<社説>ウクライナ侵攻 和平の道筋を探らねば:東京新聞デジタル
ロシアには戦闘行為の即時停止と撤退をあらためて要求する。ロシアのウクライナ侵攻から一年。悲劇に見舞われているのはウクライナ国民ばかりではない。食料不足、エネルギー危機、インフレ…。世界中が被害を受けている。
ところが、残念ながらプーチン大統領は無益な侵略戦争をやめるつもりはまったくない。二十一日の年次教書演説では「直面する課題を一歩、一歩着実に片付けていく」と長期戦の構えも示した。
侵攻自体も「戦争を始めたのは西側だ。われわれは武力を使ってそれをとめようとした」と正当化し、西側に対する祖国防衛のためだと強弁した。
一方のウクライナも国民の大半が占領地域の奪還を期待しており、徹底抗戦の意思は固い。
戦争が長引く気配が濃くなっているものの、交渉で事態収拾を図るチャンスは必ずやって来る。ウクライナ、ロシアともにそれを見逃してはならない。
バイデン米大統領のキーウ電撃訪問は、この戦争が米ロの代理戦争であることをあらためて印象付けた。バイデン氏はウクライナへの揺るぎない支援を約束した。ロシアを刺激しないよう気を使いながらも、西側のウクライナ支援は拡大の一途だ。
ただし、欧州には支援疲れも見え、米共和党には支援拡大に抵抗が強い。西側は和平交渉につなげるための外交努力も忘れてはならない。
中国の動向も気掛かりだ。ブリンケン米国務長官は中国外交トップの王毅共産党政治局員と会談し、中国がロシアに武器を供与すれば「深刻な結果を招く」と警告した。中国側は武器供与検討の事実を全面否定し「米国は中国に指図する資格はない」(外務省報道官)と反発した。
中国は侵攻を支持せず中立の立場を取ってきた。もし、それを転換して武器供与に踏み出せば、戦争は米中ロ三大国の代理戦争へと様相を変えて国際社会の危機が高まる。民主主義陣営と権威主義陣営の分断も一層深まる。中国はその危険性をわきまえてほしい。
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