忘れない みなさんのことを 京アニ事件2年で追悼式:朝日新聞デジタル
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- ️Sun Jul 18 2021
京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)が放火され、36人が亡くなった放火殺人事件から18日で2年となり、現場で追悼式が開かれた。
更地となったスタジオ跡地には式場となる白いテントが張られ、遺族や関係者らが犠牲者を悼んだほか、遠くから祈りを捧げるファンの姿も見られた。
午前9時40分ごろ、京アニの八田英明社長が追悼式場に到着した。その直後、マイクロバスで現場に着いた遺族らが続々と式場内に入った。
京アニなどによると、式には26家族68人の遺族と同社関係者ら、計約70人が参列した。事件が起きたとされる午前10時35分から参列者全員で1分間黙禱(もくとう)した。
その後、遺族代表と八田社長がそれぞれ弔辞を述べた。参列者からは、時折すすり泣くような声も聞かれたという。
社長「守れなかったこと、本当に申し訳ない」
八田社長は、「(事件前は)毎朝のあいさつから日常が始まった」と振り返り、「今はもう聞くことが出来ません。本当に悲しいです。私たちは毎日、口には出しませんがそんな思いを抱いて日々過ごしています」と思いを吐露した。
「筆舌に尽くしがたい本当に悲しい事件」と振り返り、「皆さんひとり一人に、守れなかったことを本当に申し訳なく思っています。心から謝罪いたします」と述べた。
会社の現状については「まだまだ新作を作る制作力、技術には時間を要します。当面は皆で基礎を作った作品を続けていく予定です。私たちは、皆さんの思いを大事にして、少しずつですが歩み始めています」と報告した。そして「あなたたちを忘れることはありません。いつも心の支えです。どうぞ温かく見守ってください」と続けた。
その後「追悼」と書かれた祭壇に参列者が一人ずつ順番に白い菊を献花し、祈りを捧げたという。
昨年9月に公開された「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」で監督を務めた京アニ取締役の石立太一さんもあいさつに立った。
2年たっても「ふと思い出して胸を締め付けられる」と心中を明かし、「皆さまに愛され、その思いを抱いて頑張っていた皆の思いを後世に残していきたい」と語った。
式は午前11時10分ごろに終了し、遺族らはマイクロバスで現場を後にした。(高木智也、華野優気)
「自分たちのできることを」新人スタッフがコメント
京都アニメーションは18日の放火殺人事件2年の追悼式に合わせ、「入社1年目のスタッフの気持ち」として、1年目スタッフの総論だとするコメントを発表した。
「事件を経験した先輩社員と事件後に入社した自分たちでは、事件に対する認識、気持ちの面で違いがあると感じています。また、新入社員の中でも捉え方は一様ではありません。しかし、前を向いて作品をつくっている先輩たちの姿を見て、受け継がれてきた歴史や作品づくりへの想(おも)いを自分たちが引き継ぎ、未来へつないでいきたいと思っているのは、皆同じです。これまでは京都アニメーションの作品を一人のファンとして受け取ってきましたが、これからは京都アニメーションの社員として、ファンの皆様へアニメーションを届けていきたいと思っています。そのために自分たちにできることを精一杯(せいいっぱい)取り組んでまいります」
「ただ、ただ、会いたい」 遺族らが動画でメッセージ
京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件から2年を迎え、京アニは18日、事件発生時刻に合わせて午前10時半からユーチューブの京アニ公式チャンネルで追悼映像を配信した。映像は約10分で、1分間の黙禱(もくとう)の後、遺族や京アニのスタッフらのメッセージを匿名で紹介した。映像は終日公開される。メッセージは次の通り。
関係者より
日々の仕事をする中で、
皆さんのお名前が自然と会話に出ます。
今でも私たちは皆さんと一緒に物作りをしているのです。
直接お話することは出来ませんが、
心の中で会話をしています。
こういうときはどうしたら良いですか?
こういう悩みにはどう向き合えば良いですか?
自然と会話しています。
皆さんの想いは、今でも私たちの中に息づいています。
皆さんの存在。皆さんが残してくれた志。
今でも、私たちを支えてくれています。
私たちをどうかこれからも見守ってください。
皆さんに自慢出来るような物作りをします。頑張ります
ご家族さまより
ずっと続くと思っていた日常
夢に満ち溢れていたあなたの未来
すべてが消え去ったあの日から2年
あなたのことを考えなかった日は1日もありません
浮かんでくるあなたの笑顔とともに
込み上げる喪失感
悲しくて
寂しくて……
どんなに時が流れようとも涙は止まらず
愛おしさは増すばかり
あの日から
雨が突然止んだ瞬間(とき)
雲の間から光が差した瞬間(とき)
爽やかな風が吹いた瞬間(とき)
あなたが奇跡を起こしてくれているのでは
と思ってしまいます
それでも会いたい
ただ、ただ、会いたい
あなたに会いたい
叶わぬ事だとわかっていながらも
あの日からずっと願い続けています
想いを寄せてくださっている全ての皆さまに
心より感謝申し上げます
スタッフより①
季節の中で、街角で、生活のあらゆる場所に皆は存在し、
私たちを励まし支えてくれています。
困難にぶつかった時は
あなたの頑張る姿を思い出しては自分を奮い立たせ、
綺麗な青空の日には
あなたが喜んでくれているようで心が温かくなり、
思い出の場所に立てば
一緒に過ごした日々が溢れ出てきます。
皆の想いは作品にのり、
これからも世界中のたくさんの人に
届けられることでしょう。
どんなに時が経とうが皆との絆は変わる事はなく、
想いは繋がり紡がれていきます。
どうか私たちを見守っていてください。
スタッフより②
あれから2年の歳月が経ちました。
寂しさや、悲しみが癒えることはありません。
今でも在りし日の皆さんの姿や声を思い出しながら
日々を過ごしています。
技術の研鑽に励んだ日々、
作品に向き合い語り合った日々。
もの創りを通じて世界中の皆さまに感動を届けるべく、
一緒に未来を作り上げていくと信じていた大切な仲間が
今ここにいないことが何よりも辛く、
胸が張り裂ける思いです。
心から叫ばせてください。
皆さんに会いたいです!
もっと語り合いたかったです!
声を直接聞くことは叶いませんが、
皆さんの“想い”はいつまでもわたしたちと共にあります。心の会話を交わしながら、
これからも一緒に作品を創り続けていきましょう。
今までもこれからもずっと仲間でいさせてください。