アメリカによみがえる「黄禍論」 アジア系差別の背景にあるものは:東京新聞デジタル
◇遠い融和 狙われるアジア系(上)
昨年3月、当時のトランプ大統領の記者会見で用意された演説原稿。Coronaの文字がペンで消され、代わりに手書きでCHINESEと書かれてあった=ワシントン・ポスト紙のJabin Botsford氏撮影、ゲッティ・共同
◆道を歩けないほどの恐怖
「助けて。周りは中国人だらけ」。米国で新型コロナウイルスの感染拡大が始まる直前の昨年2月、南部ジョージア州アトランタから西部ロサンゼルスに向かう機中。中国系で同州立大准教授のロザリンド・チョウさん(43)は、前に座った白人女性が携帯電話を高くかざして、通路を隔てた隣のアジア系男性の顔をバックに自撮りしながら、こうメールを打つのを目の当たりにした。
「また歴史が繰り返されるのか」。チョウさんはがくぜんとした。中国人労働者の移住を禁ずる19世紀末の中国人排斥法、第2次世界大戦中の日系人の強制収容など、ヒステリーと恐怖の渦にのみ込まれた白人らがアジア系を抑圧する「黄禍論」の歴史がよみがえったからだ。
「これまでと違うのは、国の最高指導者(トランプ前大統領)が率先して新型ウイルスを中国ウイルスと呼び、差別を助長したことだ。道を歩きたくなくなるほどあからさまな脅威を感じるのは私自身、初めてだった」とチョウさん。
◆アジア系は今も「外国人」
その後アジア系に対する差別や暴力は広がり続け、カリフォルニア州立大サンバーナディーノ校の「憎悪・過激主義研究センター」によると、主要16都市で昨年起きた憎悪犯罪は一昨年の約2.5倍に増えた。
差別の根底にあるのは、アジア系をいまだに「外国人」と決めつけ、遠ざけようとする空気だ。例えば、多くのアジア系は「どこの出身か」と聞かれることにへきえきする。「ニューヨーク出...
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