グラフ特集
「朝雲」グラフ特集
<P-X C-X>
ベールを脱いだ海空“兄弟機”実物大模型を公開
操縦席や貨物室も
川崎重工岐阜工場
報道陣に公開された次期固定翼哨戒機(PX、手前)と同輸送機(CX)の実物大模型(モックアップ)(12月2日、川崎重工業岐阜工場で)
技術研究本部が開発中の次期固定翼哨戒機(PX)と次期輸送機(CX)の実物大模型(モックアップ)が12月2日、川崎重工業岐阜工場(岐阜県各務原市)で報道陣に公開された。
公開されたのは両機の胴体部分の木製モックアップで、全長はPXが約26・3メートル、CXが約40メートル。内部には両機で共用化されたコクピットをはじめ、任務員席やソノブイラック(PX)、貨物室やロードマスター(空中輸送員)が貨物の搭載・しゃ下を1人で管理できる「ロードマスターステーション」(CX)などが模型で再現されている。
両機の開発ではコンピューター上で搭載機器の操作性や機体の整備性を確認できる仮想機体(デジタル・モックアップ=DMU)の方式を導入するなど、大幅なコンピューター化が図られているが、搭乗員や整備員が実際に操作性などを確認できるよう、胴体部分の木製モックアップが作製された。
両機種の開発概要説明で奈良信行技本技術開発官(航空機担当)は「デジタル・モックアップを開発に用いることで、大幅なコストダウンにつながった。国産大型機の開発は約30年ぶりだが、防衛庁、各参加メーカーの技術集積によってスムーズに開発を進めることができた」と語った。
PX、CXはそれぞれ海自のP3C哨戒機、C1輸送機の後継機として平成13年度から、世界初の大型機2機種同時開発として着手。主翼の一部や搭載機器などの共用化、設計、製造にIT技術を駆使し、2機種合わせて開発費を約3400億円に抑えている。今後川崎重工業はじめ三菱重工業、富士重工業など開発参加メーカーによる部品の製造が本格化。組み立て、強度試験を経て平成19年半ばに両機の試作1号機が初飛行する予定だ。

PXとの共用化でデジタル化されたCXのコックピット。風防のテープはワイパーの作動範囲

CXと搭載機器の共用化が図られたPXのコックピット。ヘッド・アップ・ディスプレーも搭載されている。

PX内部の非音響員席(手前)と音響員席。故障などに備え双方の機器も共用化が図られている

高さ3.8メートルのCX貨物室。野外手術システムなど大型車両も搭載可能

整備性を確認するために作られたPX用のXF7-10エンジンのモックアップ
CX後部ドア。空挺降下の際の風圧を軽減するエア・ディフレクターを設置