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Research of Image Media / Computer Graphics Lab.,

コンピュータグラフィックス研究紹介

2012年度

手持ちカメラによる実画像列からの非中心投影レンダリング
2012年修士論文,研究実施:立野 翔平
近年,通常の透視投影(中心投影)では得ることのできない,対象物体を複数の方向から見たような画像をCGレンダリングする技術が研究されています. このような単一の視点では得ることのできない画像を非中心投影画像と呼びます. 従来研究ではCGモデルを変形させることで非中心投影画像の効果を再現していましたが,実物体に適応する場合には3次元形状を取得する必要があります. 実空間ベースのレンダリング手法に光線空間法があり,通常はカメラを格子状に並べたカメラアレイなどの装置を用いて撮影が行われます. 本研究では実物体を対象とした非中心投影画像の生成を目的とし,実空間の3次元形状およびカメラアレイなどの大規模な装置を必要としない特徴があります. レンダリング手法には光線空間法を用い,手持ちカメラによる実画像列を入力とします. 光線空間は視点(カメラ)の位置姿勢を用いて構成されるため,トラッキングソフトウェアにより画像列の視点位置情報を取得します. レンダリングの際,線形補間による平滑化を行うことにより,鮮鋭な非中心投影画像が生成できました.
多重散乱光を考慮した画像生成に基づく関与媒質の散乱特性の推定
2012年修士論文,研究実施:石丸 功一
関与媒質とは、雲・牛乳・石鹸のように媒質内部の微粒子によって,光が何度も散乱する多重散乱光を媒質内部で発生させる物質のことです.実物体の関与媒質をコンピュータグラフィックスで忠実に再現するには実物体の散乱特性などの散乱特性を推定する必要があります.本研究では,最初に関与媒質をハイダイナミックレンジカメラで撮影し,実写画像を作ります.次に実写画像と同じシーンで関与媒質を様々な散乱特性でレンダリングを行います.レンダリングには,関与媒質を物理的に正しくレンダリングできるフォトンマッピング法を使用しました.これにより,得られた複数枚の生成画像と実写画像を比較し,実写画像に最も一致する生成画像を求めます.この生成画像で使用された散乱特性が推定結果とすることで散乱特性の推定を行いました.これにより,従来手法では推定不可能であった複雑な形状を持つ関与媒質の散乱特性の推定が可能となりました.
イメージベーストライティングにおける光源サンプリング手法の評価
2012年卒業論文,研究実施:春田 啓裕
近年では,実写画像を元にCG の生成をするアプローチを用い,画像から物体を照らす光の情報を復元するイメージベーストライティングという手法が研究されています.この手法では点光源による近似手法がいくつも提案されています.点光源による近似ではHDR環境画像から光源となるピクセルをサンプリングし,結果として得られたピクセル位置の極座標を求めることで光源位置の推定を行います.この手法を同一シーンで用いた際の差異が明確ではないため,シーンに適した手法の選択が困難です.そこで本研究では点光源での光源近似手法の比較評価を行いました.結果として,用いた手法の中でそれぞれの手法の特徴を考察し,求積法によるサンプリングが最も良い結果を得ることができました.
チルトシフトレンズの被写界深度効果のCGによる再現
2012年卒業論文,研究実施:中根 智絵
CGが実写に近づくためには,実際のレンズを基にしたカメラモデルの用いる必要があります.チルトシフトレンズは撮像面に対してレンズを傾けることによって合焦面を傾け,被写界深度内に入る範囲をコントロールできるレンズです.今までのCG上のカメラモデルでは,ぼけの大きさや範囲を変えたいとき被写界深度を変える必要がありましたが,チルトシフトレンズの効果を用いれば被写界深度を変えることなく実現することができます.通常のレンズでは撮像面とレンズと合焦面は平行ですが,合焦面を床と平行にしたり,垂直にしたりすることで異なる生成画像が得られました.CG上ではレンズの口径を任意に大きくすることができ,それによってぼけを大きくすることが可能です.チルトシフトレンズの効果を用いれば,口径を変えずにぼけの大きさを変えられるだけでなく,合焦する位置もコントロールすることができました.
グラフカット法によるシームレスBTF画像の生成
2012年卒業論文,研究実施:大下 淳平
視点によって変化するテクスチャをイメージベースドレンダリングによって表現する手法として,視点依存テクスチャマッピングがあります.しかしテクスチャをつなぎ合わせる継ぎ目に違和感が生じるという問題があります.そこでグラフカット法を用いることを提案しました.しかし視点依存テクスチャを用いる場合,視点の変化に応じて画像の切り替えを行う際に継ぎ目が変化してしまい,見え方の時間的な連続性が欠けてしまうという問題があります.また,レンダリング時間を考慮するとグラフカット法を反復することは現実的ではありません.本研究では,視点依存テクスチャであるBTFを走査し,画素ごとに輝度変化の統計量を取ることでBTF全体に平均的に違和感の少ない継ぎ目の生成を行いました.BTFの平均値または分散値から統計量画像を生成し,それを用いてグラフカットすることで継ぎ目を決定します.その継ぎ目により,視点が変化してもシームレスにテクスチャ合成をすることができました.

