朝日新聞社 -「イタリア映画祭2012」- 作品情報
[2010年/104分] 監督:パオラ・ランディ(Paola Randi)
ナポリのスリランカ移民街を舞台に、イタリア人とスリランカ人の奇妙な友情と協同がコミカルに描かれる女性監督ランディの長編デビュー作。ガヤンは希望を胸に、スリランカからイタリアに渡って来た。けれども、クリケットの名選手として祖国で味わった栄光とはかけ離れた現実を前に、早々に帰国を望む。一方で、科学者の職を失ったアルフォンソは、再就職のために怪しい依頼を引き受ける。だが、トラブルに巻き込まれ、偶然に逃げ込んだ先はガヤンの仮住まいだった。
[2010年/102分] 監督:ルーチョ・ペッレグリーニ(Lucio Pellegrini)
昨年の映画祭で上映された痛快な喜劇『星の子どもたち』のペッレグリーニ監督が、友情や恋愛、陰謀や裏切りがないまぜになった物語に、ユーモアをまぶして味わい深いドラマに仕上げた。ケニアの僻地で医療に従事するルカに、名うての医者で親友のマリオがローマから加勢しに来る。現地になかなかなじめないマリオだったが、二人は親交を温める。だが、マリオがローマに残してきた妻が突然ケニアにやって来たことから、三者それぞれの思惑が明らかになっていく。
[2011年/90分] 監督:ジャンニ・ディ・グレゴリオ(Gianni Di Gregorio)
好評を博したデビュー作『8月のランチ』(2008年の東京国際映画祭で上映)に続くディ・グレゴリオ監督の軽妙な喜劇。退職して主夫になった中高年のジャンニが日々することといったら、妻や母たちから命じられる雑用と、ローマの街を犬と一緒にする散歩ぐらいで、ぞんざいに扱われていた。親友の情事を知り、近所の年寄りと若い女性の抱擁現場を目撃したジャンニは、人生に潤いを取り戻すために恋人を見つけようとするのだが…。11年ベルリン国際映画祭特別招待作品。
[2011年/110分] 監督:アンドレア・モライヨーリ(Andrea Molaioli)
『湖のほとりで』が日本でもヒットしたモライヨーリ監督が、前作に続いて名優トニ・セルヴィッロを主演に迎えた2作目。イタリアのとある大手食品メーカーにもグローバル化の波が押し寄せるが、身内を中心に固められた家族的な経営では太刀打ちできない。負債は膨らむばかりで、ありとあらゆる手段を取ることになるが…。実際に起こった事件から創作されたということもあってドラマは生々しく、老獪な会計係役を演じるセルヴィッロのいぶし銀の演技も光る。
[2011年/100分] 監督:アリーチェ・ロルヴァケル(Alice Rohrwacher)
思春期の少女がとまどいや葛藤を抱きつつも自分なりの生き方を見つけていく歩みを、繊細な演出と瑞々しい映像でたどる女性監督ロルヴァケルのデビュー作。13歳のマルタとその家族はスイスから10年ぶりに帰国し、南イタリアのレッジョ・カラブリアに再び住み始める。カトリックの儀式を受けるために、マルタは教会の日曜学校に通うが、その世界になかなかなじめないでいた。本作は、昨年のカンヌ国際映画祭監督週間に選ばれたのをはじめ、数多の映画祭で上映されている。
[2011年/103分] 監督:ジャンルカ&マッシミリアーノ・デ・セリオ(Gianluca e Massimiliano De Serio)
昨年のマラケシュ国際映画祭で審査員長だったクストリッツァ監督から絶賛され、最優秀演出賞を受賞したデ・セリオ兄弟の長編第1作。トリノ郊外に生きる不法移民のルミニツァは、喉から手が出るほど欲しい身分証明書との引き換えに、赤ちゃんを盗むことにする。その過程で末期の病人であるアントニオの家に押し入るが、計画は当初とは異なる方向に進んでいってしまう。研ぎ澄まされた映像と音響のもと、現代社会における寄る辺なさとともに希望も浮き彫りにされる。
[2011年/109分] 監督:ダニエーレ・ガッリャノーネ(Daniele Gaglianone)
1970年代後半、北イタリアの町はずれに、優秀な医者が赴任する。尊敬の念で見る大人たちだったが、子供たちの目に映るのは全く違う姿だった。やがて、凶悪な事件が連続して発生、少年少女の三人に大きなトラウマを残すことになる。30年後、大人になった彼らははたして…。フィリッポ・ティーミ、ステファノ・アッコルシ、ヴァレリオ・マスタンドレアが出演。鬼才ガッリャノーネ監督がスターとタッグを組んだ意欲作は、昨年のヴェネチア映画祭で高く評価された。
[2011年/88分] 監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ(Emanuele Crialese)
