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サッカーW杯:南アに好評価、大会のスムーズな運営で-全世界が注目

  • ️Mon Jul 12 2010

南アフリカ共和国は、実現不可能 との声が多かった偉業を成し遂げた。スタジアムを埋めた大勢のファ ンの記憶に残るサッカーワールドカップ(W杯)の開催だ。

観戦人口世界一のスポーツ・イベントであるサッカーW杯は11 日、ヨハネスブルクのサッカーシティー競技場でスペインが優勝し、 1カ月にわたる大会の幕を下ろした。南ア財務省によると、観戦に訪 れた外国人観光客は50万人と、当初予測を20万人上回った可能性が ある。

英誌エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ ユニット(EIU)のアフリカ担当ディレクター、プラティバ・タカ ー氏は、深刻な犯罪に見舞われず、大会がスムーズに運営され、南ア の知名度が上がったことは、同国が犯罪と人種間の緊張という悪評を 払しょくするのに役立つと指摘した。ゴーダン財務相もこれを好機に 失業やエイズ、教育水準の問題に取り組むことに期待感を表した。

タカー氏は、7月5日の電話インタビューで「W杯前は犯罪とエ イズのニュースばかりだった」と指摘。「南アのイメージは非常に好意 的なものになった。観光業の伸びにつながり、景気回復を後押しする だろう。重要なのは政府がこの勢いを維持することだ」と語った。

南アでは高校卒業者の比率が6年連続で低下。エイズ患者数は世 界で最も多い。210万人が公営住宅の入居待ちで、失業率は25.2%と、 ブルームバーグ集計の62カ国・地域で最も高い。

貧困と失業

ゴーダン財務相は8日、ヨハネスブルクでエコノミストとの会合 に出席し、政府と企業、労働組合が「1つのチームになれば、南アの 全国民の生活改善に向けた協力体制をさらに強化できる」と言明。「W 杯の準備をした6年間でわれわれが学んだことは、心を一つにすれば この国の貧困と失業にピリオドを打てるということだ」と語った。

観光客増加の効果も見込める。南アの観光業は、国内総生産(G DP)に占める割合が7.9%。雇用者数は92万人に上る。昨年は計794 億ランド(約9300億円)を稼ぎ出した。産金業界は同487億ランド。

南アのホテル運営会社ピアモント・グローバルのアンソニー・パ タージル最高経営責任者(CEO)は2日、ヨハネスブルクから電話 インタビューに答え、全世界で決勝戦を視聴した7億5000万人のごく 一部が南アを訪れるだけで「観光客数は非常に意味のある増加を示す ことになる」と語った。

南アはW杯の準備費用430億ランド(約5100億円)をスタジアム 10カ所の建設・改築だけでなく、経済競争力の強化にも投資した。首 都プレトリアとヨハネスブルクを結ぶ50キロの幹線道路を10車線に 拡幅したほか、専用レーンを持つ新たなバス運行システムを導入。ヨ ハネスブルクの空港から証券取引所があるサントンには高速鉄道が敷 設された。

投資アドバイザー、パン・アフリカン・キャピタル・ホールディ ン グス(ヨハネスブルク)のイラジ・エイブディアンCEOは2日、 記者団に対し「南アの観光業はW杯の恩恵を確かに享受することにな る」とした上で、「問題は、同じ水準の協力体制や政治的意思で、住宅 や教育、ヘルスケアの問題にも取り組めるかどうかだ」と指摘した。