2011年度

頂点シェーダによる多視点合成画像の実時間レンダリング
2011年卒業論文,研究実施:伊藤 徹弥
近年,通常の透視投影では得られない複数の視点から見た物体を一枚の画像に合成した多視点合成画像をコンピュータグラフィックスでレンダリングする技術が研究されています.従来,多視点合成画像は複数の視点から各視点間のレイを計算し,様々な手法で補間することでレンダリングされてきました.しかし,レイの補完には時間がかかります.そこで本研究では頂点シェーダを用いることで,レイの補完を用いずに多視点合成画像を実時間で生成する手法の提案を行いました.本手法では複数の視点から通常の透視投影をすることで複数の透視投影像を得,それらの視点と投影像の位置を利用した加重平均をとることで多視点合成画像の生成を行っています.これにより,従来とは異なり通常の透視投影と同等の速度でのレンダリングが可能となりました.
簡易多層モデルを用いたメタリック塗装の再現
2011年卒業論文,研究実施:中原 なつみ
メタリック塗装は,自動車や携帯電話などの工業製品の塗装に多く用いられるようになり,そのメタリック塗装をCG上で再現することで,製品の開発やデザインなどを支援することができます.しかしメタリック塗装に含まれる光輝材の微細な形状や配置を正確に測定しCG上で再現することは,多くのサンプルからのデータが必要となり非常に困難です.そこで本研究では,シェーディング言語を用いた簡易多層モデルにより,少ないデータとパラメータからメタリック塗装の再現を行いました.本研究ではメタリック塗装を,物体の表面にカラー層,光輝材層,クリア層を施したものとします.カラー層では,鏡面反射モデルと拡散反射モデルを用いて,塗装の下地の色を表現しました.光輝材層では,鏡面反射モデルとバンプマッピングを適用することで面法線の向きを変更させ,擬似的に光輝材の表現を実現しました.クリア層では,鏡面反射モデルを用いてハイライトを表現しました.実験結果から,生成モデルの各パラメータの値を変更することで光輝材による反射の効果を表現できることが確認できました.
メタメリズム生起のための分光輝度のHDR計測
2011年卒業論文,研究実施:中村 一貴
近年,チョークアートやネイルアートといった新たなアートが誕生しています.そこで,メタメリズムを制御することで新たなアートの作成を目指しました.メタメリズムとはある光源では同じ色に見える二つの物体が,違う光源では異なる色に見える現象です.この現象の制御は光源と物体のスペクトルデータを用いることで行いますが,ハイパースペクトルカメラで取得したままのスペクトルデータはノイズや検出範囲の限界により,正確なデータとは言えません.よって露光を変えた複数のスペクトルデータを取得し,それらを最小二乗法を用いてHDR合成することで,より正確なスペクトルデータを取得しました.これにより,取得時のままのスペクトルデータを用いた場合よりもはっきりとしたメタメリズムの生起に成功しました.
幾何学的統計量に基づく3次元形状鮮鋭化フィルタの最適化
2011年卒業論文,研究実施:横溝 将成
本研究では3次元形状データに対してバイラテラルフィルタでのノイズ除去を行い,LoGフィルタを用いて鮮鋭化を行います.3次元形状の先鋭化は,風化してなめらかになってしまった文化財を3次元計測し,それをもとに制作当時の形状を推定することに利用されます.鮮鋭化の際のパラメータにより出力結果の精度が大きく変化するため,最適な鮮鋭化を行うためのパラメータの推定が本研究の目的となっています.最適なパラメータの推定方法として,本研究では対象となる風化した文化財と同年代,または同じ作者の文化財で,エッジが良好に残ったままものを計測し,よりそのエッジ部分の鮮鋭度に近づくようにパラメータを推定することで可能となります.本実験では2つの角材を用意し,1つの角材の角をなめらかにしたものの3次元データをもう1つの角材の形状に近づくように鮮鋭化を行いました.結果として,図のように鮮鋭化後の形状が元の角材の形状に近い形状に変化しました.

