人気高まるゲーミングPC ゲーム動画でユーザー拡大
- ️Tue May 08 2018
2018年5月9日 5:40

オンラインゲームや凝ったグラフィックのゲームを楽しむための高性能パソコン「ゲーミングPC」の人気が高まっている。調査会社GfKジャパンによると、2017年の個人向けパソコンの国内販売は、全体では前年比98%だったが、ゲーミングPCに限ると135%、金額では143%と好調。販売店には小中学生も訪れるという(記事「高くても売れる『ゲーミングPC』 小中学生にも人気」参照)。家庭用ゲーム機やスマートフォン(スマホ)が強く、パソコンでゲームを楽しむ人は少ないといわれてきた日本で、20万円を超えるモデルも珍しくないゲーミングPCがなぜ売れるのか。実際にゲーミングPCを販売するメーカーをたずね、人気の理由を探る。今回は「ALIENWARE」(エイリアンウエア)というブランドを持ち、積極的にゲーミングPCに取り組んできたデルの柳沢真吾氏に話を聞いた。
身近になってきた海外ゲーム
――ゲーミングPCの売り上げが好調です。ただし、これまでPCゲームについては「海外では一般的だが、日本では一部のマニア向け」といわれていました。まずは日本と海外のゲーム市場の違いについて教えてください。
日本と海外のゲーム市場にはさまざまな違いがありますが、中でも大きな違いはカテゴリーでしょう。海外ではPCゲーム、スマホゲーム、プレイステーションやニンテンドースイッチのようなコンソール(家庭用ゲーム機)ゲームの割合がバランスよく存在していますが、日本ではPCゲームが極端に少なく、最も多いのがスマホゲーム、続いてコンソールゲームという順です。さらに詳しく見ていくと、スマホゲームとコンソールゲームのいずれも、国産コンテンツで遊ばれているケースが圧倒的に多いんです。
――なぜそんなに違いがあるのでしょうか。
一番大きな違いは、ゲームの成り立ちでしょう。日本のゲームメーカーは、日本のアニメや少年誌のキャラクターなどを反映した日本独自のコンテンツを提供しているのが特徴で、海外とはずいぶん異なります。現在の国内ゲーム市場は、そういった文化やコンテンツをうまく活用できている日本のゲームメーカーが活躍している状況にあります。
――そんな日本でゲーミングPCが好調な理由は?
理由の一つはインターネットの普及で、海外製ゲームが身近になってきたからでしょう。
最近は動画配信サイトで、自身がプレーするゲームの動画を配信する「ストリーマー」が増えています。海外の人気ストリーマーのプレーも簡単に見られる。彼らは海外製のゲームをプレーしているので、国内でも海外のPCゲームが注目されるようになってきました。16年の日本ゲーム大賞で「フォールアウト4」(※未来の世界を舞台としたロールプレイングゲーム)や「ウィッチャー3」(※架空の世界を旅するロールプレイングゲーム)などの海外タイトルが複数、名を連ねました。これは、数年前では考えられなかった現象です。

また昔は海外製ゲームはなかなか手に入れることができませんでしたが、最近は興味を持ったゲームをオンラインで簡単に購入できるようになっています。海外のゲームをダウンロードで購入できる「Steam(スチーム)」というプラットフォームが国内ゲームプレーヤーにも知られるようになったことも、層の広がりにつながっています。
またゲーミングPCは高性能なパソコンで、ゲームしかできないわけではありません。ゲーム以外の理由で選ぶ人もいます。
ゲーム以外の用途で選ぶ人も
スマホが高機能になったのでPCの必要性を感じなくなった人が少なくないのも事実ですが、その一方で「授業や論文を提出するときなどに必要だから」と大学の入学祝いに親が子どもにノートパソコンを贈るケースも増えているんです。そのとき、「どうせ買うなら高性能でいろいろなことができるパソコンを」と考え、ファーストPCとしてゲーミングPCを検討される方も、以前に比べて明らかに増えています。
また高性能なゲーミングPCは、クリエーテイブな作業から、インターネット上で仮想通貨を得る手段のマイニングまで、幅広く活用できます。ワークステーションではなく、ゲーミングPCを選ぶ企業もでてきています。
ゲーマーだけでなく、学生や企業が使うPCとしても、ゲーミングPCを選ぶ人が増えているのです。
プロゲーマーやストリーマーを憧れの存在に
――さらに日本でゲーミングPCの認知を広げるには何が必要だと思いますか。
実際にプレーするだけでなく、ゲームを見て楽しむ層を広げることが大切だと思います。
2017年に話題になったゲームに「PUBGPLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」というタイトルがあります。これは最大100人のプレーヤーが島内で戦い、最後の一人になると優勝というバトルロイヤル型のゲームなのですが、実際にプレ-せず、ライブ配信を見ながら好きなストリーマーを応援して楽しんでいる人も多いんです。数年前にも、ストリーマーの影響で「マインクラフト」が子どもたちの間で流行するという現象もありました(※マインクラフトはプレーヤーが自由に街を作って遊ぶゲーム。プログラム教育として取り入れている学校もある。参考記事「人気ゲーム『マインクラフト』授業で活用 子供のアイデア形に」)。「見て楽しんでいる」人たちをもっと増やすことも、結果的にゲーミングPC市場の拡大につながると考えています。
――見て楽しんでいる人が増えれば、裾野が広がり、ゲームをプレーして楽しむ人も増えるということですね。
若い世代をさらに取り込むには、プロゲーマーやストリーマーが憧れの存在でなければなりません。そのためには、ビジネスとしてeスポーツに向き合っている人を応援していく必要があると考えています。我々がプロゲーマーのネモさんのスポンサーになったり、「ALIENWARE ZONE」というeスポーツコンテンツをメインに扱うサイトを立ち上げたりしたのも、スタープレーヤーを育てていく取り組みのひとつです。

◇ ◇ ◇
次回はゲーミングPC新ブランド「OMEN by HP」を展開する日本HPに話を聞く。
ゲーミングPC最前線
人気高まるゲーミングPC ゲーム動画でユーザー拡大
ゲームは「新しいSNS」 ノート持ち寄るイベントも(5月16日公開予定)
(文 辻村美奈=マイカ)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。