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師走、始動 就活・節電の冬・震災被災地

12月1日付夕刊11ページ 1社会

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真冬並みの寒さの中で、企業合同説明会の開場を待つ学生たち=1日午前、東京都中央区、森井英二郎撮影

 日本列島は1日、北から寒気が入り、師走らしく冷え込んだ。東京都心は正午でも7・4度までしか上がらず、真冬並みに。この日、学生は本格的な就職活動に突入。電力不足に備えた「節電の冬」も始まった。未曽有の災害に揺れた2011年もあと1カ月。

 ◆大学3年生、説明会へ 就活

 大学3年生の就職活動は、企業説明会などの広報活動が始まった1日が本格スタート。東京都新宿区のイベントホールでは、午前10時半から約50社の合同企業説明会が開かれた。冷たい雨の中、真新しいリクルートスーツを着た学生3千人以上が参加した。

 青山学院大3年の女子学生(20)は、開始45分前から受付に並んだ。「少しでも先に会場に入り、多くの質問をしたい」。食品業界志望だが、「いざ就活が始まると、周りのみんなが優秀そうに見えて少し不安」と話し、会場に入った。

 リクナビやマイナビなど大手就職情報サイトも1日から公開され、採用情報の閲覧や、企業への志望登録の受け付けが始まった。

 今年の就活スタートは、昨年より2カ月遅い。早期化、長期化する就職活動への大学側の反発に配慮し、経団連が採用に関する倫理憲章を変更し、経団連に加盟しない多くの企業も追随したためだ。ただ、面接など企業による選考活動は4月1日からで前年と変わらない。学生にとっては「短期決戦」だ。

 一方、就活スタートの時期に、例年は数万人の学生がひしめいていた東京ビッグサイト(東京都江東区)の様子が、今年は違う。24年ぶりに会場を東京に戻した東京モーターショー(3日から一般公開)などとかち合い、大手就職情報会社の合同説明会が、会場を横浜や千葉に移したからだ。

 マイナビが17、18日に開く合同説明会は、パシフィコ横浜(横浜市西区)を会場にする。ビッグサイトで開いた昨年10月は、2日間で約6万人が集まった。担当者は「都内最大の会場で、学生も『就活はまずビッグサイトから』という感覚だったと思う」。

 リクルートは、11日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開く。3月には、12月開催を決めたが、すでにビッグサイトは埋まっていた。

 来年はどうなるのか。モーターショーを主催する日本自動車工業会は「できれば従来のように10月中旬に開きたい」。就職情報会社側は「またビッグサイトを使えれば」としている。(峯俊一平、岩波精)

 ◆ポカポカ商品、すでに品薄 節電の冬

 各地の原発の運転停止で電力不足が心配されることから、政府は1日、沖縄を除く全国に、来年3月30日までの節電を要請した。節電を前面に出した商品が売り上げを伸ばし、一部は早くも品薄気味だ。

 東京・有楽町のビックカメラがこの冬の「節電グッズ」として押し出しているのがこたつだ。

 「布団の重ね掛けで温度設定を低くすれば、1時間あたり3円の電気代節約」と書いたポスターで、購入を促す。11月の売り上げ台数は昨年の2・5倍に。この日、売り場を訪れた東京都目黒区の男性(60)は「こたつは古くなってほとんど使っていなかったが、今年は足元を効果的に温めようと思って」。

 東京・秋葉原のヨドバシカメラでは石油ストーブやホットカーペットで品切れが続き、担当者は「今期は出足が早く、売る商品がないのは痛い」。

 岩谷産業は今秋、カセットボンベ式の屋内用ストーブを売り出した。「在庫はゼロ。生産が追いつかず、得意先にも待ってもらっている状態」と担当者は新商品の人気ぶりを語る。年内に8万台を販売予定だが、節電効果や手軽さが受け、店頭では品切れが続く。