2010年度

カメラ較正法に基づく原爆きのこ雲の形状推定
2010年修士論文,研究実施:小川文夫
1945年,広島と長崎に投下された原子爆弾は多大な被害をもたらし,今なお多くの人々がその後遺症に苦しんでいます.被災地域は正確に特定されておらず,補償を受けられていない被爆者も多く存在しています.特に,きのこ雲から降った黒い雨に関しては,実際に降った地域よりも狭い範囲しか認定されていません.その一因として,きのこ雲の高さが正確に推定されていないことが挙げられます.本研究ではカメラ較正法(カメラキャリブレーション)に基づいて,きのこ雲の写った写真から海岸線や水平線を元に,写真が撮影された位置の推定を行いました.また,推定された視点位置などの情報から,雲の形状を扁球により近似し,推定された形状から雲の高さや幅を求めました.推定された数値は観測における誤差を含んでいるため,統計的手法を用いて有意検定を行うことにより,観測誤差や雲の位置の変化に伴う高さや幅の最小値・最大値を求め,現存しているきのこ雲の写った写真における時系列変化の推定を行いました.
多重散乱光を考慮した関与媒体のレンダリング
2010年卒業論文,研究実施:石丸功一
煙・霧・雲・炎・塵の充満した大気などの自然現象では,一定の領域を満たしている微粒子によって,光の吸収・散乱が何度も起こります.また,濁った水晶などの完全に透明でもなく不透明でもない物体でも,物体表面から物体内部に入り込んだ光は,物体内部で散乱を繰り返し起こします.このように物体内部で光の吸収・散乱が繰り返される物体は『関与媒体』と呼ばれます.したがって,関与媒体を物理的に正しくレンダリングするには物体内部での複雑な光の散乱と吸収を計算することが不可欠です.しかし,物体の散乱特性にあった散乱した光を物理的に正しく再現するには,複数のパラメータを散乱特性にあわせて設定する必要があります.このことが,関与媒体のレンダリングを容易にできなくしている要因の1つになっています.そこで,本研究では物体内での散乱の特性を表すパラメータが関与媒体のレンダリングに与える影響について調べました.
光線空間法を用いた実写画像からの非中心投影レンダリング
2010年卒業論文,研究実施:立野翔平
本研究では実物体を対象とし,実写画像を用いて,その実物体を複数の視点から見たような画像を生成しました.背景として,多視点絵画のような画像の歪みについて,単一の物体を多方向から見ることが,変形させた空間にある物体を一方向から見たことに等しいという考えにより空間の変形として解釈を行うことをCGモデルを用いた研究があります.実空間のCGモデルデータすべてを得ることは難しいので,実写ベースのレンダリング手法のひとつである,光線空間法を用いました.光線空間法は,あるシーンをレンダリングするとき,予めシーン中を飛び交う光線を視点位置情報を用いて計算しておき,それらの光線の中からその視点に届く光線を取り出し画像平面上に並べるというものです.通常の光線空間法では,カメラを格子状に並べたカメラアレイ等の装置を用いるのに対し,本研究では視点位置が既知でないカメラから撮影された画像を用います.本研究では知能工学のアプローチとして,写真を用いて写真のような絵画を描くスーパーリアリズム絵画が描かれるまでのメカニズムの解析の一助になると考えています.
メタメリズム生起のためのスペクトル解析に基づく顔料調合
2010年卒業論文,研究実施:平松実佳
近年,チョークアートやネイルアート,サンドアート,トリックアートといった新たなアートが誕生しています.また,それらは注目され,町おこしに役立っているものもあるといいます.そこで本研究ではメタメリズムの特性を用いた新たなアートを作成したいと考えました.メタメリズムとは,ある特定の光源下で同じ色に見えるものが,それ以外の光源下では異なる色に見える現象です.複数の光源の中から2種類の光源を選択し,その光源下でメタメリズムの生起する2色を探索する手法を提案します.2色は三刺激値の差を用いて探索し,油絵の具を調合することによって作成します.手法を用いて実験を行った結果を図に示します.左図が赤い光源を照射している状態,右図が黄色の光源を照射している状態です.赤い光源下では2色が同じ色に,黄色の光源下では異なる色に見えることを確認しました.
画像劣化に頑健な位置合わせ手法に基づく原爆きのこ雲動画像のモザイキング
2010年卒業論文,研究実施:松丸寿子
アグニュー映像は,広島に投下された原爆により生じたきのこ雲の様子を撮影した貴重な動画像ですが,航空機から撮影を行ったため,手ブレ,露光ブレが生じています.きのこ雲の高さや幅,位置などを解析するため,本研究室では動画像から一定の間隔で静止画を抽出し,各画像の 雲の位置を合わせ,広範囲が写った静止画を生成しました.しかし,位置合わせの際のズレや露光ブレした画像の影響により静止画にはぼやけが生じてしまいました.本研究では露光ブレした画像を取り除き, 雲の位置合わせの精度向上による鮮明な静止画の生成を目的としています.位置合わせにおいては,2 枚の画像の類似度が最も高くなるよう,テンプレートマッチングで粗い位置合わせを行い,さらに非線形最適化でより細かな位置合わせを可能にしました.位置合わせの精度の良い画像を用いて,モザイキングにより画像を繋ぎ合わせ,空や地面,鮮明な雲など広範囲が写った 1 枚の静止画を得ることができました.
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