日経スペシャル ガイアの夜明け : テレビ東京
日経スペシャル「ガイアの夜明け」 10月31日放送 第236回
「買う気にさせます
~“生活家電” 新機能開発の裏側~」
洗濯機や冷蔵庫といったいわゆる“生活家電”は、すでにほとんどの家庭に普及しているため、“成熟市場”と言われてきた。ところがここ1,2年、状況が変わってきている。10万円の炊飯器、20万円の洗濯機といった高額商品が売れ始めているのだ。それはなぜか?
実は今までにない付加価値をつけ、買い替え需要を喚起させようというメーカー側の動きが活発になっているのだ。
その先駆けとなったのが、産業革命の国・イギリスから新しい技術を引っさげて乗り込んできた掃除機メーカー、ダイソン。そして、日本の家電メーカーの王者、松下電器なども続々と高機能製品の開発に乗り出している。
革新的なアイデアと技術があれば、まだまだ成長する可能性を秘めた“生活家電市場”。その開発競争の舞台裏を追った。

【産業革命の国からの“黒船”サイクロン掃除機・ダイソン】
2004年6月、それまで1,2万円が当たり前だった掃除機の市場に、8万円という高額商品が登場した。イギリスのメーカー・ダイソンが開発したサイクロン(遠心分離)式掃除機だ。
「強力な吸引力と紙パック不要」を売り文句に一気にシェアを拡大、日本に新しく高機能掃除機の市場を作った。成熟市場と思われていた掃除機市場で、新しい機能・付加価値を付ければ新たな需要を開拓できるということを証明したのだ。
サイクロン式掃除機を発明したのは、イギリス本社の会長であり現役の研究開発者でもあるジェームズ・ダイソン氏(58)。会社設立13年で世界42カ国に掃除機2000万台を販売、サイクロン式掃除機ただ一点で世界を席巻した。現在も1200人の社員のうち400人が研究開発に携わる。その中に、日本向け商品を開発する特命チームが存在し、新たな商品開発に取り組んでいる。一体、その特命チームはどうやって日本市場をリサーチし、どんな開発をしているのか?

洗濯機、エアコン、冷蔵庫の、いわゆる生活家電の3大商品でヒットを連発し市場をリードする松下電器産業。好調な業績を支えているのは、徹底して消費者サイドに立ったモノ作りだ。
大阪府内にある豊中工場には、一軒家の民家そのままの作りの“くらし研究所”がある。そこでは女性を中心とした研究者たちが、一般家庭に近い環境で、製品の検証を行なっている。
10月発売の新しい冷蔵庫の開発に当たっては、まず一般家庭100軒の冷蔵庫内の写真を集め、ペットボトルが増えたことや冷蔵庫が“食糧倉庫化”している現状を調べた。そして主婦、高齢者、子供を使って、身長差などによる使いやすさの違いや、食材を取り出す時の筋肉の負担などを徹底的に研究した。果たして、こうした研究をどう商品に生かしているのだろうか?その秘密を探る。

鳥取三洋電機の研究者・下澤理如(まさゆき)さん(59)は、炊飯器作り一筋で30年という自称「飯炊きおじさん」。炊飯器では後発だった三洋にあって、92年に業界初の「圧力IH(電磁誘導加熱)炊飯器」を世に送り出し、業界のスタンダードを作った。2002年には、かまどご飯を炊飯器で再現する「おどり炊き」を発明。電気調理器では難しかった強い火力の効果を、圧力の調節でたくみに作り出し、かまど独特の“ふっくらご飯”を炊けるようにした。この商品は大ヒットを飛ばし、今や下澤さんは「炊飯器の神様」と呼ばれるようになった。
しかし、三洋電機は今年9月、赤字の続く家電部門を組織上解体するという大幅な構造改革を発表した。創業の地・兵庫県加西市にある北條工場も7月に閉鎖、来年には洗濯機生産発祥の地である滋賀工場も閉鎖し、生活家電は鳥取など3工場に集中させることを決めた。
そうした中、下澤さんは来年の定年までに武器である炊飯器の開発技術を若手の技術者たちに継承しようとしていた。2代目・3代目の“飯炊きおじさん”を生もうと若い技術者たちに技術を受け継ぎながら、最後の新たな炊飯器開発に挑む“神様”下澤さんに密着した。

一方、競争の激化する「高級炊飯器」市場に、名乗りを上げたのがタイガー魔法瓶だ。今年秋、3年余り試行錯誤を繰り返してきた商品を発売することになった。内釜を土鍋にするという、電機制御の工業製品では不可能といわれた炊飯器だ。
しかし、商品発売まで1ヵ月と迫っても、最終調整は遅々として進まずにいた。熱しにくく冷めにくいという土鍋の特徴から、制御をかけてから効果を発揮するまでにタイムラグが生じ、出来上がりをはかるのは至難の業。果たして間に合ったのか―。
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この番組と連動した企画が10月31日付と11月1日付の日経産業新聞に「白が変わるーー家電最前線」(上)(下)として掲載されます。 番組とあわせてお読みください。 |