元横綱・北の富士さん、達筆で書き損じ少ない原稿 相撲への愛と厳しさ、ユーモア…ともに棺へ コラム『はやわざ御免』:中日スポーツ・東京中日スポーツ
12日に亡くなった北の富士さんが長年、本場所中に本紙で連載していた名物コラム「はやわざ御免」。棺には、コラムにまつわるたくさんの思い出の品が入れられた。本紙の原稿用紙、ボールペン、国語辞典―。愛用品の数々だ。
自宅リビングのテーブルにはいつも国語辞典が置かれていた。地方場所にも持っていった。北の富士さんは「漢字を忘れてるからね。国語辞典がないと困るんだ」。そう話しながら、長いコラムを30分ほどで書き上げた。
達筆な原稿には、ほとんど書き損じがなかった。「どうまとめるかなんて考えたこともない。書きたいことを書いてるだけ」。相撲への愛と厳しさ、そしてユーモアを交え、途方もなく面白い原稿を生み出した。
コラムの定番となった食事の話題。そこには多少のフィクションもあった。「食べた食べたって書かないとみんな心配するだろ? ほんとは食べてないことだってあるんだよ」。
2021年の九州場所以降、何度か体調不良で休載した。「せきをしたら血が混じっててね。少し休ませて、ごめん」という日も。そして、何ごともなかったかのように復帰した。頭が下がる思いだった。 (岸本隆)