web.archive.org

角川グループホールディングス KADOKAWA通信 2008秋号

角川グループのアジア事業と今後の展望

「ケロロ軍曹」
香港でも大人気の「ケロロ軍曹」
劇場公開時ポスターと現地語でのコミック

[香港]角川ホールディングスチャイナ取締役、角川インターコンチネンタルグループCOO、角川インターコンチネンタルパブリッシングアジアCEO、新華角川影業香港取締役[台湾]台湾国際角川書店総経理
塚本 進

■香港、台湾でどのような事業を展開しているのですか?

塚本 進

 今から10年前に、台湾で出版社を立ち上げました(現:台湾国際角川書店)。情報誌Walkerシリーズの初の海外版となる「台北Walker」の創刊、そしてコミックや小説の中国語版の出版をメインとする会社です。角川グループは日本で数多くのコンテンツを生み出し、それを出版、映像、雑誌、ネット等様々なメディアで活用していくビジネスを展開してきましたが、このメディアミックス型ビジネスを台湾でもチャレンジしてみることになったわけです。そして、台湾での成功により、次のステップとして香港から中国大陸を見据えることになりました。2005年秋に、香港で2つの事業を立ち上げました。一つは、香港の映画会社インターコンチネンタルグループの買収です。このグループは約40年前に設立された老舗映画会社で、今ではディズニー、パラマウント、ドリームワークスの作品を独占配給、また香港・中国に7つの映画館を所有し、さらにはビデオ、ゲームソフトを販売するなど、多角的な映像企業へと成長しています。
 もう一つの事業は、香港大手コングロマリット企業の新華グループとの合弁会社設立です。ここでは、中国大陸における映画館(シネコン)開発とその運営をメインとした事業を進めています。今年末までに北京で2サイトオープンする予定で、準備を急ピッチで進めています。両事業に共通するのは、他社の買収や共同事業を通じて、角川コンテンツそのものや角川グループが日本で培ってきたビジネスノウハウを投入し、海外パートナーの強みとシナジーを最大化していることです。香港では、昨年から出版事業も立ち上げました。主な事業は、台湾で制作したコミック、ライトノベルの中国語版輸入販売と情報誌「香港Walker」の発行です。香港でも、映像と出版のメディアミックス型ビジネスが始まりました。
 こうして見ますと、台湾で始まった角川コンテンツビジネスが香港につながり、そして大陸へと歩を進め、グレートチャイナが視野に入ってきました。「アジア」のメガコンテンツプロバイダーを目指す基盤が出来上がってきたと感じています。

■現地スタッフの方はそれぞれどのくらいいらっしゃるのでしょう

 台湾国際角川書店には約80名のスタッフがいます(日本からの駐在員は1名)。また香港オフィスですが、映像会社には約200名、管理部門や出版会社には約40名のスタッフがいます(日本からの駐在員は3名)。

■商慣習、文化、習慣の違いから苦労されていることはありますか?

 たくさんあります(笑)。台湾、香港、大陸、国によって仕事への考え方、取り組み方が全く異なります。言葉は違いますし(香港は広東語・英語、台湾・大陸は普通語)、文化、慣習も異なりますから、一人一人、サポートやケアの方法を考える必要があります。香港では、日本とは比較にならないほど人材流動が激しいので(他の日系企業も同じ悩みを持っています)、いかに長く勤めてもらえるかを考えることもマネージメントの重要な課題の一つとなっています。さらに、現地の優秀な人材を探し、出来るだけ多くのローカルの幹部を育成することが現地の発展のポイントだと考えています。

■日本のコンテンツは現地でどのように受け止められていますか?

 台湾や香港では、日本のアニメや映画が放送や上映され、書籍もコミック、小説など幅広く販売され、とても人気があります。最近ではネットの普及もあり、日本の最新情報が時間差なく手に入りますから、マニアックなファンも増えているように感じます。今年8月に香港、台湾でコミックやアニメを中心とした大型フェアが開催されましたが、ここでも角川グループのコンテンツは大人気でした。着実にファンは増えていると思います。

■人気のあるジャンル、作品名、キャラクター名はなんでしょう?

 日本で人気が高い作品は台湾、香港でも認知度が高く、人気があります。なかでも、子供から大人まで知られているのは「ケロロ軍曹」です。今年も映画「ケロロ軍曹3」を公開しましたが、出版物との連動もうまくいき、良い結果となりました。そして、台湾、香港で絶好調の“ライトノベル”にも注目です。「涼宮ハルヒの憂鬱」「灼眼のシャナ」「狼と香辛料」は中文版のセールスが好調で、コミックフェアで販売するグッズもすぐに売り切れるほどの人気です。これまではコミックが出版事業の柱でしたが、現在はライトノベルも収益の要として大きく成長してきています。
 また、香港では、日本で大人気のアニメ、コミック「らき☆すた」のメディアミックス展開がスタートし、8月のコミックフェアでコスプレショー等のプロモーションを行い、大好評でした。

■最後にこれから取り組まれる新しいジャンル、事業について

 先述した通り、これからは中国大陸への進出が大きな目標となります。中国は政府の規制が未だ強く、海賊版やネットでの違法アップロードの横行も深刻な問題です。これでは、大々的なプロモーションが出来ませんし、また大陸の人々がお金を払って正規品を購入するという慣習自体が広がりません。角川グループだけでなく他の日本コンテンツ企業にとってもハードルが高い状態が依然継続していますが、一方で、マーケットの大きさは無視するわけにいきません。
 一方で香港政府と中国政府とで交わされている経済貿易緊密化協定(CEPA)の存在で、外資企業が香港から中国大陸へ進出する環境、制度が改善されてきました。また、日本のコンテンツ企業とパートナーシップを組むことで、日本の豊富なコンテンツやノウハウを活用していきたいという大陸企業が増えるとともに、それを支援しようという中国政府の気運が高まっていることも事実です。
 これらの状況を迅速に、正確に把握し、最適な事業を考えることが重要です。日本のコンテンツを送り出すだけでなく、中国大陸で、市場のニーズに合ったオリジナルコンテンツを製作するノウハウを蓄積していくことも考えていきたいです。
 また、日本、台湾、香港の情報誌Walkerで培った都市情報を使った事業展開も、市場の大きい大陸では十分なポテンシャルを感じています。現在、香港オフィスを中心に、大陸のネット企業や出版社、TV局等へのアプローチを進めています。また、先に触れました、北京でのシネコンオープンも中国事業の大きな起爆剤になると確信しています。
 日本そして台湾、香港での経験を生かしながら、中国大陸を中心としたグレートチャイナで、コンテンツクリエイター+プロバイダーのリーダーになれるよう、スタッフ一同チャレンジしていきます。株主の皆様からの温かいご支援を宜しくお願い申し上げます。


Copyright All rights reserved. KADOKAWA GROUP HOLDINGS. INC.
角川グループホールディングスページに掲載されている全ての画像、文章のデータについて、無断転用・無断転載をお断りいたします。