4257

5556

3636

19.2

Pentium M 735

4283

5778

3740

19.4

Pentium M 750

4285

5938

3878

19.1

Pentium M 770

4303

6217

4090

19.3

●オーバークロックについて

 ここまでの結果を見ると、「なるほど、Pentium M+CT-479は確かに高速な事がわかった。しかしPentium Mは高くて買いにくい」という声が聞こえてきそうである。実際、今週のCPUの価格を見ると

  • Pentium M 725 22,820円
  • Pentium M 730 22,655円
  • Pentium M 735 26,572円
  • Pentium M 750 32,762円
  • Pentium M 770 70,297円
  • (いずれも平均値)

となっている。Pentium 4 3.20E GHzのリテールパッケージは24,788円だから、これはかなり割高に感じられるかもしれない。ところが、実はそうでもなかったりする。というのは、今回結果を示したPentium M 770というのは、実はPentium M 725のオーバークロックだったりするからだ。写真17を見れば明らかなように、1.6GHz動作のPentium M 730のFSBを400MHz→533MHzに上げただけで、電圧も何もいじっていないにも関わらず、あっさり2.13GHzで動作してしまった。これは別にCT-479と関係ない、というのは852GME-MGFでもやはり2.13GHzで問題なく動作したからで、ついでに付け加えればPentium M 735をうっかり533MHz動作にしてブートしたら、こちらもあっさり2.26GHz動作で動いてしまった。データは取っていないが、取ればおそらくPentium 4 3.20E GHzを凌駕し、3.40E GHzに迫る性能を出したであろう事は想像に難くない。まぁオーバークロック動作が好きでない人にはお勧めは出来ないが、こうなるとCPU+M/Bの価格は

  • Pentium 4 3.20E GHz + P4P800 SE : 24,788円 + 12,700円 = 37,488円
  • Pentium M 725 + CT-479 + P4P800 SE : 22,820円 + 6,489円 + 12,700円 = 42,009円

で、価格差はわずか4,521円。性能はほとんど変わらずに、消費電力を大きく下げる代償としては、ずいぶん安いと言わざるを得ない。当然CPUの個体差があるから、「必ず動作する」というものではないし、動作させている途中で壊れる危険性は大きく増すわけで、「あくまで自己責任」の世界の話ではあるが、それでも7万円のPentium M 770を買わずに済ませられるあたりはかなり魅力的に感じられるだろう。

(写真17)オーバークロック後のPentium M 725

●問題

 ざっとCT-479をご紹介してきたが、そんなわけでなかなか魅力的な構成が取りやすい事はおわかりいただけるかと思う。問題は対応マザーがなかなか増えないことだ。ASUSTeKによれば順次対応マザーは増やすとしつつも、対象はIntel 875/865以降を搭載する製品に限るとしている。理由は「検証にえらく手間がかかるから」ということだそうで、Intel以外のベンダーのチップセットや、Intelでも845シリーズなど古い製品については、「手が回らない」ということだそうである。こうした古い製品については、そういうわけで望みはなさそうだ。ただこれは仕方が無いかもしれない。

 加えて言えば、構造上Socket 478には対応できても、LGA775には対応が(機械的に)難しいのも、仕方がないとは言えちょっと残念である。まぁP4GD1が既にCT-479に対応しているので、Pentium MでPCI-Expressを使いたい、という場合にも選択肢があるのは正直嬉しいところである。欲を言えば、Intel 915Gを搭載したSocket 478マザーボードを出してもらい(それも出来ればMicroATXが嬉しい)、そこでCT-479が動作すれば完璧な気がするが、今のところそういう予定が丸っきりなさそうなのが、ちょっと残念である。

□ASUSTekのホームページ(英文)
http://www.asus.com
□製品情報(英文)
http://www.asus.com/products1.aspx?l1=3&l2=0&l3=0&modelmenu=0&share=txt/57
□関連記事
【3月31日】ASUSTeK開発担当者が来日し、新製品を多数紹介
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0331/asus.htm
【2月8日】異色のPentium Mマザー「DFI 852GME-MGF」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0208/pclabo32.htm
【1月12日】Pentium M対応ベアボーン「AOpen XC Cube EZ855」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0112/pclabo30.htm

バックナンバー

(2005年4月19日)

[Reported by 槻ノ木隆]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.