 石油ストーブ大手のコロナは昨年比6割増しで生産を続けるが、それでも追いつかない売れ行きだ。

 下着メーカーのトリンプが売り出した男性用のカラフルな腹巻きは、年内に売り切れそうな勢いだ。家の中では敷きパッドや布団で温まろう、と流通大手のイオンが自社ブランド「ヒートファクト」で展開する寝具類は、昨年比2・5倍の売り上げという。(川村直子)

 ◆高速、全ての車無料 被災地

 東日本大震災の被災地を対象にした新たな高速道路の無料化が1日午前0時から始まった。岩手、宮城、福島3県などの路線は、被災者以外でも全車種が終日無料になる。これまでは被災証明書などの提示が必要だったが、今回からETC搭載車も対象になるため、書類の確認で料金所付近で起きていた渋滞の解消も見込まれている。

 この日、親戚の葬儀のため、東北道を利用して福島県相馬市から岩手県奥州市に行く途中だという石田清一さん(55)は「被災証明書をもっていない人も高速を使うだろうから、休日は特に混みそう」と話した。

 無料化は来年3月末まで。


就活、師走の出陣式 長期化回避、2カ月遅く 【大阪】

12月1日付夕刊1ページ 1総合

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就職合同説明会の講演を聴く学生たち=1日午前、大阪市北区、筋野健太撮影

 2013年卒業予定の大学3年生を対象にした企業の採用説明会が1日解禁された。学業への配慮を求める大学側の要請を受けて経団連が今年3月に倫理憲章を改正し、前年より2カ月遅れでの就職活動のスタートになった。

 ただ、企業の選考活動の開始は来年4月1日からとされ、前年と変わらない。学生にとっては、より短い期間で就職先を探さなければならないことになる。

 大阪市北区の梅田スカイビルでは1日、京阪神の大学生協でつくる事務局主催で、全国規模の企業約40社が参加する合同会社説明会があった。主催者によると、過去5回で最も多い約2千人が参加する予定だ。

 近畿大経済学部3年の次田雄紀(つぎたゆうき)さん(21)は、今月だけでほかに四つの合同説明会に足を運ぶつもりだ。秋以降、ネットで企業情報の収集をしてきたといい、「(就活の期間は)短くなったけれど、スタートはみんな一緒」と前向きにとらえていた。

 ●内定へ、駆け足発進 企業、ネット積極活用 

 経済が好転しないなか、大学3年生の就職活動が1日、本格的に始まった。例年より2カ月遅いスタート。大阪・キタの合同企業説明会に集まった学生らに思いを聞くと――。

 「モチベーション(やる気)を保つのが大変だった」。関西学院大文学部3年の女性(20)は2カ月遅い開始に不満を漏らした。10月から学内でエントリーシートの添削を受けるなどしてきたが、「自分で頑張る人とそうでない人の差が開いてしまうと思う」。

 一方、大阪府内の私大3年の鈴木隼人さん(21)は「所属するラクロス部の活動に秋まで打ち込めたので良かった」。

 長引く不況で、企業が採用を絞り込む傾向は続く。ただ同志社大社会学部3年の増田奈央さん(20)は「妥協せず、希望の会社に入れないなら学校に残って勉強することも考えたい」。カナダに留学した語学力を生かしたいという関西学院大総合政策学部3年の萬成(まんなり)美帆さん(21)は「日本はものづくりが強い国。それを支える仕事に携わりたい」。

 企業側も広報期間の短縮で学生との接点が減りかねない。住友電気工業(本社・大阪市)は11月初め、就活学生向けの情報を発信するページをフェイスブックに開設。各部署の社員が「こっそり本音をつぶやく」というコンセプトの短い動画を1日1本ずつ掲載し、仕事の中身や失敗体験なども紹介している。

 広報担当者は「学生の間ではインターネット上の交流サービスの利用が盛ん。広報期間が短くなった分、目につきやすい方法をと考えた」と話している。

 大手就職情報サイトを運営するマイナビ(東京)によると、相変わらず厳しい状況にあるとはいえ、企業側の採用意欲は増している。求人する中小企業も増加傾向にあり、大阪労働局は「優良な中小企業へも目を向けて」と話している。

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