technologyreview.jp

スターシップが3度目の正直、高高度飛行後に垂直着陸に成功

スペースX(SpaceX)の宇宙船「スターシップ(Starship)」が3月3日、高高度飛行に成功した。スペースXはこれで、同船の高高度飛行を3回連続で成功させたことになる。しかも、最初の2回のミッションと異なり、宇宙船は今回、着陸にも成功した。しかし、着陸した後、宇宙船は前2回と同じように爆発した。

米国中部標準時の3月3日午後5時14分頃、テキサス州ボカチカにあるスペースXの試験施設から10機目のスターシップ試作機(SN10)が打ち上げられ、約10キロメートルの空中飛行を経て、地球に向け無事に降下していった。

その約10分後、宇宙船は爆発した。原因はメタンガス漏れだと思われる。それでも、ミッションの本来の目的は達成された。

Oof. SN10 has decided to join SN8 and SN9.

Still a great advancement with the landing.

➡️https://t.co/bOsEo1u0u0 pic.twitter.com/RiXV6e3u04

— Chris B – NSF (@NASASpaceflight) March 3, 2021

スターシップが高高度飛行後に安全に着陸したのは、今回が初めてである。「SN8」は12月9日に飛行し、12.5キロメートルの高度を飛行した後、速度を落としきれずに地上へ激突し、爆発して大破した。2月2日に高度10キロメートルで飛行した「SN9」も、着陸を試みた際にSN8とほぼ同じ運命を辿った。どちらのミッションも、3基のエンジンのうち2基のみを使って着陸しようとした。それに対し、SN10はエンジン3基をすべて使い、最終的に少し横に傾きはしたものの、垂直着陸を成功させた。

スペースXが開発しているスターシップは、地球周回軌道を越えて、月や火星へいずれ宇宙飛行士を運ぶことを目指している。高さ50メートル、燃料充填時の重量は1270トン以上になり、100トン以上の貨物や乗客を深宇宙へ運べるとされている。最終的には、現在開発中の「スーパー・ヘビー(Super Heavy)」ロケットの上に乗り、2段目のブースターの役割も果たすことになる。スーパー・ヘビーもスターシップも、メタンを燃料とするスペースX製「ラプター(Raptor)」エンジンを使用することになっている。

今後の予定については、はっきりとは分かっていない。スペースXは今回、スターシップが高高度を飛行し、安全に着陸できることを証明した。「SN11」も同様の飛行をするかもしれないし、他のテストをするかもしれない。それでも、スペースXは、今年中にスターシップを宇宙に飛ばすという目標に確実に近づいている。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は以前、2026年、あるいは2024年までにも火星に人を送りこみたいと表明している。

人気の記事ランキング
  1. An ancient man’s remains were hacked apart and kept in a garage 切り刻まれた古代人、破壊的発掘から保存重視へと変わる考古学
  2. This startup just hit a big milestone for green steel production グリーン鉄鋼、商業化へ前進 ボストン・メタルが1トンの製造に成功
  3. AI reasoning models can cheat to win chess games 最新AIモデル、勝つためなら手段選ばず チェス対局で明らかに
  4. OpenAI has released its first research into how using ChatGPT affects people’s emotional wellbeing チャットGPTとの対話で孤独は深まる? オープンAIとMITが研究

ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。