早慶合格だなんて許せない? 私大のAO・推薦枠増加にモヤっとする人たち | アーバンライフ東京
- ️Sun Feb 10 2019
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近年、大学入試で推薦/AO入試入学者の割合が増えています。いったいなぜでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。
推薦 + AO = 合格者の4割以上
1月のセンター試験を皮切りに本格化する大学入試ですが、AO入試(学力だけでなく、受験者の個性などを総合的に評価する入試)や指定校推薦などで年明け前に合格切符を手にする学生も年々増えています。
その一方、私立大学を中心に一般入試組との学力差がささやかれていますが、問題点はあるのでしょうか。
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AO入試は慶応大学藤沢湘南キャンパス(藤沢市)の開校を受け、1990(平成2)年度の入学者向けに初めて実施されました。他大学も追随し、年を追うごとに合格者の割合が増加しています。
文部科学省がAO入試に関わる調査を開始した2000(平成12)年度の大学入試では、推薦入試での合格者は31.7%、AO入試による入学者は1.4%でした。しかし、2017年度の大学入試では推薦入試が35.2%、AO入試での入学者は9.1%になりました。こうした制度を利用して、全体の4割以上が大学に入学しているのです。
私立大のみのデータでは推薦入試での入学者は40.5%、AO入試は10.7%になっています。つまり、私立大学については入学者のふたりにひとりが推薦またはAO入試を利用していることになります。
しかし、文部科学省が行ったセミナー「大学入学者選抜改革の動向」の資料によると、定員割れしている私立大学ほど推薦とAO入試の実施率が高く、早期に確実に入学者を囲い込みたい思惑が見えてきます。
それでは、人気実力とも群を抜く私立大学の双璧、慶応義塾大学と早稲田大学の入試は一般入試者が多いのでしょうか。
独自路線を行く慶応
前述のとおり、私立大学のツートップである慶応義塾大学はAO入試を日本で初めて実施した大学です。AO入試の名称を浸透させた慶大ですが、現在、一部の学部で「FIT入試」と名前を変えて実施しています。「慶応で学びたい」という情熱を持ち合わせている学生と、「この学生を教えたい」と考える教員をめぐり合わせる入試制度です。
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法学部法律学科で行われている入試を一例にすると、FIT入試A方式の2次選考では教員の講義を受けてからの小論文やグループディスカッションなど、ハードな試験内容となっています。
2016年度からは全国を7つのブロックに分け、各ブロック最大10人の合格者を選ぶB方式の2次選考では、設問に対する400文字程度の小論文の問題ふたつと10分程度の個別面接が行われます。
このFIT入試による法学部法学科の合格者は97人。推薦入試による合格者は94人になり、これらの制度での合格者は191人に上ります。
しかし同じFIT入試でも、A方式の合格率は約14.6%に対し、B方式では約35.2%と2倍以上の開きがあるのです。このように、同じ学部学科でも入試制度によって合格率が大きく変動しています。
慶大で見る合格者数の差
それでは、慶大の一般入試と推薦やAO入試での合格者数はどれだけの差があるのでしょうか。
2019年度の入学者の結果を見ると、一般試験の合格者数は補欠合格も含めて8797人ですが、推薦とAO入試での合格者は1255人となっています。つまり、慶応大学ではまだ一般入試での合格者が大半を占めているのです。
慶大のFIT入試やAO入試は、秋ごろに合格発表が行われます。そのため、一般入試を受ける高校生と違い、大学入学まで勉強に追われることなく過ごせるのです。こうした早期の合格手形が、入学後の学力差につながっていると考えられます。
一方、早稲田は……
一方の早稲田大学でも、一般入試とセンター試験利用での合格者は1万3962人に対し推薦入試での合格者は1686人、AO入試の合格者は30人という結果になっています。
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こちらも慶大同様、一般入試やセンター試験といった学力試験を経て合格する受験生の割合が高くなっています。
推薦とAO枠は今後増える?
私立大学のトップを走る慶大や早大といえども、少子化の波は逆らえません。今後、確実に入学する学生をいち早く囲うため、AO入試や推薦入試の定員は徐々に増えていくと考えられます。他の私立大学に関しては言わずもがなです。
しかし、年を明けても勉強してきた一般入試組からすると、推薦とAO組と同じ空間で勉強するのは心中穏やかなものではありません。
大学側が早めに合格した学生に対し読書や小論文の課題を出すなどし、入学に備えた準備をするよう促し、双方の学力の差を埋めることも必要となってくるのではないでしょうか。