漁業が衰退の一途を辿るシチリアの離島で、20歳のフィリッポは、漁師だった亡き父の後を継いだ。一方で、島から出て行くことを夢見る母は、観光業で当座の生活をしのごうとする。だが、フィリッポと祖父が海上で遭難していたアフリカ難民を救ったことから、事態は一変する。雄大なシチリアの海を背景に、未来に向かって生き抜こうとする人々を力強く映し出した本作は、昨年のヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞、本年の米アカデミー賞イタリア代表にも選ばれた。
[2011年/95分] 監督:フランチェスコ・ブルーニ(Francesco Bruni)
ヴィルズィ監督の作品やモンタルバーノ警部シリーズの脚本を手掛けてきたブルーニの初監督作にして、ハートウォーミングな喜劇。かつては教師だったがやる気をなくした中年のブルーノは、著名人の自伝のゴーストライターや家庭教師の仕事で、適当に暮らしていた。ある日、教え子のルカの母親が急に現れ、ルカは彼の息子だという驚愕の事実を明かし、その上しばらく預かってくれと言うのだった。11年ヴェネチア国際映画祭コントロカンポ・イタリアーノ部門の受賞作。
[2011年/98分] 監督:イヴァン・コトロネオ(Ivan Cotroneo)
脚本家(『明日のパスタはアルデンテ』『ミラノ、愛に生きる』)、作家、翻訳家と多才なコトロネオの初監督作。1970年代のナポリで、大家族の浮き沈みが笑いに包まれながらしっとりと物語られる。9歳のペッピーノには、自分がスーパーマンだと信じている風変わりな従兄がいた。ちょっと騒々しくも微笑ましい家族だったが、従兄が突然亡くなってしまう。調和は崩れ始め、ペッピーノは先行き不安な生活に向き合うことになる。11年ローマ国際映画祭コンペ部門出品。
[2011年/97分] 監督:リッキー・トニャッツィ(Ricky Tognazzi)
俳優としても活躍するベテランのリッキー・トニャッツィ監督が贈る、心温まる中年の恋愛劇。55歳のジュゼッペには妻と一人娘がいたが、宗教にはまった妻とは冷え切った仲になり、幸せとはいえない結婚生活だった。ジュゼッペを心機一転させようと、親友のナポレオーネは、自身もメンバーである町の合唱団に誘う。そこでジュゼッペは美しくて歌が上手い中年女性のエリザに一目惚れし、合唱団に加わることになる。エリザ役は、ステファニア・サンドレッリ。
[2010年/399分] 監督:ジャンルカ・マリア・タヴァレッリ(Gianluca Maria Tavarelli)
名作『輝ける青春』のスタッフが再結集し、6時間超にわたってイタリアのある家族の「今」を紡ぎ出す感動作。高校生の息子の突然の死をきっかけに、入院、大学卒業、転勤と、大きな家から両親と3姉弟は一人ずつ去っていき、それぞれが新たな出会いに導かれていく。現代を生きる一組の家族の離別と再生の壮大な物語を通して、今日的な家族とは何なのか、決して変わることのないものとは何なのかが描かれる。今夏、岩波ホール他全国順次公開。
[2011年/104分] 監督:ナンニ・モレッティ(Nanni Moretti)
ローマ法王死去。この一大事を受け、新法王選出のためヴァチカンに集まる各国の枢機卿たち。彼らは全員、心の中で必死に祈りを捧げていた。「神様、一生のお願いです。どうか私が選ばれませんように」。そして新法王に選ばれてしまったのが、ダークホースのメルヴィル。彼は大観衆を前に演説をしなければならないが、あまりの緊張からローマの街に逃げ出してしまい…。巨匠モレッティが描く、法王版・ローマの休日。7月、TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開。
[2011年/96分] 監督:アンドレア・セグレ(Andrea Segre)
中国に残した一人息子をいつか呼び寄せることを胸に秘めつつ、ヴェネチア近くの町、キオッジャの居酒屋で店員として働く移民のシュン・リー。男ばかりの職場と拙い語学力で孤独だったが、スラブ系移民で年配の「詩人」ことベピに出会い、打ち解けていく。詩情が漂うラグーン(潟)の風景とともに、育った環境も年も異なる男女の心の交流を慎ましやかに描いた本作は、昨年のヴェネチア映画祭で称賛された。チャオ・タオがシュン・リー役を好演。今冬公開予定。
※上映作品はイタリア側の都合により、変更の可能性があります。
※上映作品はこの映画祭のために輸入するプリントのため、英語字幕などが入っている可能性があります。