【東京五輪】 360度バックフリップ、イギリスBMXに金をもたらしたワージントンの大技 - BBCニュース
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- ️Thu Aug 05 2021
2021年8月5日
クリス・オズボーン、BBCスポーツ
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5年前までブリトーのロールを作っていたシャーロット・ワージントン(25)が、東京オリンピックの自転車BMX女子フリースタイルで大技を決め、BMX史上に残る輝かしい実績を残した。
「360度バックフリップ」は、女子フリースタイルでまだ誰も成功したことのない大技だった。この日までは。
最初の挑戦でデッキに衝突したわずか30分後、ワージントンは2度目の挑戦でこの技に成功。自転車と体は空中でジャイロスコープのように回転し、タイヤが地面に着地した。
BBCスポーツの解説者で、自らもBMX選手として多数の技を編み出したジョン・テイラーは、「シャーロットはパンドラの箱を開けた。しかもレベルが違う。これで一気に流れが変わった」と絶賛する。
ワージントンの目覚ましい活躍のおかげで、イギリス勢がBMXで獲得したメダルは金2個、銀1個、銅1個になった。
かつてマンチェスターのレストランで働いていたワージントン。360度バックフリップについて「素晴らしかった。私はあの技を長いことやっていなかったけれど、私たちは決め技を見つけようとしていて、あれを見つけたときは『まさにこれだ』と思った」と振り返る。
「目標は金メダルに定め、やるからには大胆にやろうと決めた」
だが実際に成功させるのは、説明するより難しい。
テイラーは「普通のバックフリップなら、ジャンプしてそのままバックフリップする。360度バックフリップの場合、軸をそらして360度逆さまになる」と解説する。
「1回目の挑戦は、もっと悪いことになっていた可能性もある。あの技で大けがをした人をたくさん見てきた」
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「逆さまになって回転しているので何も見えない。普通のバックフリップなら、空や屋根を見て自分の位置を確認し、着地点を見極められる」
「しかし360度になると何もかもめちゃくちゃだ。斜面が戻ってくるのが見え、それから再び体をねじりながら着地するのだから」
ワージントンの技が特に印象的だったのは、1回目の大失敗から即座に立ち直ったことによる。
練習では安全なゴムのコースで「何度か」成功させたことがあり、東京での練習では固い木製のコースで初めて着地に成功した。テイラーはこの技について「インターネットをにぎわし、インスタグラム中にあふれ返った」と振り返る。
最下位になったワージントンが2回目に挑むに当たっては、安全圏を狙って銅メダルを目指すのが普通だったかもしれない。しかしワージントンと、BMXフリースタイル先駆者であるコーチのジェイミー・ベストウィックの考えは違った。
「賭けに出て自分にチャンスを与えれば、それが報われ、あきらめるよりも気分が上がることを学んだ」とワージントンは話す。
「多分数カ月前から考えていた。私は自分のカードを隠しておく。そうすればこうした状況で必ず報われるから」
これは恐らく、3度の世界王座を獲得したアメリカのハナ・ロバーツの独走を食い止めるために、ワージントンがフリースタイルでできる唯一の技だった。
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さらにワージントンは、この種目でもう1つの歴史を残した。
テイラーは「大会でこの技を成功させた初めての女性というだけではない。この技を成功させた女性を私が見たのは世界で初めてだった」と指摘する。
「彼女は今、打ち負かすべき存在になった。それはハナが長い間背負っていたものであり、ハナがいなければシャーロットがこれを達成することはできなかった。シャーロットはそれに背中を押されてこの技を成功させた」
「彼女の実績は女子BMXだけでなく、BMX全体にとって絶大だ。それほど見事にやってのけた」
この世界で最大の技を決めたワージントン。次は何を目指すのか。
「素晴らしいのは720バージョンもできることだ」とテイラーは言い、「彼女がBMX界でどれほどの偉業を達成したのかは、帰国して『すごすぎる』というBMX界の声を聞くまで、実感がわかないと思う」と話している。