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今年も「M-1グランプリ」の季節がやってきた! 2023年の決勝進出9組を総ざらい!【後編】ダンビラムーチョ・マユリカ・モグライダー・ヤーレンズ・令和ロマン

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  • ️Sat Dec 23 2023

【前編はこちら】

ダンビラムーチョ

大原優一/原田フニャオ

所属:吉本興業(東京)
結成:2011年

昨年は3年ぶりに敗者復活戦に出場。森山直太朗の「生きとし生ける物へ」をフルコーラス歌い上げ、途中からマラカスやトロンボーンカズーなる小型のラッパが登場し、最後は『SLAM DUNK』風のハイタッチで締める漫才を披露した。結果は9位に終わったが、緊迫感あふれる場であれほどふざけ倒したネタをやり切ったことへの反響は大きく、『M-1』公式YouTubeチャンネルにネタ動画がアップされると、敗者復活戦1位だったオズワルドに引けを取らない再生数を叩き出す。

認知度が大きく上がったことで、今年の予選は「最初から、なんとなく“おもしろい人たち”みたいな感じで見てもらえる」「アホなことを思い切ってできる環境になってます」(2023年11月14日掲載 「NewsCrunch」より)と観客を味方につけ、初の決勝進出を果たした。

「生きとし生ける物へ」漫才からもわかる通り、2人とも歌がうまく、歌ネタを得意としている。原田に至ってはヨーデルまでできる多才ぶりだ。歌唱力と、それを活かしてやっていることのバカバカしさの相乗効果は大きな笑いを生む。「もうちょっと売れて、直太朗さんと共演できるようになりたい」(太田出版『芸人雑誌VOL.8』より)という夢が叶う日はそう遠くなさそうだ。

マユリカ

阪本/中谷

所属:吉本興業(東京)
結成:2011年

3歳からの幼馴染コンビ。2021年に始まったPodcast『マユリカのうなげろりん!!』(ラジオ関西)が「面白い」と徐々に評判が広がり、加えて同年の敗者復活戦で大きな印象を残し、人気が爆発。今年の春にはニッポンの社長やロングコートダディ、紅しょうがらと共に大阪から東京へ拠点を移した。

ほぼ全編がフリートークで構成される『うなげろりん!!』は、幼馴染ならではの遠慮のないやりとりが魅力のひとつだ。阪本が相方への文句を言い募ったり無茶振りを押し付けたり、中谷はそれに応戦したり丸め込まれたりと、さながら割れ鍋に綴じ蓋といった空気感がある。ネタはシンプルな設定の漫才コントが多いが、本人ではないキャラクターを演じながらも、そうした関係性が透けて見えるようなボケとツッコミになっているのも面白さの所以だろう。

上京を発表した直後は「『M-1』決勝進出のカードもなしに、ビキニ写真集3000冊のカードだけ持って東京行く(注:Podcastの制作費を稼ぐために水着写真集を発売したところヒットして話題になった)」ことへの不安を漏らしていたが(『うなげろりん!!』#76より)、こうして無事に新たなカードを手にすることができた。なお、普段の漫才出番では阪本がマイク前に走り込んでくる登場の仕方でおなじみだが、せり上がりのある『M-1』ではどう対応するのかも注目ポイントだ。

モグライダー

芝大輔/ともしげ

所属:マセキ芸能社
結成:2009年

2021年に初めて決勝に駒を進め、一躍ブレイクを果たす。翌年はテレビ出演が急増し、『M-1』チャンピオンの錦鯉をのびしろで上回ってブレイクタレント第1位に輝いた(日本モニター調べ)。この年の『M-1』は準々決勝敗退となったが、今年は忙しい合間を縫って、その名も「モグライダーの日本一獲りたいからネタやるライブ」と題した単独ライブを開催。その甲斐あって見事に返り咲いてみせた。

