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キャラと「結婚」2年で200組以上、「二次元恋愛」の今…「恋愛に与える影響は増大し続ける」

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  • ️Sat Mar 04 2023

 アニメやゲームのキャラクターと「結婚」したい――。そんな思いを 叶(かな) えるサービスがネットに現れた。架空(=フィクション)の登場人物に性愛感情を抱く「フィクトセクシャル」という言葉も広がりを見せており、「次元を超えた愛」が注目を浴びている。オンラインやメタバースといった仮想空間が身近になった今、その「愛」は加速していくのだろうか。(デジタル編集部 古和康行) 

キャラクターと「結婚証明書」を発行

 「現実世界と他次元を 繋(つな) ぎ、婚姻届の受理と結婚証明書の発行をする非公式機関」。「次元局」のサイトにはこう書かれている。法的な裏付けはないが、希望する人に8700円(送料込み)でキャラクターとの結婚証明書を発行しているのだという。

 サイトの運営者、千葉県松戸市のデザイナー渡辺靖晃さんが取材に応じた。自身もアニメ「戦姫絶唱シンフォギア」の主人公、立花響と「結婚」。「人間を好きになるように、キャラクターが好きになった」と語る。

取材に応じた渡辺さん
取材に応じた渡辺さん

 渡辺さんには、人間と法律婚していた過去がある。高校卒業後に新聞配達員になり、出会った女性と20歳の時に結婚。子どもも授かったが、22歳で離婚。その後も2人の女性と交際し、結婚の話も出たがいずれも破局した。だから、「女性を好きになる感覚は分かる」。

 現在の「パートナー」を知ったのは、勤めていたデザイン会社で、5年ほど前にパチンコ店のポスターを制作した時だ。かわいらしい見た目に惹かれて同僚に「これ、なに?」と聞くと「シンフォギアというアニメですよ」と返ってきた。

 気になってアニメを見てみると、主人公の響の魅力にとりつかれた。明るくムードメーカーとしての立ち居振る舞いを見せながらも、人知れずに悩む姿。時に涙を流しながら、置かれた境遇に真正面から向き合う姿に、恋心が芽生えたという。

 だが、アニメを紹介してくれた同僚にその話をしても理解はされなかった。響に惹かれていく気持ちと、「恋」として周囲に認められない現状。ネットで検索をすると、同じようにキャラクターに恋をして、悩む人が多くいることに気づかされた。

 そんな仲間たちに対して、何か手助けすることはできないかと思いついたのが「次元局」だ。キャラクターに恋をする人たちから「婚姻届」を提出してもらい、「結婚証明書」を発行するというサービス。2020年11月からサービスを始め、今までに200組以上の「カップル」の結婚証明書を発行してきた。「初めは『オタ活』として申し込んでくる人も多いかと思ったが、予想以上に切実な悩みが寄せられてきた」と語る。

次元局に届いた手紙を見つめる渡辺さん。どの手紙にも真剣な恋愛感情が綴られていた
次元局に届いた手紙を見つめる渡辺さん。どの手紙にも真剣な恋愛感情が綴られていた

 渡辺さんの手元に届いた手紙には

 「次元を超えた愛が“本物の愛”であることが認められる社会になってほしい」

 「長年思い続けた相手とやっと一緒になれることが楽しみ」

 「次元の違う相手と結ばれることを望んだ人が好きな人と幸せになれるようにと願っている」と真剣な言葉が並んでいた。渡辺さんによると、最近は海外からの問い合わせや取材も相次いでおり、「日本だけで起きていることではない」と感じる。

 「結婚証明書」には、パートナーのイラストは基本的に入らない。著作権を侵害することになりかねないからだ。渡辺さんは「私たちはキャラクターに人格を見いだして、愛している。でも、同時に架空の存在であることも理解しています」と語る。そして、絞り出すように語った。「だからこそ苦しい。言葉を交わし、触れあえる人を好きになる方が楽だと思います」

研究者「モノとの恋愛は日常的に起きている」

 キャラクターと結婚と聞くと、突拍子もないことに思えるが、「キャラクターなど人間以外に愛情を向けることは特異なことではない」。ロボット倫理に詳しい東京電機大学の西條玲奈助教(哲学)はこう語る。