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【女子柔道振興委員会】JJ Voice No.138:半谷静香さん | 全日本柔道連盟

  • ️Thu Sep 05 2024

プロフィール
半谷 静香(はんがい しずか)1988年 福島県生まれ
トヨタループス株式会社 所属
講道館柔道女子弐段

主な戦績
2016年 リオデジャネイロパラリンピック 48kg級 第5位
2021年 東京パラリンピック 48kg級 第5位
2023年 アジアパラ競技大会 48kg級 J1クラス 準優勝
2023年 東京グランプリ 48kg級 J1クラス 準優勝

柔道は「無限の計算式」。
柔道は、強引なようで繊細な競技だ。力の向きや重心の移動を感じ取り、“力の通り道”を作り出せた者が「投げる」ことができ、勝つことができる。しかし、その計算式は公式通りにはいかず、日々無限に模索することが面白い。

一方で、私を指導する磯崎祐子コーチは柔道を「畳の上のサーフィン」と表す。自然界の荒波に対して抗わずに、どう体を使うかを考えるのだという。きっと、柔道家一人ひとりがそれぞれの答えを持ち、柔道との向き合い方を見出し、表現する言葉と出会うのだと思う。
見えない私の稽古は、テコの原理を基本に、触る・感じる・試して話す、をベースに工夫をしている。目に見えない力の働きを視力を失ったことでより鮮明に意識する必要があり、「力はいらない」という動きの真意を探し続けてきた。長い時間をかけ、沢山のサポートを受けて今のプレイスタイルに辿り着いた。
私の挑戦、それは今夏開催されるパリパラリンピックでの金メダル獲得だ。4度目の出場になるが、これまでに獲得したメダルの数はゼロ。5年前に全盲になり、2年前に右膝を手術した今、現在35歳の老体に圧倒的な強さがあるわけではない。
私には、理屈と練習の積み重ねがあるだけだ。言語化にこだわり、探し続けた強さへの無限の計算式を、本番の舞台で披露したいと意気込んでいる。
私には他にも目標がある。見えない・見えにくい人がもっと柔道に取り組めるように、また、見える人がもっと気軽に関わってみようと思えるように、「触り方聴き方テキスト」を完成させることだ。
柔道は奥深く、私が知らない世界が無限に存在するため、完成がいつになるかわからない。最後に、柔道家の皆様にお願いがある。どうか、道場で半谷静香という“質問お化け”に出会った際には、暖かく、粘り強くご助言いただきたい。