アドリブ性に富んだネタは、認知度が上がってキャラクターが知られれば知られるほどウケやすくなるのか、テレビの人気者に逆風が吹きやすい『M-1』予選においても圧倒的なパワーを発揮。漫才では往年のスターをモチーフにすることが多く、最新のエンタメやネットカルチャーをボケとして取り入れた若手が増える今にあって、昭和の匂いを感じさせるのも魅力的だ。今大会ファイナリスト中、唯一の40代コンビでもある(芝40歳、ともしげ41歳)。

ちなみに、昨年のカベポスターに関して「トップバッター史上2位の得点」と書いたが、1位は2021年のモグライダーだ。初出場でトップバッターという悪条件のもと、緊張から顔をクシャクシャにするともしげと、ポケットに手をつっこんでせり上がってきた芝の対照的な様子は観る者の目を引いた。今年もきっと名場面が見られることだろう。

ヤーレンズ

楢原真樹/出井隼之介

所属:ケイダッシュステージ
結成:2011年

かつてのヤーレンズといえば肩の力が抜けた雑談のような漫才が特徴だった。2014年に大阪から上京するや、ライブシーンで人気を博す。「ダブル眼鏡の脱力系」という特徴から、当時はおぎやはぎと重ねて語る人も多かった。しかし、そこから賞レースで勝ち上がれず苦しんだ期間が彼らを大きく変えた。

しゃべくり漫才から漫才コントへ、そしてアスコットタイにシックなスーツという出で立ちからボケの楢原はベッカムヘアにやたらと丈の短いジャケットへ。これも「少しでも笑ってもらえたら」(2022年12月16日配信 YouTube「しくじり先生 俺みたいになるな!!【公式】」より)という思いでたどり着いた結果だという。

昨年は「ヤーレンズが仕上がっている」と芸人界隈で噂が飛び交うほど前評判が高かったが、残念ながら準決勝で敗退。しかし敗者復活戦で披露したネタと、大会プロモーションビデオで出井が放った「全然変わんねぇな、人生」の一言がインパクトを残す。年明けには敗者復活戦を共に戦った令和ロマンとツーマンライブ「ヤーレンズ×令和ロマン〜ヤーレヤレ、もうすっかり令和ですわ。複雑な現代に漫才パンチ〜」を立ち上げ、月に1回というペースでストイックに仕上げてきた。今度こそ人生は変わるはずだ。

令和ロマン

髙比良くるま/松井ケムリ

所属:吉本興業(東京)
結成:2018年

2018年、プロデビュー1年目にしてワイルドカードで準決勝に進出。芸歴が若いうちからネタで評価を得るという、近年の若手芸人の潮流を形作ったコンビと言っていいだろう。昨年はストレートに準決勝へ勝ち上がり、敗者復活戦では知名度で圧倒的に勝るオズワルドに迫り、大きな評判を呼んだ。1年かけて期待は大きく膨らみ、今回の結果には「とうとう来た」といった反応が多数を占める。

ボケの髙比良は自分たちのYouTubeをはじめ各所でお笑いや賞レースに関する考察を行っており、この数年は準決勝の現場から行う生配信レポートも人気を博している。初の決勝に向け、過去の『M-1』を見返して出番順による流れを読んだネタ選び等の戦略を練っているそうで、「(決勝全体を)神回にしたい」「そうなれ ば自分たちも得するから」と意気込む。

一方、ツッコミの松井は優勝したら賞金はすべて相方にあげると宣言。「『1000万円くれたら頑張る』っていうから」「チャンピオンになれるんだったらなんでもいい」と豪気な一面を見せている(以上、すべて2023年12月17日放送 TBSラジオ『脳盗』より)。代わりに副賞は全部もらう約束になっているとのこと。初となる決勝の現場からのレポートと、大胆なトレードの成立を心待ちにしている。

文・斎藤 岬、編集・横山芙美(GQ)


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M-1準決勝を会場で見届けた編集者・ライターの斎藤岬が、2023年の決勝進出9組をわかりやすく解説する。その前編。